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●『きのうよりワクワクしてきた』
昨日は万博公園内の民族学博物館に行ったが、それは確か去年12月初め頃に観た『アラビアンナイト大博覧会』以来だ。その時は向かい隣に建つ国立国際美術館が解体されている最中だった。



●『きのうよりワクワクしてきた』_d0053294_23341448.jpg先月の新聞に『太陽の塔』の正面の金色の顔をヘリコプターに乗って撮影した大きな写真が載った。その時、その塔の麓に写るはずの同美術館はもはやなく、雑然とした平坦な土地になっていた。それを確認する目的もあって昨日は万博公園に行ったが、美術館やその隣の万博ホールがあった区域は全部白い塀で隙間なくびっしりと囲まれ、中を見ることはできなかった。それでも『国立国際美術館』という文字を四方に縦書きに飾った美術館の直方体の塔がなくなっていたので、見通しはよく、塀の向こうに『太陽の塔』の背後がすぐに見えた。空が広くなった分、白々しく、せっかくの美術館前の薔薇園も工事現場の架設の雰囲気に満ちてさっぱりであった。塀が取り払われた後はさらに空虚さが増すと思うが、何か跡地にめぼしいものが建つのだろうか。そうではなく、『太陽の塔』後方の現在のだだっ広い『お祭り広場』が、そのまま北側に延長された格好になるだけに違いない。そう思うと、国立国際美術館によく訪れたこの20ほどの年月がなおさら懐かしく思い出される。民族学博物館は相変わらず存在するので、今後も万博公園にはしばしば行くであろうが、以前よりも回数は減少するのは間違いない。ところで、今回は民族学博物館に行く前にまずソラードと呼ばれる木製の空中回廊を初めて全部歩いた。これは公園内の西端方面にあって民博からはかなり離れている。2、3年前にできたものだと思うが、ずっと気になりながらもいつもそこまで足を延ばす時間がなかった。万博公園は広大な敷地であるため、もう20年以上も数え切れないほど訪れているのに、隅から隅までまだ全部を見ていないのだ。このソラードをを歩いていると、木々の梢が目の前に見えて気持ちがよい。紅葉の季節はさらによい眺めだろう。
 民博での特別展は『きのうよりワクワクしてきた』というタイトルだ。これだけでは何のことやらさっぱりわからない。チケット(本ページ上部に半券の画像)やチラシは、仮面をコラージュした犬か何かの動物を主に梅の花なども見える雑然としつつもカラフルで楽しい雰囲気に満ちているが、やはり何のことやらわからない。よく見ると副題があって、『ブリコラージュ・アート・ナウ 日常の冒険者たち』とある。これでもまだよくわからない。チラシ内部の文章を読んで初めてこの特別展の意義がわかる。ブリコラージュはレヴィ・ストロースが考えた造語とのことだが、身近にある適当なものを利用して何か目的のあるものを作る行為を言う。未開の人は都会に比べて調達できるものが限られるので、周りにあるものでいわば代用的に何か目的のものを作ることが多いが、そのことを表現する言葉だ。ブリはフランス語のbrut(生、原の意)だろう。これはフランスの画家ジャン・デュビュッフェが言い始めたと思うが、知恵遅れの人が描くような、素朴だが独特の力に溢れた絵画を「art brut(アール・ブリュット)」と名づけ、その価値を積極的に認める動きが世界的にあって、そこに焦点を定めた展覧会が7、8年前にあった。そのアール・ブリュットをこのブリコラージュという言葉を知ってすぐに連想した。結果的にその想像は当たっていて、日本のアール・ブリュット作品と言ってよいものがいろいろとまとめて雑然と展示されていた。作者は10数名だろうか。図録が1680円で販売されていたが買わなかった。中をざっと見たが、文章も多く、漫画もあって資料としても充実していた。その漫画からは、民博の展示資料は岡本太郎が『太陽の塔』を作るに当たって梅棹忠夫などに世界中から収集を指示したものであることがわかるなど、国立国際美術館が中之島に移転した後、なかなか民博も頑張っていることを改めてよく示すような内容に思えた。
 さて、特別展の展示は昭和30年代の日本の映画のポスターをフェルト・ペンで丁寧に縮小模写する人、空き缶で館を建てる人、廃棄される建物などの一部をそのまま利用してウクレレを作る人、カラフルなビニール・テープを使って爪程度の大きさのさまざまなシールを切り貼りして作る人など、どれも通常の美術展には無縁といった人々の作品で構成されていた。それなりにみな圧倒的な迫力があり、草間弥生の作品と共通するようなものを感じる。会場は段ボール材があちこちに使用され、それに大型ゴミとして捨てられていたものをそのまま利用してオブジェ作品にしたものに満ちているため、今までこの会場で開催されたどの特別展よりもごちゃごちゃした感じがしたが、これが大阪であるため、それなりに似合ってもいた。そうであるべきだし、それ以外であってはならないとも思える。大阪は大阪ならではの展覧会がもっと多く開催されるべきで、その点、この民博の特別展は毎回問題提起の仕方もよい。今回の展示物は展覧会が終わればほとんどが破棄されるようなものに満ちていたが、それから思い出すのは京都市美術館で昔よく観た『アンデパンダン展』だ。それは出品者たちがかなりコンセプチュアル・アートぶっていて、頭でっかちになっている面、鼻白んだが、このブリコラージュはもっと素朴で、作者が人に見せよう、見てほしいとほとんど何も思っていないだけに、作品がもっと清潔という気がする。もはやデュシャンのような切れ者だけしか芸術をやる資格がないようになってしまった現代の前衛芸術を思う時、未開で粗野、無教養であるかもしれない人々の、やむにやまれぬ造形感覚のほとばしりによる作品は、かえって痩せ細ってしまった前衛芸術を蹴散らして進む機関車の趣がある。ただし、こうした作品は同じパターンが何年も繰り返され、進展があまり望めないかもしれず、それを想像するといささか退屈感に襲われる。ただし、日展を初めとした各団体展に出品している人の大半は20年経ってもほぼ同じ作品を作り続けているから、そのどうしようもない退屈さよりはるかに許されるだろう。知恵と教養に富んだはずのそうした団体展への出品者たちが長年同じ作品を描き続けながら自分たちこそ最先端の芸術をやっているという自負と、ブリコラージュ作家の作品のぽつんとしたたたずまいを比べてみると、どちらが本当に健康であるかは誰の目にも明らかなような気がする。芸術とアール・ブリュットと呼ばれる作品を比較するなと言われそうだが、造形作品ということでは同列に論じられるべきものだ。
 会場には民博所蔵のオセアニアを初めとした世界各国の仮面なども随所に展示されていた。これは民博の所蔵品に今一度注目してほしいという思いもさることながら、ブリコラージュ作家の作品が実は現在日本民族の博物学的作品とでも言えるということを暗示しているように思えた。これは実際そのとおりであろう。会場2階にはNTTが開発した画像コラージュ装置もあって、子ども若いカップルもみんなが驚いていた。それは鏡としてその前に立つ人を映し出す大型TV画面に向かって小さな団扇をかざすと、その瞬間に画面に映っている人の顔がその団扇に印刷されている仮面などの顔に変わるというものだ。画面の上部に取りつけられている小型カメラが画面前に立つ人を画面上に映し出すと同時に団扇内のセンサーを感得してその画像を画面前に立つ人の顔と交換するという仕組みだ。これは開発されたばかりだそうで、まだどういった目的に使えばよいか決まっていないものということであった。画面上で画像が即座にコラージュられるという最先端の技術の成果と、廃品を利用して一風変わったオブジェを作るブリコラージュ作家の作品は、コラージュするという点で同じ水平線上に位置するが、この特別展のチケットにおける仮面をかぶった犬もその観点からデザインされている。チケットのこのピエロのような仮面は印象深いものだが、民博所蔵のエクアドルの仮面で、誰でも触れるように会場の片隅にぽんと置いてあった。それをかぶって写真を撮ったが、デジカメではないので、このブログの画面でその写真を今ここで掲げることはできないのが残念だ。子ども連れ夫婦がいつもの特別展より多かったが、これは歓迎すべきことだ。子どもが運転できる芋虫型の小型の車や、紙パイプで作られた数メートルの長さの折れ曲がった連通管電話、滑り台、洞窟のような通路、どれだけ大きな音で叩いてもかまわないスチール・ドラム・セットなど、遊園地のようでいてそこにはない面白さがあり、こうした遊びを通じて手づくりの面白さを子どもが認識すれば、TVゲームとは全然違う、それこそ『きのうよりワクワクして来る』楽しさを心に深く刻むのではないかと思える。
by uuuzen | 2005-06-05 23:22 | ●展覧会SOON評SO ON
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