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●『印象派と西洋絵画の巨匠たち展』
王子にある東京富士美術館所蔵の作品を展覧するもので、9日に京都文化博物館で見た。83か4年に八王子に行ったことがあって、Iさんの運転する車でこの富士美術館のすぐ前を通った。ちょうど開館したばかりの美術館という説明をIさんから受け、創価学会の美術館という話も聞いた。



●『印象派と西洋絵画の巨匠たち展』_d0053294_0561433.jpgこの美術館は83年11月に開館記念として『近世フランス絵画展』を開催した。最近古書店で買った図録を見ると、企画・監修がルネ・ユイグで、名誉委員にパリ市長のジャック・シラクや安倍晋太郎や前川誠郎、河北倫明、高階秀爾といった名前があり、大がかりな企画であったことがわかる。作品はルーブルを初め、フランスの9つの美術館から借りて来たものが展示されたが、池田大作の希望にも沿った内容であったのだろう。池田大作の英雄、特にナポレオン好みはそうとうなもののようで、今春も同館主催でナポレオン展が各地で開催された。神戸にもやって来たが見に行かなかった。軍人であったナポレオンとそうではない池田大作とではどんな共通点があるのか知らないが、ナポレオンの文化に寄与した面が大きい点が普通の軍人とは違うところで、その劇的な生涯から限りないロマンを感じる人は多いだろうし、池田大作がそんなひとりであるとしても驚くには当たらない。だが、ナポレオンがロシアの負け戦から、部下のコレンクールだけを伴って大量の金貨を積んだ馬車でさっさと密かに撤退した事実を読むと、全くとんでもない無責任で、その一事だけでも何と出鱈目な人物であったかと思わざるを得ない。勇気があったためにとんとん拍子で昇格したのは事実でも、一方で兵士の死を蚊の死ほどにも思わない冷血ぶりを知ると、戦争時の英雄とは悪魔や死神と同義であることを知らないわけには行かない。ジョン・レノンがビートルズ時代に勲章をもらった時、人をたくさん殺した人がもらうような勲章はいらないと言って突っ返したが、それは全く正しい行為だ。時代が違うと言えばそれまでだが、ジョンが人を殺して平気で英雄にまつり上げられて喜ぶような鈍感きわまる人物ではなかったことは確かであろう。ナポレオン崇拝は勝手だが、戦後の平和日本で軍人賛美はどうかと思う。それはさておき、富士美術館は開館以来、作品の収集や公開を積極的に行ない、日本、東洋、西洋の各時代の絵画、彫刻、漆工、版画、武具、刀剣、写真、メダルなど27000点を所蔵する。西洋絵画はイタリア・ルネサンスから20世紀にわたるまで網羅し、今回の展示は19、20世紀の西洋絵画史200年を概観する内容であった。
 文化博物館は人の列が出来るほど多く入っていた。ところが、人々はいつもとはどこか違って熱心な美術ファンには見えなかった。おそらく大半が創価学会員であろう。創価学会については中学校の頃からいくつもの思い出がある。最も遅いものでは、30歳頃に同世代の男性から熱心に勧誘されたことだ。宗教と政治がつながる学会のあり方は政教分離の観点からはおかしいという筆者の意見を、その人はただ否定したが、その後全く会いもしないのに今でも選挙のたびに公明党に投票してくれと電話がかかって来るから、本当に筋金入りの信者が多い。それはいいとして、今回の人の波は、学会支部から見に行くことをすすめられ、無料チケットが回って来たからではないだろうか。普段美術に関心のない人が年に1回くらいは西洋の本物がどういうものであるかを確認するのは、それはそれでいいことだ。富士美術館がどのようにして作品の購入資金を得ているのか知らないが、創価学会と背後に控えているのであれば、当然信者から集めた資金が元になっているはずで、今回信者が多く訪れたとしてもそれは当然だ。信仰の力をもってすれば西洋の名のある画家の絵でも買えるという現実を知り、さらに信仰に精出すという循環システムがより強固にされるのは喜ぶべきことだろう。新興宗教でも美術品を買い集めて美術館を建てるというのは、一流の証拠で、それに至らないどころか、そんなことを微塵も考えない金儲け一辺倒の教祖は多いだろう。オウム真理教が醜悪に見えたのは、教祖も含めてどの幹部も美術に無関心な顔をしていたからだ。では、美術に関心があれば人間として立派なのかという反論が出るだろうが、美術を否定する人間に立派なのはいないと言っておこう。さて、会場は全70点を1「ロマン主義」、2「アカデミズム」、3「バルビゾン派」、4「印象派」、5「20世紀」のコーナーに分けて展示していた。作品数に比べて会場が広過ぎたため、普段よりゆったりした感じで見ることが出来た。逆に言えば物足りなかったのだが、それは富士美術館が元々大した作品を所蔵していないためなのか、それともいい作品を出し惜しみしたのか、どちらが真実に近いかは残念ながらわからない。27000点と言えばかなりの作品数だが、ごく小さなコイン1枚を1点と数えれば、すぐに1000点ほどにはなるから、点数だけでは全体の質の高さはわからない。仮に世界中のあらゆる地域のあらゆる時代のものを満遍なく収集するのが究極の目的としても、館が出来て23年ではまだまだコレクションの充実は途上段階にある。そんなことを前提に思いつつ、あまり辛辣に見ない方がよい。
 各コーナーを順に見て行こう。作品名の後ろの丸括弧内の年度は「頃」のつくものがままあったが、それはここでは省く。各作品の画家名の国籍が表示されず、また解説パネルも一切なかったので、詳細は図録に頼るしかないが、買わず、見もしなかった。1の副題は「若き感性と情熱」だ。作品はわずか5点で、これは拍子抜けした。ターナーの「嵐の近づく海景」(1803-4)は、まだ20代の若描きで、後年の独特の特徴は出ていない。ターナーと言われなければありがたみが乏しいが、それは間違った見方であって、絵そのものがいいかどうかで判断しなければならない。その意味からもこの絵はそれなりによかった。「突撃するナポレオン軍の将軍」(1810)は馬に乗る軍人を描いたジェリコーの油彩だ。ターナーの絵と同じく小品で、取り立てて言うほどのこともないが、ナポレオン時代の絵ということで買い入れられたのだろう。「手綱を持つチエルケス人」(1858)はドラクロアの油彩で、「オランダのアラブ人」「アルジェのユダヤ人」の2点のエッチングと同じ東洋趣味の作風だ。次に2は副題が「伝統の精神」で同じく5点の出品。あまり知られない画家が中心だが、その分画面は大きく、一般人が好みやすい題材を描く。ジェームズ・バーレル・スミスの「滝」(1874)、ベンジャミン・ウィリアム・リーダーの「小川の夕べ」(1887)、ウィリアム・アドルフ・ブーグローの「漁師の娘」(1872頃)、ミケール・ゴルディジャーニの「シルクのソファ」(1879)、エドワード・ウィルキンス・ウェイトの「ひなぎくの野の子どもたち」(1896)で、特に「シルクのソファ」が目を引いた。フィレンツェの画家のようだが、ベージュ色のベッドにひとりの小さな子どもが寝巻き姿でもたれて立ち、ベッド上には日本の黒地のキモノが折りたたんで置かれ、床には幾何学模様の織りの絨毯が敷かれている。ベッド・カヴァーはシルクのサテンの光沢があり、背後の部屋の壁にも白地の布地を垂れ下げている。さまざまな布地の質感が見事に表現される中、目のぱっちりとした笑顔のかわいい子どもも写実的に描かれるが、美術史的には主流を占めなくてもこうした絵があることで、普段絵画に馴染みのない人も所蔵品に文句を言わないだろう。「ひなぎくの野の子どもたち」は、遠近が強調された広々とした野外に子どもたちを点在させる。ラファエル前派を枯淡にしたような味わいを保ち、写実的で緻密な作風は「シルクのソファ」同様、写真が登場した後の油彩画のあり方を思わせる。馴染みのない画家だけにこうした作品はかえって印象に残りやすい。
 3のコーナーの副題は「人と風景の再発見」で、ミレー、コロー、ドービニー、クールベの作品が並んだ。ミレーの「鵞鳥番の少女」(1866-7)はやや未完成的ながら、ミレーらしい味わいのあるいい油彩の小品だ。リトグラフの「種をまく人」(1850)、エッチングの「落穂拾い」(1855-6)、「手押し車の男」(同)も隣に展示され、日本人のミレー好みに応えている様子がわかる。このコーナーではドービニーの「川辺の風景」(1874)が特によかった。夕暮れの水辺に鵞鳥を14羽追い立てる女性が画面右端に立ち、小さな横長の画面に夢見るようなどこか懐かしい気配が漂っていた。今回の展示の中でどれか1点を選べとなれば、筆者はこの作品か、モネの「ブールヴィルの断崖」(1882)を選ぶ。4のコーナーは「光と色彩の交響曲」の副題で、今回の展示の見所の中心をなす。まずモネの3点で、「海辺の船」(1881)は縦長の画面に帆を下ろした船の停泊の様子を描く。遠くには港町の建物が見え、画面半分を占める青空には白い雲が斑になってたくさん浮かぶ。構図の面白さ、力強い色彩はモネの才能をよく示す。「ブールヴィルの断崖」は横長でもっと明るい絵だが、画面下半分がほとんど未完成のように絵具の塗りが少ないが、少し離れて見るとそれは全く気にならない。写実を越え、幻想の領域に踏み込んでいるその味わいは、どことなく世紀末のムードを宿しつつも、むしろ現代絵画に一気につながるからりとした抽象感覚を伝える。「睡蓮」(1908)は何枚もシリーズで描いたうちの1枚で、言うべきこともない。セザンヌの「オーヴェールの曲がり道」(1873)もいかにもセザンヌで、飛び切りの名品ではないにしてもこうした作品が含まれるのは嬉しい。ピサロは「秋、朝、曇り、エラニー」(1900)という、比較的大きな横長の油彩が出ていたが、その右隣は「春、朝、曇り、エラニー」(同)というほぼ同じ大きさの作品で、比較すれば明らかに秋と春を描き分けている画家の目の確かさを知る。ギュスターヴ・ロワゾーの点描風でピサロに近い作風の「草原の道、ヴォードルイユ」(1900)、シスレーの「牧草地の牛、ルーヴシエンヌ」(1874)と続き、ルノワールの「赤い服の女」(1892)が来た。どこか弱々しくて悲しいいこの女性の眼差しは、赤い服の色によってかろうじて華やかな幸福感に彩られているように見える。優しい母性を感じさせる絵として購入が決まったのだろう。だカ、ルノワールの作品としては特筆するほどの出来ではない。アンリ・マルタンの「画家の庭」(1902)、アンリ・シダネルの「森の小憩、ジェルブロワ」(1925)も比較的珍しい画家の作品で、特に後者は木漏れ日注ぐ森の小道で白い敷布上に籠や果物、瓶などが散在する様子をルノワールとゴーギャンを足して二で割ったようなタッチで描きながら、人物が不在で帽子が枝にかかるなど、描かれないものの存在を強く想像させるところがすでに印象派からは遠い。
 5のコーナーは「新たな表現を求めて」で、40点近く展示され、全体の半分以上を占めていた。また版画が中心で、これでは展覧会の名称に偽りがあるように思うが、広い会場を埋めるには仕方がない。ピカソのドライポイントによる「プロフィール」(1905)は青の時代の繊細な線表現による痩せた人物の横顔で、珍しい秀作だ。リトグラフの「鳩」(1949)は、地面にとどまる白鳩を黒の背景に描く作品で、戦後間もない頃の平和を願った思いが伝わるようだ。ボナールの油彩「若い女」(1905)は、斜め正面から女性の上半身を描いた力強い作品でなかなかよい小品だ。作者の自信が伝わる。ユトリロの風景画、ブラックのリトやエッチングの大きな版画が4点が続き、次にキスリングの「花」(1929)の油彩画がよかった。キスリングは花でも裸婦でも独特の絵具の塗り方があって、時に味わいに乏しいが、この作品はバラやチューリップ、アネモネなどを壺に活けた様子を明るく豊穰に描き、才能を見直した。ローランサンの油彩1点、シャガールとキリコはリトが数点続き、そしてマグリットとモランディの油彩の小品ではしばし足を止めた。どちらも佳作でよい。後者のような渋い作品を所有するのは好ましい。ミロは大きなリト作品が4点あったが、あまりありがたみが湧かない。ヴィクター・パスモアという版画家は初めて知るが、「内なる空間」(1982)は、横長で高さは1メートルほどあろうか、エッチングとアクアチント併用の水色を主体にした色刷りの大画面には驚いた。同じ作家の「緑の闇」(1986)、「2つのイメージ:黄」(1976)も共通した色面主体の抽象版画で、技術的にも巧みなところを見せている。アンス・アルトゥングも初めて見る版画家で、「ファランドール:黒と赤」(1970-1)というタイトルの色の部分を変えただけのシリーズ作品が3点出ていた。タマヨの「エビ」(1973)「魚」「西瓜」(同)は、具象を用いながらも単純な画面構成と黒地に赤という強い色彩表現によってメキシコの風土をよく表現しているように思える。アントニ・タピエスの「褐色の門」(1973)、「傾いたT」(同)は、彫りの深い様子がそのまま刷られた骨太の表現による抽象画面で、独自のものがある。後はアメリカ人の版画作品で、ウォーホルの4点、ロバート・インディアナの「LOVE」(1966)、そしてリキテンシュタインの「戦うネイティヴ・アメリカン」(1952)という、どこかピカソ風のタッチによる油彩による抽象画の小品が最後にあった。
by uuuzen | 2006-07-13 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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