「
ルームシェア 畳一枚 ひとりでも 屋根あるだけで まじでましかと」、「二万では 泊れぬホテル 顔火照り 民泊探し 民族移動」、「十年で 時代遅れに 何事も 改修必須 宿泊施設」、「商売は どの層狙う こと基本 金持ち相手 金はかかりて」

1か月ほど前、バス停で待っていると赤ん坊連れの真面目そうな若夫婦がやって来た。声をかけると金沢から来て鈴虫寺に行きたいとのこと。赤ちゃん連れでは嵐山は充分楽しめる場所は限られるが、面白い説法を聞かせる寺よりも嵐山の中腹にあるモンキー・パークは見晴らしがよくていいのではと提言した。そして鈴虫寺に行くなら近くの地蔵院は穴場で、いつかは桂離宮を見学すればいいとも伝えたが、どちらも初めて聞く場所とのことで歴史や文化への造詣のなさがうかがえた。20代前半の筆者は家内とデートのために京都に行くたびに大徳寺や桂離宮、修学院離宮、御所、それに各美術館を巡ったものだ。鈴虫寺がよくないと言うのではない。何かで聞きかじった些細な話題に釣られてそれを目的にわざわざ京都に来るのはあまりにもったいない。しかし京都に来る大多数の人は歴史や文化に無関心で、撮った写真をSNSに上げることが目当てだ。そういうかげろうのような人々をどんどん建つ宿泊施設が飲み込んでは吐いて行く。阪急嵐山駅前の
ホテル花伝抄は2013年8月にオープンし、丸12年を少し過ぎた今年1月6日から改修工事が始まり、4月30日まで続く。二室を一室にし、およそ百室を半減させる改修計画は、「風風の湯」にいたSさんから2年前の秋に聞いた。Sさんはその半年ほど後に本人の不本意のまま退職したが、その事情は知らない。その後花伝抄の工事が始まらないと思っていたところ、去年12月のある日の夜、「風風の湯」に行く途中、灯りが全部消えていることに気づいた。また幅の狭い出入り口は封鎖され、工事用の車しか入れないように警備員が張りついた。ホテルオープン時の地元住民のみの内覧会で筆者は部屋の内部を目の当たりにしたが、各部屋の装飾の額は西陣織の帯を小さく正方形に切り取った安価なもので、それが30点ほども先日「風風の湯」のフロントや廊下の壁に飾られ、そのあまりに田舎じみた安っぽい光景に愕然とした。ホテル改修での不要品を処分するのはもったいないという、美意識欠如の姿勢は結局社長のそれで、金は儲けても知性は一夜にしてならずと思われてしまう。「風風の湯」の壁面を若い芸術家の展示空間に利用するなど、いくらでもSNS映えする方法があるのに、どうせ忠言は無駄と筆者を含めた常連客は思っている。花伝抄は部屋を倍の面積にして大型TVを置くようだが、宿泊料金は倍以上になるだろう。中国人観光客激減で、改修の思惑は当たるのか。大多数の客は贅沢に食べられれば満足かもしれないが、食事にも美意識は露わになる。今日の写真は昨日撮った。クレーン車が花伝抄の露天風呂の浴槽を下ろしている。