五月晴れの好天気は陽射しが強いので、ちょっと曇り空の方がぶらりと散歩する気分になる。日焼けせずに済むからだ。



ニンゲンは適当に日光に当たらねばビタミン不足になるというが、当たり過ぎると顔にシミが出来て、それがひどくなると皮膚癌になるからややこしい。筆者もここ１、２年、左の頬に急にシミが目立つようになって来たとママーニが言うが、老化の途上にあるので仕方がない。若い頃に盛んに陽射しの下で写生したから、それが今頃になってシミになって来ている。もう手遅れだが、これ以上増やさないためには、帽子で陽射しを防ぐしかない。それで、大きな麦藁帽子を被れば近所の農夫のような感じになるので、２０年ほど前に買った布地の帽子を被るが、何度も洗ったので小さくなったのか、頭をすっぽり包むとかなり圧迫感がある。それにすぐに汗まみれになるので、もう少し大きな、そして格好のよい帽子がほしいと思っているが、なかなかそんなものは売っていないし、あっても誰も被っていないので、目立って困るか。そう言えば半年ほど前に出かけた百万遍知恩寺の毎月１５日の好例の手づくり市では、ある若い女性が毛糸で作った帽子だけを売っていた。それが全部同じ形で、当人もそれを被っていたが、なかなか似合っていた。どんな形かと言えば、頭のてっぺんが尖っていて、全体はネギ坊主そっくりだ。ロシアの寺院を思い出せばよい。つまり、大きな宝珠型で、これはマニマンにもぴったりだと思いながら、値段を訊ねることはしなかった。毛糸の種類や色合いで男が使用してもおかしくないものがあったと思うが、突飛な形のため、あれを被って街中を歩くには、全身をそれに合わせた服装にする必要がある。でも、たとえばサラリーマン・スーツにはどうだろう。ちぐはぐな状態もまた面白いかもしれない。その帽子のことが気になりながら、きっとまた冬場になれば彼女は店を出すだろうから、出かけて今度は値段を聞いてみようかなと思う。どこにもない手作り商品であるし、５０００円程度ではきっと無理かなとか思いながら、自分の好きな毛糸と色で誂えてほしいとか思ったりもする。それを被って変な格好になって、人から変なおじさんと思われるのも面白い。そんなチョイ悪おやじもかわいいではないか。
　そう言えば筆者はもう随分昔から自分で染めた生地でシャツを縫ってほしいと思いながら、そのままになっている。染めると言っても、ちょっとした顔料か染料で小さな文様を点在させて摺り込むのだが、その文様をマニ文様にすれば面白いかなと思っている。仕立ては親類のつながりでやってもらえるのだが、名工として府から表彰されたほどの非常に腕のよい人で、シャツ１枚で何万円もするようで、その点でもう諦めている。何でも他人と変わったことをしようとすれば高くつくのだ。それでも金がないならないで、自分なりに生活を楽しんでニンゲンは生きていかねばならない。要は考え方、工夫次第だ。さきほどパンを焼いて食べたが、最近手づくりのジャムを３種作った。その中のひとつが、色は悪いがとんでもなく美味しいものに仕上がって、それを毎日パンにつけて食べることが、おおげさではなく、至福の時となっている。食べた後も口の中に香ばしい味の余韻がしばらく残り、こればかりは市販のどんなジャムにもない味だと自惚れている。実際そのとおりで、入手しにくい特殊な果実を使ったのでもう二度と同じものは作れないが、そう思えばなおさら毎日のパン食が貴重な時間に思える。そのことについては『おにおにっ記３』に書いたのだが、ジャムの材料はほとんどスーパーでも廃棄処分する寸前の果実であった。それに別の果実を混ぜ、時間をたっぷりと費やして作った。自宅にいる時、猛烈に忙しいのに気まぐれから急にそんなジャム作りをしたくなる。鍋いっぱいたくさん出来るので、場合によっては２、３か月は充分持つが、市販価格の１０分の１程度で作ることが出来て、しかも無添加で安全であるから、こんなにいいことはない。ただし、半日は潰れる。時間は金なりであるから、通常の人はさっさとスーパーか百貨店でジャムを買うが、金をたくさん支払うことだけが裕福で贅沢なことではない。値上げや食の安全が問題になっている昨今、出来れば手作りしたもので補って生活を楽しむもひとつの手だ。五月晴れの連休とはいえ、別段どこへも行かず、家でゴロゴロしているが、疲れに行くだけの連休の遠出の光景をニュースで見ていると、あれほど貧しいニンゲンの姿もないように思う。本当に優雅な人はそんな混雑に巻き込まれずに、もっとゆうゆうゆうぜんとしているものだ。と、落ちがついたところで思い出したが、一昨日スーパーで買ったヤマブキの束がある。あれを明日にでも佃煮ににてやろうか。

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　　2007年06月18日●第　１３７　話

梅雨が本格化したのか、たくさん雨が降ります。ナメクジが家の中に這い上がって来た跡を見てマニマンは心配します。その行き先が本をたくさん積んだ方向だからです。早く梅雨の季節が過ぎてほしいものですが、そうなれば猛烈な暑さの日々です。それを思うと、雨降る涼しさの方がはるかにいいです。マニマンは傘をさして雨の中に買い物に行くのはさほどいやではありません。傘に雨粒が降って鳴る音は気分がいいですし、見慣れた風景も違って見えるからです。でもアジサイは別として、花はだいたい大雨はいやなものです。雨に濡れては光合成が出来ませんから、葉はすぐに水分を下へと落とす必要があります。そのため、中央縦方向に溝があり、先端に向かって垂れています。花はどうでしょう。マニマンは前庭の大きな家を通りがかった時、無残にも薔薇の花が地面に倒れているのを見かけました。起こしてあげて、茎をしっかりした棒にくくりつけるとまた元気になるかもしれませんが、他人の家なのでそんな勝手は出来ません。それにしても、地面で濡れ続ける赤い薔薇はそれなりにきれいでした。