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●『ターシャ・テューダー展』
人と呼ぶにふさわしいターシャ・テューダは自給自足の生活をして絵本作家でもあった女性だ。先月21日に大阪心斎橋大丸で見た。



●『ターシャ・テューダー展』_d0053294_061312.jpg大阪に出る時は最低でもふたつは展覧会を見るが、当日は古書店に用事があった以外、この展覧会を見たのみだ。だが、とてもいい内容だった。ターシャについては今回初めて知ったが、予想外にもザッパに関連して収穫はあった。そのことに関しては今後もう少し調べて何かに書きたい。会場は主婦が大半で、男性は3パーセントほどではなかったかと思う。女性はみなターシャのような生活に憧れているのだろう。となると、高齢化社会に向かって、仙人のように生きるのは女性ばかりで、男性は自分で何にも出来ずに早死にする。そのためもあって、男性もどんどん台所で包丁を握って得意料理を増やすに限るが、そういう趣味は男からは軽蔑されがちで、威張っているだけでよいと考える向きが多いだろう。筆者は家にこもっての仕事であるので、『おにおにっ記』によく書いていように、散歩がてら毎日のようにスーパーに買物で出かけ、しかも多少は料理するが、包丁を持って思うことは、筆を握るのと大差がないことだ。そのため、絵を描くことの好きな人はきっと料理も得意になる。そして、手を動かすことは頭の活性化にいいから、絵の得意な人は頭もいいはずだが、その前提に立てば料理の下手な女は頭が悪いことになる。料理は生活について回るものであるから、頭の悪い女でも包丁を持たねばならないが、それは江戸時代の話で、今はスーパーで出来合いの料理がいくらでも安価で売られているので、それを買って食卓に並べれば、手間は大いに省ける。そのようにして得た暇をTVでも見て過ごすのだろうが、そのことでますます頭は悪くなる。また、TVの料理番組を見ていると、びっくりするような高価な材料を使用した料理を披露する場面がよくあるが、あのような食材を使用すれば頭の悪い人物でもおいしい料理は出来るのであって、筆者は全くそういう料理には関心がない。筆者の料理というのは、特によく作るのは各種のジャムだが、そのほかには土つきの小芋などを買って来て煮たり、佃煮のようなようなものを作ることで、旬のものか、ほとんど捨てる直前同然の安い野菜を買って来る。つまり、手間は要してもほとんどお金はかからない。包丁を握るのは気分転換に最適で、作っている時は時間を忘れる。その時間は仕事をする面から言えば時間が取られて無駄で、また買えば安いものを、なぜ自分でわざわざ作るのかと指摘する人もある。だが、自分で作ると無添加でもあって安心であるし、味にも納得が出来る。これが大事なのだ。お金では買えないものがあるのだ。それに料理で気分転換をすればまた新しいアイデアなりが湧くので、決して無駄ではなく、むしろ必要なのだ。理想は自分で作った野菜を使用することだが、裏庭は花で埋まっているのでその夢は遠い。
 ターシャ・テューダはアメリカのボストンに1915年に生まれ、今年92歳で亡くなった絵本作家だ。今回の展覧会は前半がターシャが過ごした自宅での生活の紹介、後半が絵本原画の展示であったが、双方は見事に釣り合っていた。つまり、生活の中から絵本を描いた。これはなかなかまねの出来ないことだ。絵本作家は掃いて捨てるほどいるが、他人とはいささか異なり、それでいて信念を持って特別なライフ・スタイルを持っている人物のみが個性ある絵本を作ることが出来る。小手先で絵を描く人は無数にいても、みんなと同じような生活を送れば、それは所詮それだけのものにしかならない。作品は正直なもので、その人の人格をすべて晒すから、個性的な作品を生むには個性的な人物が個性的な生活を送る必要がある。その典型がターシャであったと言える。日本ではすぐに富士正晴を思い出したが、富士は自炊はしたのかどうか、おそらくしなかったのではないだろうか。その点ではターシャの方がまだ仙人の風格があるかもしれない。会場の最後に年譜があったのでメモして来た。それを簡単に以下に紹介すると、ターシャの父は飛行機やヨットの有名な設計技師、母は肖像画家であった。「ターシャ」は父がトルストイの『戦争と平和』のナターシャにちなんで名づけたが、ターシャは母の旧姓を生涯名乗った。「ターシャ(TASHA)」はロシア系の名前で、最初ユダヤ系かと思ったが、「テューダー(TUDOR)」は「テューダー王朝」から考えてイギリス系で、ジョン・ケージの音楽をよく演奏したデイヴィッド・テュードアを思い出す人も多いだろう。ともかく、両親は名家の出で、ターシャの祖父母と両親はマーク・トウェインやアインシュタインと親交があった。なるほどそういう家系から有名人が出るかと納得させられる。ターシャは母の書斎で見つけたヒュー・トンプソンの挿絵に魅せられて挿絵画家を夢見るようになるが、肖像画家の母の資質を受け継ぎ、しかも絵の原体験が母の書斎で見た本というところ、なかなか芸術家誕生の本質を見せている。ターシャは小学校は7、8歳の途中までしか通わなかった。9歳で両親が離婚し、ターシャはコネティカット州のレディングに住み、家族の友人一家に預けられた。これは年譜には書いていなくて、会場で流されていたターシャへのインタヴュー映像で知ったが、両親の離婚は、ターシャの兄だったかが、父のヨットに乗っている時に水中に落ちて事故死する事件があり、心を傷めた両親はすぐにまた子をもうけるが、そのことでふたりの仲は深まることなく、かえって気持ちが離れてしまったことによる。そのことを老齢のターシャはさびしそうに述懐していた。両親離婚後にターシャはグウェンおばさんに身を寄せ、おばさんは毎晩シェークスピアを読んで聞かせてくれた。これがターシャにとって大きな糧になった。アニメもいいが、そうした本を子どもに読ませることが将来の財産になるといったことをターシャは発言していた。全く同感だ。だが、そんな古典文学は退屈とばかりに、子どもに読ませるどころか、親でも読んだことのない人は多い。ターシャは近所のヘンリーおじさんが自宅で開いた教室に通い、15歳で学校をやめる。これも今では考えられない。大学を出てもまともな仕事にありつけない時代で、まして中卒と同じ身ではだ。だが、ターシャは15歳までしか学校で学ばなかったとはいえ、今の大学生以上の知恵は身についていたはずだ。とにかく誰もが大学に行くようになって、かえってみんな勉強しなくなったと言ってよい。ケータイがそれに拍車をかけている。
 ターシャは夏はレディング、冬はバミューダの親戚の家で過ごし、バミューダで保育園を開いて8人の子を預かり、収入を牛を買うために貯める。この頃から農家での自活した暮らしをすることに夢を見て、また覚悟もあったに違いない。そして19歳(1934年)に初の手作り絵本『ヒティの1年』を作る。生活の中から直接生まれて来たような本だ。地にしっかり足をつけた内容であろう。22歳の時、後にアメリカ児童図書編集者の草分けのひとりとなるユーニス・ブレークのもとに『パンプキン・ムーンシャイン』の原画と原稿を持ち込み、翌年出版に漕ぎつける。その時以降70年間に100冊を書いたというから、これはアメリカ一かもしれない。そして、トーマス・マクレーディ・ジュニアと結婚して農場を営むようになる。そして38歳の時に友人に誘われて奈良の民家に滞在している。1953年であるから、日本はまだまだ貧しかった。その頃の奈良は江戸時代の雰囲気がまだ濃厚に残っていただろう。この経験がターシャのその後の生活にある程度影響を及ぼしたかもしれない。どういうわけか46歳でターシャは離婚する。両親の経験がどこか影を落としていたのだろうか。あおれに絵本作家として自活出来る自信があったのだろう。56歳でヴァーモント州に30万坪の土地を購入し、息子の協力を得て1830年代様式の農家を建て、そこでひとり住まいをする。それほど広大な土地を一気に買えたのは、絵本の印税が入ったからで、それほどターシャの絵本は売れた。そしてますます絵本は生活に密着した内容となり、古きアメリカの農家からしか生まれ得ないような温かい動物物語となる。登場する動物はみなターシャの農家で飼っていた、あるいは巣づくりをしていた動物で、その表現は日本の『鳥獣戯画』顔負けの達者な筆使いで、デッサンはしっかりしている。日本の漫画家では太刀打ち出来ない貫祿と言えばよいか、小手先感覚では全くない。鉛筆で下書きした後に絵具でザクザクと着色した原画で、仕上がりの版下は決してきれいではないが、陰影の調子が自然で、粗さよりも重厚さが伝わるのは、基本にていねいな感覚があるからだ。その点、日本の「へたうま」ものとは一線を画している。またターシャのすごい点は物語を自分で書いていることで、絵も文も巧みであったことだ。なかなかこれはない。絵は描けても物語がさっぱり面白くない、あるいはその反対というものが大多数で、ひとりでどちらもこなして、なおかつ個性が豊かで読んで心温まるものと言うものはめったにない。絵を描くのと文章を書くのとでは全く違う才能が必要で、ターシャはそのどちらも幼い時にすでに獲得するように努力していた。ターシャの絵本はどれも横長で、絵は同じ寸法をしている。日本でも何冊か出ていて、会場出口で販売されていたが、いつか目をじっくり通したい。だが、出来るならばアメリカの原書が好ましい。絵の版下に鉛筆で素朴な筆跡の文章を添えていたが、それを見る限り、文章は一気に書かれた雰囲気があった。頭の中で物語がしっかり出来上がってから各ページの場面を決めて描いたのであろう。そのため没にするような余分なページはなかったと思える。『ウィニー・ザ・プー(くまのプーさん)』の挿絵に似た雰囲気がありながら、さすがアメリカで、さらにくだけてディズニー的だ。
 離婚した後3人か4人の子をターシャはひとりで育てたが、それも絵本作家であることと、また農家暮らしでさほどお金も必要としなかったからかもしれない。確か長女はターシャのように絵本作家になっているし、子どもたちはみな母に協力的で、長男からはイギリスから足の短いコーギー犬を送ってもらい、それをすぐに気に入ったターシャは絵本に早速登場させるなど、母子の関係はうまく行っていたようだ。30万坪の土地というのは、狭い日本にいると、即座にどの程度の広さか理解出来ないが、その農地をターシャは花や野菜を植えて自給自足の生活を送った。ひとりで管理出来るのかどうか、球根を植えるだけでも何千個と書いてあったし、野菜が収穫出来るとしても、とてもひとりで食べ切れない。息子が手伝ってどこかへ出荷もしていたのだろう。人間ひとりが食べる、またターシャのような老人が食べる量は全くたかがしれており、30万坪は必要ないし、あっても管理し切れない。ターシャ亡き後、農園は息子が管理しているようで、そこを訪れるツアーもあるほどだ。会場に入ってすぐ、ターシャの庭を模して花畑が再現されていたが、実際は空気も澄み、もっと素晴らしかったに違いない。山羊から乳を絞ってチーズを作ったり、また農作業の合間にはキルト作りをしたり、とにかく1800年代初期の生活そのままに日々を過ごした。インタヴュー映像では農家の中のターシャが映ったが、電気が灯っていなくて暗かった。おそらく電気を引いていなかったはずで、そこまで徹底出来るのは真剣さが違う。衣装もわざわざオークションで1830年頃のものを落札して身につけるなど、何もかも200年近く前の生活にこだわったが、それは都会人から見れば、ある程度憧れのある人でも狂気に近く見えるのではないか。数日ならまだしも、それが生涯続くなると、一旦都市生活の便利さを覚えた人は実行が無理だ。だが、そんなターシャは92まで生きた。これはどういうことかと思う。不便が幸福で、しかも長寿の源であるとすれば、都会人はもう少し便利さを疑い、もっと肉体を使う不便さを考えた方がいい。たくさんの娯楽もいいが、自然が教えてくれる季節の変化はさらによくはないか。じっくり腰を据えなければ得られないものがあるのだ。忙しいことを自慢してもそのことで何が残るというのだろう。そうそう、先日バスに乗っていて、窓から外を見ると、バス道沿いの大きないくつかの鉢植えに水をやっている老人の男性がいた。顔はにこにこしていた。植木は目立たず、道行く人は誰も見ていないに違いないが、その男性にとってはそれを育てることがひとつの生き甲斐になっているようであった。筆者にはその気持ちがよくわかる。30万坪は不可能ならば、せめて道ばたの植木なのだ。そのわびしさに引き換え、今回の展覧会の会場に並べられた道具や衣装など、みんな日本で言う民藝品で、何と図太くて頼もしく見えたか。そういう日常使用する道具に取り囲まれてターシャは物語を創造し、絵を描いた。ニューヨークは例外であって、アメリカの本質は偉大な田舎とよく表現されるが、まさにその代名詞がターシャの生活だったかもしれない。もうひとり女性芸術家を挙げればジョージア・オキーフになるだろう。どちらも男をさっさと必要としない生活を送ったが、捨てられておろおろするのは男ばかりというようにならないためにも、男も炊事洗濯料理と自活出来るように努力しておいた方がよい。だが、動物と同じで、人間の男は全く使い捨ての消耗品であるから、そんな女の面倒臭い仕事など一切せずに、倒れた時はそれまでと腹を括っているのかもしれない。
●『ターシャ・テューダー展』_d0053294_14151657.jpg

by uuuzen | 2008-10-02 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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