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●『雪だるま』
妹から最初に借りた韓国ドラマは『ピアノ』だった。それまでに韓国ドラマを観たのは毎週NHKの地上波で放送された『冬のソナタ』と『美しき日々』のふたつで、一気に数日で観たのは『ピアノ』が最初だ。



それは妹が契約しているKNTVから3倍速度で録画したものだが、妹はほとんど毎日のようにたくさんのドラマを録画するため、たまには失敗もあるらしい。『雪だるま』はそうした例で、第8話が抜けている。それでも視聴には影響がないと妹は言っていたが、ブログを調べるとこの第8話は5つ星の評価で、かなり重要なのがわかる。それでもどうにか20日間ほどかけて断続的に観た。『雪だるま』を妹が貸してくれたのはたまたまのことだ。妹は録画した多くの韓国ドラマをテープやDVDの大半をいつも誰かに貸しているので、手元にはあまりない。そのあまりなかった中から適当にこの『雪だるま』と『HAPPY TOGETHER』のふたつを貸してくれたのだが、先に後者を観た。その感想はまたの機会に譲る。このふたつのドラマを貸してくれたのは、筆者が『ピアノ』に出演していたチョ・ジェヒョンの他のドラマが観たいと言ったので、そのリクエストに応えてくれたのだ。『ピアノ』は印象に強いドラマで、これもまたいずれ書くことがあると思うが、今回は観終えたばかりの『雪だるま』だ。
 この題名は日本がつけたもので原題の直訳ではない。雪だるまという言葉を目にしてまず思ったのは『冬のソナタ』だ。韓国のソウルは雪がよく降るのか、冬場に制作されたドラマは雪が効果的によく使われる気がする。プサンを舞台にた『ピアノ』でもやはり冬に作られたため、雪のシーンが目立った。この雪が登場するドラマは、ドラマの印象が深いものになりやすいと思うが、それは韓国ドラマがおおむね人間の心や情といったものをテーマにしていて、そうした内面表現を画面で見せる場合、雪は内にこもる方向性を持たせるには打ってつけの小道具と言えるからではないだろうか。つまり、しみじみかつ純粋な気分になりやすいからだ。これがシトシト雨ではまた違ったイメージを観る者に与える。『雪だるま』は韓国では2003年1月から放送が始まり、全17話というちょっと中途半端な回数で終わったが、これは最初から脚本がそのように書かれていたのか、途中で視聴率を勘案して変更になったのかはわからない。それでも大体ドラマの初回が始るのは1年を通じて特定の月があるのではないかと何となく思う。『冬のソナタ』は『雪だるま』のちょうど1年前に韓国で放送されているが、1月に放映スタートの、冬を重要なファクターとしたドラマが案外多いのではないかということだ。冬はどうしても家にこもりがちになるし、そうした時期に心暖まるTVドラマが放送されると、自ずと観る人も多いであろうことは充分に想像がつく。そこから見えて来る姿は一家団欒で安心して観ることができる、あるいはひとりで観るにしても毎週心待ちにするワクワク感で、そうしたドラマ好きの人々に満ちる社会は何となく団結も強いことだろうと思う。
 韓国ドラマが昔の日本のドラマのようだとよく言われるのは、昔の日本にはまだ1台のTVを家族で囲んでドラマを楽しむということがあったという記憶からだと思うが、ネットを初め娯楽が多様化した今の日本では、核家族化が進むと同時にTVはひとりに1台、家族はみんな好き勝手に番組を自分の部屋で楽しむということが普通になり、心暖まるドラマといったものが何となく時代遅れになってしまった。それで韓国ドラマ全くを観ない日本人は、『日本ではとっくの昔に同じものがたくさんあって、何を今さらそんな古臭いものを』と考えていることが多いと思うが、その誤解や偏見を解くには、嫌韓派はさておき、そうでない人に対してもいろんな問題がある。それを書き始めるときりがないし、筆者としても結局は妹もよく言うように、「観たくない人に無理して薦めることはしない」という考えに落ち着く。どんな芸術でもそれを欲する人は自ずとそれに出会うものであり、出会いがなければそれはそもそも出会いがなかったということに対して諦めるということすらもないから、初めから存在しないも同然、当人にとって苦でも何でもない話だ。したがって、韓国ドラマを誉めちぎって多くの人に観てもらいたいなどと筆者は全く思わない。ただ、こうして書いている文章をたまたま誰かが目に止めて、どこかに関心、あるいは逆に反感を持って自分から進んで観てみようと思う人も出て来るかもしれないという期待は少しはある。そういった積極性のある人だけが、つまりは前述した、自ずと欲するものに出会う人ということになる。となると、ブログで騒ぎ合っている嫌韓派などは元々芸術などには無縁の連中で、最初からドラマを味わう能力などもないのであるから、勝手に騒がせておけばいいということになる。
 さて、『雪だるま』だが、前年の『ピアノ』でのチンピラ役で素晴らしい演技を見せたチョ・ジェヒョンが、今度は刑事のピルスン役でまた全然違った役どころをこなし、彼の代表作と言ってよい作品であろう。チンピラと刑事では正反対のようだが、ドラマの中でピルスンがヤクザと刑事は似ていると発言するところがって、これはチョ・ジェヒョンの『ピアノ』での役を知っている人に取っては楽屋落ち的な笑いでもあって、このドラマが深刻一辺倒ではなく、随所にユーモアがあることを知って、そこがまた心暖まるドラマということに対して効果を上げている。このチョ・ジェヒョン、日本では誰に相当するかいろいろと考えたが、かつての日本映画にはこうした味のある役者がたくさんいたはずだ。日本の映画が下火となったと同時に役者の質も変わらざるを得なくなったが、その点韓国ではどうなのか、また今後どうなるのかということに関心が向く。もし今の韓国ドラマがかつての日本が大量に作ったものの焼き直しに過ぎないとすれば、いずれ韓国ドラマも日本と同じ命運を辿るかどうかという問題も含めてだ。これは半分はそう言えるが、半分は違うだろう。国民性が違うし、また時代も違うからだ。それに韓国ドラマが本当に日本の古いドラマと同じようなものであるかどうかも、もっと深く分析する必要がある。日本ではたかをくくっているが、それならば、『冬のソナタ』のようにアジア各国で大ヒットするドラマが今すぐにでも作ることができなければなるまい。そうでないのであれば今の日本はドラマにおいては進化ではなくてずっと退化して来たことになる。文化が進展して何でも手に入ると思えば大違いで、逆に失うものも多いのだ。視聴者あってこそのTVドラマであり、それは制作した本人だけが取りあえずは納得して済む個人的な芸術ではない。今の日本のTVドラマに携わる人々が韓国ドラマを揶揄したければ、作ったドラマをみんなに感心させる必要がある。
 嫌韓派は別にして、たいていの普通の人は面白いと思えるならば、それは日本のものであっても韓国のものであってもかまわないと考える。それを付和雷同でけしからんという的外れな意見もあるが、国家間の問題がどうであれ、いいものをいいと歓待するのは全く当然のことであってこれは仕方がない。かつてビートルズが登場した時、日本の大人たちはたいていは猿同様の音楽だとして罵声を浴びせた。そのことをよくよく知っている筆者は、韓国ドラマでも似たことが少しは起こっていると感ずる。それに、ビートルズのイギリスとは違って、日本よりはるかに文明が遅れていて当然と思う人が多いであろう韓国という国のドラマであるだけに、色眼鏡の色合いはさらに強い。嫌韓派なら率直に『韓国ごときが作るものはどうせろくなものではない』と侮蔑的に言うし、嫌韓派でなくてもどちらかと言えばそう考える日本人が半分以上ではないかと思う。ところがここで大事なのは、韓国は日本に受けようとして韓国ドラマを作っているのではないことだ。日本人がひとりも韓国ドラマを観なくても韓国は何も困らず、ドラマの質も変わらないだろう。日本でブームになる以前から韓国ドラマは韓国ドラマであったのだから、日本からワーワーと持てはやされようが逆にけなされようが、韓国ドラマはまずは韓国人に向けて作られているということを認識する必要がある。となると、日本で韓国ドラマを観て楽しみ、またいろんなことを考えるということは、日本のことを考えるということに必然的に向かう。となれば、観もしないで騒ぐ意見など、実は日本のことを何も考えようともしないマイナス思考であり、それは日本を好いてもいないということにもなる。
 そこで、やはりこつこつとでも韓国ドラマを観て考えることは案外大切なことではないか。もちろんもっとほかの方法はたくさんあるだろう。しかし、韓国国内で視聴率が50パーセントを越えたといった話題作ならば、芸術作品と呼ばれる絵画や音楽、舞踊といったものとは別の現在の大衆の好みがストレートにわかるし、現在の韓国の一断面を知るのは最適の素材であろう。また、ドラマはドラマ本来の面白さ、俳優の上手さ、格好よさを楽しむというのが本道ではあるが、必ずそれには終わらないものをドラマを提供してくれる。未知のことを知ろうとする手立ては、ひとつのドラマに無数にあると言ってよい。そのどれに注目してどう自分で調べて納得して行くか、また、そうした行為の連続で芋蔓式に別なことにも興味が向かうというのが実際のところであり、韓国ドラマはそんな意味で現在のところかなり面白い素材の塊ではないかと思える。ブームであるからそれを冷ややかに眺めるるというのもわからないでもないが、もともとそうした人はどんなものに対しても無感動なだけであって、単に自分よりも先に他人が夢中になっている姿を見るのがしゃくなだけという場合が多い。『雪だるま』に話をそう。このドラマは特別の美男美女が出演するというトレンディ・ドラマではない。格好のいい有名俳優を使って視聴率を稼ぐということを韓国ドラマはほとんどしない。これは表面的な一時の格好よさだけでドラマを売ろうとするのではなく、もっと幅広い世代に受ける必要のあるTVドラマの宿命をよく知ったうえでのことで、そのためドラマの内容は万人受けするような古典的な筋書きに傾く。韓国の映画ではこれとはまた違って、もっと観る人を絞った作り方がなされるが、この作り分けの対比は見事というべきものだ。2、3か月を飽きさせないで見せる必要のあるTVドラマは、出演者の行動がシーソーのようにあっちこっちと回りくどいほど揺れながら少しずつ結末に向かって行く。そのハラハラ感をどのような俳優とテーマと描き方で演出するかで、ドラマの質が無限に変わる。どれも似ているのにどれも違うから、結局ひとつのドラマを観て楽しめばまた別のドラマをいつの間にか観始めているということになる。そして、韓国ドラマがどれもみな似ているかと言えば実はそうではなく、やはり毎年少しずつ変化もしている。その変化が後10年すればどうなっているかという興味があるが、韓国という国の政情や経済要因が絡んでそれがどうなるかは予想がつかない。そこがまた面白いと言える。今の日本はもうほとんど経済成長も期待できず、何か革新的なことが起こるのかどうか、もし起こってもそれは大地震といった自然災害が大都市にあるなどして、今までの安定状態といった気分が一気にぶち壊された時かもしれない。社会に著しい変化がないのに、TVドラマだけが面白く変化するということはあり得ないだろう。
 『雪だるま』の主人公の姉妹は、80年代だったか、ソウルの百貨店が手抜き工事のために大勢の客がいる状態で崩壊した後に取り残されたふたりという設定で、この孤児同然の境遇ということが物語のかなり重要なテーマになっている。おそらくそうした点のみは実話であるとも考えられる。このいわば世界中に恥を晒した格好の大事件を、TVドラマにそのまま筋書きのひとつとして用いるという点に、韓国のその後の経済成長と自信、したたかぶりを見る。日本ではまずそういう恥部となるような事件はTVドラマに描かないだろう。描いたとしても重要な要因としてではないはずだ。この開けっぴろげに過去の出来事を振り返るという手法に、韓国ドラマのひとつの特徴がある。また、若い刑事のピルスンは、結婚後に死別し、最後にはその妹と暮らすことになってドラマは終わるが、3度ほど描かれていたように、死んだ姉が戸籍から消えず、妹と暮らすことはできても結婚は認められないゆえ、単に同居人としての扱いとなるという社会的事情を観る者は知ることになる。日本と違って韓国は血縁関係を著しく重視する社会で、いとこ同士の結婚も認められないが、『雪だるま』でテーマとして描かれるような、死んだ姉の妹との再婚は誰が聞いても言語道断のけがらわしいことになる。この一種のタブーをどうにか打ち破ってふたりは人知れない田舎で静かに暮らすという結末は、やはりまだまだそういうタブーが社会的に認められていなことを暗に示し、改めて韓国社会の昔から変わらぬ部分が厳然と存在することを認識させられる。しかもそのふたりはただ愛し合っていたからということのほかに、幼い子どもと一緒に暮らすという条件設定があって、つまりは子どもがいるからそれはある程度は仕方なしに周りが認めざるを得ないという描き方になっている。もし姉が生きている間にチョ・ジェヒョンが妹に手を出して抜きさしならない関係になっていたという、それこそ現実にはままあるような話であれば、決してそのままドラマ化されないはずであるし、仮にそういった筋書きのドラマが作られても最後にふたりは制裁を受けて無残な形で死ぬという筋書きにしなければなるまい。韓国のTVドラマではそういったドロドロ劇はなかなか許されないだろう。で、予想どおりに『雪だるま』 はハッピー・エンドで終わる。それでもそうした終わり方を大部分の人は歓迎する。そこはかとない幸福感というものは案外誰しも望むところで、そうした感情に触れられる2、3か月のドラマ放映期間というものは、後で思い返しても心がほんのりと暖まるものなのだ。ふと思い返せばいつでもそのドラマの登場人物の生活が確かに現実に存在し、そうして自分もまた同じこの世に生きているという実感も得られる。どこか別世界の話のような格好いい登場人物ばかりのトレンディ・ドラマではない、もっと卑近な、大多数の人々の等身大の姿とだぶる世界の話というのが、より幅広い世代全般に歓迎される。『雪だるま』はそうしたドラマで、端役も含めて登場人物のすべてがみな実によい演技をしている。それは韓国ドラマに共通することであり、みんなが精いっぱい頑張っているその姿を見て、改めて韓国という国がまだ白けきってはおらず、沸騰のさ中にあることを痛感させられる。そこから考え始めるものは非常に多いのではないかと思う。
by uuuzen | 2005-06-09 11:38 | ●鑑賞した韓国ドラマ、映画
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