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●「MOLIENDO CAFE」
ンバ、サンバ、マンボ、タンゴ、50年代から60年代初期の日本では南米のダンス音楽がよくラジオから流れた。世界的なブームだったのだろう。



●「MOLIENDO CAFE」_d0053294_13455529.jpgそうした音楽は大人向きのもので、当時10歳になるかならない筆者は関心はなかったが、いやでも耳に入って来て今でもいろんな曲が蘇る。そうした子ども時代の体験は好き嫌いを言う以前の逃れられない環境みたいなもので、そのことが知らず知らずのうちに当人の育ちという人間としての原型質を形づくる。となれば幼児から少年期の経験はその後の生涯を決定する一大重要事項ということになるが、そのことを強迫観念のように受け止めて、親は自分の子どもを隙間のないほどに管理して有名校へと続く教育路線にのせようとする。筆者は全くそんなことはなく、幼稚園にも行かずに毎日家でぼーっとしていた。その時、周りにちょっとましな本でもあればよかったが、それもなく、雨の日は地面に現れては消える輪をずっと眺めたり、晴れの日は空を見上げながら雲がどこへ行くのかと思っていた。そう言えば今もそういうことがよくあり、少年の頃と何が変わったのだろうかと思う。いや、変わったことはあった。年齢を重ねないとわからないことはある。でなければ人間は老いることの意味がない。人間が年齢を重ねるのは、木に年輪が増えるように、それはあることの繰り返しに過ぎないようでいて、その繰り返しによってしか得られない何かがある。その変わったこととは、たとえばコーヒーだ。筆者がインスタント・コーヒーを飲む前にコーヒーの味を知ったのは、キャラメルやコーヒー牛乳によってであった。1950年代終わり頃のことで、当時ラジオからよく流れていたのが今日取り上げる「コーヒー・ルンバ」だ。西田佐知子の歌入りヴァージョンが61年に大ヒットしたが、オリジナルのハープによるインストゥルメンタル曲も、演奏者も知らないまま記憶にあるところ、それもよく流れていたのだ。西田佐知子の歌声は非常に独特なもので、今に至るまで彼女と同じような声で同じように歌う歌手はいない。声量があるわけではない。かなり投げやりに歌うのに、なぜか、いやそこに魅力があって、一度耳にすると忘れ難い。早々と引退したため今では、TVの菊正宗の宣伝曲程度でしか聴くことがないが、日本の歌謡史ではもっと高く評価されていいのではないだろうか。そういう評価は時代とともに変わるとも言えるから、今後再評価によってもっとしかるべき評価が下されるかもしれない。当初は演歌歌手としてデビューしたそうだが、彼女の歌い方ではそれは無理がある。そして、今の演歌歌手のように、気張って歌うだけがうまい歌手とは言えない歌の不思議さを伝えるのに、彼女は最適であろう。去年書いたように、筆者は西田の歌う「アカシアの雨がやむとき」をふと思い出すことがあるが、それよりも印象深かいのはやはり「コーヒー・ルンバ」だ。歌詞の内容ははっきり記憶にないが、「昔アラブの偉いお坊さんがー」という国籍不明、異国風の歌い出しで、それがまたよかったのだろう。だが、その歌詞は日本で勝手に加えたもので、原曲を忠実に訳してはいないだろう。原曲を印象深いインストゥルメンタル曲にしたところ、それが世界的にヒットしたが、西田ヴァージョンは当時の日本人の逞しさと想像力をよく示している。
 ネット・オークションを見ると、西田ヴァージョンはよく出品されていて、当時よく売れたことがわかるが、初版と再版ではジャケ写真が違う。再版の方が笑顔でよいように思うが、西田の写真はさておき、下段のイラストがなかなかよい。いかにもおいしいコーヒーを思わせる色合いで、60年代前半のレコード・ジャケ・デザイナーの才能をよく伝えてくれる。日本でヒットしたオリジナル・ヴァージョンは「ウーゴ・ブランコとそのアルパ・ヴィエヘラ」となかなか覚えにくい演奏者名で、またジャケットは大きく写る白いコーヒー・カップはいいとして、中央に見える踊る男女がよくない。まるで倒れた女性を助け起こそうとしている男で、これはルンバを踊っているところなのだろうか。「あら、わたし慣れないコーヒーで酔っちまったわ」「えらいなんやなー、よっこらしょっと。重いやん。もっとコーヒー飲んで痩せなあかんでー」「わたしをコーヒー中毒にする気?」「どうでもええから、はよ起きんかいな」などと話しているのかどうか知らないが、もっとましな写真がなかったのかと思う。だが、おそらくこれが初版だろう。1959年の発売で、筆者は8歳であった。近年入手したが、針を落として聴くと、ただちに昔のさまざまな情景、空気が辺りに漂う気がする。小学生半ばの筆者はこの曲を別段好きというのでもなく、ただラジオからよく流れて来るので、聴かされていたようなものだが、それでもやはり心地よかったのだろう。コーヒー、そしてルンバというから、南米の音楽だとは思っていたが、ジャケ裏面の解説を読むと、ウーゴ・ブランコはヴェネズエラ人だ。有名な作曲家とあるが、それはそうだろう。いくら一発屋としてこの曲が大ヒットしたからとはいえ、その一発はそれなりの経歴と実力がなければ出るはずがない。「このレコードはポリドールがヴェネズエラのレコード会社と特別契約を結んでレコーディングしたものです。」とあるが、これはウーゴ・ブランコの演奏が現地でヒットしたことに目をつけたもののはずで、これは日本でもヒットすると見込んだ思惑はずばり当たった。レコード会社が大ヒットすると思える曲を常に世界中踏破して探していることをよく示すが、この点は商売であるので今も同じだ。ジャケ裏面の解説には、「日本ほど海外の流行が早く伝わる国はないだろうとよく云われますが、それは日本が周囲を海でかこまれているためではないかと思います。」とある。あたりまえのことながら、改めてこの点を思うと、日本が何でも飲み込んで消化出来る万能胃を持つ国であることの理由がわかる。日本は江戸時代の鎖国で世界をほとんど閉ざしたが、周囲が海であったためにそれも本当は完璧ではなかった。確かに出島から少しの外国文化は流入したが、本当は漂流船が来たり、また日本から行ったりしたものがかなり記録され、またそうした記録に残らないものがその何倍もあったはずで、お上が知らないだけで民衆レベルでは予想外に海外と結ばれていた。たとえば日本でただ同然で獲れるナマコは中国では非常に高価な食材であったので代表的な輸出品となったが、それを知る九州や瀬戸内海の漁民が、幕府を通さないで闇で売る方がはるかに大きな利益をもたらすことを思って、闇で取り引きしようと考えてもそれは人情であろう。西日本は江戸幕府成立以前は朝鮮中国と交易して莫大に儲けていたが、幕府がその利益をごっそりと取るとなれば、それは文句のひとつも陰で言いたくなる。そうした中央対地方の図式は、実は現在でもある。道州制にしろといった意見はそんな江戸幕府成立以前の日本の状態をふと想像させる。日本各地の海辺に恵比寿(夷)さんがよく祀られているのは、海外貿易の象徴であり、海の外とつながることによって自分たちの利益が確保されるとの思いの表われであった。そんな海の外の地とのつながりは、昭和になっても変わらない。ここには江戸時代以降現在に至る長いスパンで見る必要がある。つまり「コーヒー・ルンバ」は遠くヴェネズエラの曲がパナマ海峡を越え、環太平洋を巡って日本にもたらされたわけで、海に囲まれた地の日本をこれほどよく示す曲はないと言えるかもしれない。同じ曲が当時の韓国や中国、あるいは東南アジアで独自の歌詞が添えられたうえで大ヒットしたであろうか。おそらくそんなことはなかったと思う。
 ジャケ裏面の解説からさらに引用すると、この曲に使用される楽器のアルパはハープのことでパラグァイ産だが、インディアン・ハープと呼ばれ、36弦の小型であるため、野山にも持ち運ばれるという。パラグァイは海がないため、日本とは反対に海外からの影響を受けず、独自の音楽が発達したというが、アルパもそういう環境のもとで作られた。ウーゴ・ブランコはその名手だが、南米北端のヴェネズエラと中央のパラグァイとではかなり離れているのに、なぜアルパが伝わったかまでは書いていない。同じ南米であるので、内陸を越えて伝わったことになるが、南米の音楽は、ジャケ裏面の解説にチリのクエカ、ボリヴィアのトナードを挙げていて、筆者の知らないものがいろいろとあるようで、そんな豊かな音楽の中からこの曲も出現したということを想像すればよい。これは以前ブログに書いたが、アンデスの路上バンドSOL DE LOS ANDESが、この曲を演奏していた。アンズスを売りにするバンドであるので、トリで演奏する「コンドルは飛んで行く」は納得出来るが、なぜこの曲をとその時思ったが、同じ南米の大ヒット曲であるので難しいことは言わないでよいということなのだろう。コーヒーは世界の発明の中では人類に最大級の恩恵をもたらしたものと言ってよく、コーヒーを産出する国は熱帯ならどこでもというほどに多いが、なぜかコーヒーと言えばこの名曲を思い出し、それはまた喜ばしいことだ。そう言えばボブ・ディランの曲に「コーヒーもう一杯」があるが、「コーヒー・ブギ」とか「コーヒー・ブルース」という曲名は聴かない。この「コーヒー・ルンバ」もやや物哀しいメロディで、本当はコーヒーに似合わない気もするが、原曲は「モリエンド・カフェ」で、これは「コーヒーを挽きながら」の意味であろう。そう題された本当のオリジナル曲は聴いたことがないが、オリジナルよりもその後のカヴァー演奏によってその曲が世界的にヒットするということの方が、こうしたポップスの世界では実際は多いのではないだろうか。そのようにして世界各国でカヴァーされ、不動の名曲となって行く。ネットで調べると、ルンバはキューバの曲「南京豆売り(ピーナッツ・ヴェンダー)」に代表されるリズムであって、この曲はルンバではなく、オルキデアだそうだが、そう言えば違うリズムだ。ただし、ルンバによく使う打楽器を使用しているので、ルンバ風にはなっているのだろう。ジャマイカのレゲエもそうだが、アフリカからの黒人奴隷は南北アメリカでさまざまなダンス音楽を形成するもとになる音楽を持ち込んだ。そのうち、アメリカ(USA)ではブルースが主流になって、それがブギからやがてロックの根本を形づくるが、南米ではまたそれらとも異なる音楽を生んだ。ナム・ジュン・パイクは20世紀の芸術はアフリカ黒人の造形や音楽があってこそといったことを晩年に語っていたが、まさにそのとおりで、奴隷という人間として最低の地位に貶められた人々が、実際は世界の文化を席巻するほどの威力を持っていたことは実に面白い。ピカソもビートルズもそうした黒人の移動がなければ出現しなかった。コーヒーもそうだ。アフリカ起源の植物がオスマン・トルコのアラブ商人を通じてヨーロッパにもたらされた。さまざまな説はあるが、だいたいはそういうことで、それからまだ400年ほどしか経っていないが、今では世界はコーヒーがなくては暮らせない。
 こう書いていると、急にコーヒーを飲みたくなって来た。以下は曲から外れた雑談だが、この曲を取り上げようと思ったのは、先週芦屋に行っておいしいコーヒーを飲んだことによる。ところで、名古屋の喫茶店のコーヒーはとてもおいしい。名古屋はモーニング・セットがどこの喫茶店でもとても豪華なようだが、そういう事情もあってコーヒーの味にうるさい人が多くなったのかもしれない。コーヒーのおいしい店がなかなか身近にないが、最近おいしいと思ったのは先に書いたように、先日飲んだ阪神芦屋駅前の「喫茶にしむら」のコーヒーだ。にしむらは有名で、つい3、4年前まで神戸センター街に喫茶店があったが、どういう事情からか別の喫茶店に変わった。昔から神戸に出るとよく入ったものだったのに惜しい。その系列店をふと駅前に見つけた。それで昼食をと思って入った。器も味も同じで懐かしく、久しぶりにおいしいコーヒーを飲んで満足した。毎日飲みたいが、それには芦屋に引っ越す必要がある。あるいは自分がコーヒー博士になって同じ豆を挽き方を知るかだ。だが、喫茶店はそのムードがあるので、同じコーヒーであっても自宅ではさほどおいしいと感じないかもしれない。筆者は砂糖を入れずに飲むが、そうなったのは30歳頃のことだ。当時知り合った人物が平然と喫茶店のコーヒーをブラックで飲むのを目にした。「おいしいか?」「コーヒーの本当の味と香りがわかるから。」 その次から筆者も試しに砂糖を入れずに飲んだ。すると今までと違う世界が眼前に広がった。またミルクも抜いて飲んでみたが、これは駄目であった。ほかにおいしいと思ったコーヒーはエスプレッソで、あの凝縮した味は思い出すだけでもたまらなくなるが、特別の機械が必要で、面倒くさがりの筆者には向かない。筆者はインスタントはほとんど飲まず、あちこちで買って来た豆を挽いて飲むが、昔は豆を自分で挽いてサイフォンを使っていた。アルコールを買うのが面倒、あるいはサイフォンを割るなどして、やがてこれもやめた。今は挽いた豆を買って来て紙で漉している。味にうるさい方であるのに、経済事情から高い豆は買わないが、そうした豆は1週間ほど飲むと決まり切った、そして頼りない味に思えて来る。インスタントよりはわずかにましという程度で、もう1、2ランク上の豆をと思わないでもない。価格は正直なもので、安価なものはいくら違う銘柄をあれこれ飲んでも、すぐに飽きが来る。かといってコーヒーの味を真剣に味わって飲むほど時間的にも精神的にも豊かな生活をしておらず、あのコクが味わえばそれでよいという程度だ。
by uuuzen | 2009-02-27 13:46 | ●思い出の曲、重いでっ♪
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