「
打つ手増え SNSで 大人気 みんな夢見て 現実を知る」、「ぼったくり それは当然 観光地 人は繰り出し 売り切れ早し」、「売り物は 何でもよろし 嵐山 歩きつ食べて ゴミ箱探し」、「コロナ禍の 次にあるかも 災いは 稼げるうちに 客を逃がすな」

先日渡月橋界隈を歩いていると、食べ物のメニューを見ながら50代の男性が「ぼったくりやな」と傍らの女性に呟いていた。嵐山で食事しなくても三条や四条の河原町に出ればもっと安価で食べられることを知っているのだろう。それにその人が住むかもしれない大阪であればもっと安くて済ませられる。しかし誰しも観光地はおしなべて食べ物が割高であるのは当然という認識を抱いている。嵐山に毎年訪れる人はきわめて稀で、たいていは一生に数回だ。外国人観光客であれば一生に一度であろうから、食べ物の価格は気にしていられない。思い出作りのためであれば、窓から渡月橋を見下ろせるようなレストランで食事するのは理想的で、少々割高でも眺望代と思えば安い。実際安価な店はそれなりで、観光地に行ってそういう店を探して入っても嫌な思い出が残るだけだ。今秋は阪急嵐山駅前の林の中に急ごしらえのテイクアウトの店が登場し、いかに阪急が所有する土地を有効利用に勤しんでいるかがわかる。しかし嵐山を訪れる観光客のうち、阪急電車を利用する人は1割に満たないはずで、とても便利であるにもかかわらずその存在を知らない人が多い。渡月橋北詰東のバス停で待っていると、時間を気にした観光客が1時間に3本しかないバスを待っている様子によく遭遇する。どこへ行きたいのかと彼らに話しかけることはたまにあるが、バスを待ち、しかも来たバスに長時間乗るより、いっそのこと渡月橋を南に越えて阪急嵐山駅から乗ったほうがはるかに、つまり半分以下の所要時間で済むのに、それを実行する人に出会ったことがない。これは嵐山とは渡月橋から北側のみと思われているからだろう。それにバスの1日乗り放題チケットを買った場合、それとは別に阪急電車の運賃を支払うのが馬鹿らしいからかもしれない。だが「時は金なり」が人生の中でも最も当てはまる京都観光ではいかに短時間に多くの場所を回れるかを考えるのがよく、その点でバスは最も効率が悪い。その効率から阪急駅前の林の中に登場した仮設店舗でゆっくりする人はとても少ない気がするが、わずかでも儲けが出ればよいのだろう。それに今後評判を呼んで大賑わいにならないとも限らない。しかし今のところ筆者は写真を撮るだけでカヌレを買って食べようとは思わない。百貨店に行けば売っているからだが、それを言えば嵐山でしか売っていないものを考えることは難しい。紅茶とカヌレ1個で千円で釣りがあれば充分と考える客はたくさんいるはずで、閉ざされた空間ではなく、林の中で食べるということも非日常的で喜ばれやすいだろう。

今日の最初の写真は先月22日の撮影で、左の写真の椅子の上に置かれるチラシが2枚目の写真だ。デザインがかなり上品で、あまり効果的とは思えない。下品がいいというのではなく、もっと目立つものがよい。このデザインでは洒落た店舗が想像され、商品が高額であるとの印象を与える。それはさておき、このチラシで気になるのは、2枚目の下方の写真が示すように、チラシ中央左に小さな地図が掲げられる。赤い線は筆者が嵯峨に行くのに歩くルートだ。その地図にこの店を経営する会社が阪急から借り受けた土地の範囲が示され、「風風の湯」の正面玄関の目の前の桜の古木がたくさんある広場が含まれる。そこにも仮設の店舗が登場するとして、その数はひとつやふたつでは済まない気がする。地元住民には花見に利用される空間だが、四半世紀前は満開の桜の木の下でバーベキューや焼き肉をするグループがひしめき合い、歩く隙間のないほどに人が群がった。それでは桜によくないとの理由もあって、阪急は「火気厳禁」を記した札をどの桜の木にも巻き付け、やがて「風風の湯」が建ったこともあって、桜の季節は弁当をこっそり広げるおとなしいグループがわずかに点在するようになった。阪急はそれくらいは黙認するということだったはずだが、駅前の林の中にカヌレと紅茶を提供する店が登場してからは用もないのにその林に踏み込む人はいなくなった。それと同じことがその林の数倍の面積のある「風風の湯」の前でいずれ起こりそうだ。世知辛いと思うのはその林を散策する人で、阪急としては自社の敷地に無断で入るなという考えかもしれない。そこから締め出されても中ノ島公園があるのでさほど窮屈ではないとはいえ、筆者は現状すなわち何もない状態のままであってほしい。それに店が登場するとして、何を売れば理想的か。ハンバーガーかうどんかそばか、あるいはカレーライスか、キッチンカーや屋台程度の小さな移動可能な店となれば提供出来るものは限られる。今日の3枚目の写真は今月1日の撮影で、林の奧に客が座っているのが見える。阪急を利用する人々の大半は素通りするが、そのうちの1パーセントでも客となればいいとの考えか。駅前はホテル花伝抄以外には小さなコンビニと喫茶店があるのみで、そのどちらにもない商品ということでカヌレが選ばれたのだろうが、思ったほど利益が出なければ別のものを売る店と交代するだろう。今は作戦の最大はチラシではなく、SNSのはずで、筆者が知らないだけで盛んに情報が飛び交っているかもしれない。若者や家族連れ向きの店で、そう思う筆者には用はなさそうだ。真冬になると雪が降ることもあり、そういう日に客があるのかと心配するが、そういう稀な天候の日でもそれなりに喜ぶ人はいるかもしれない。観光地嵐山は非日常を味わうためのもので、悪天候を乙なものと思える人が訪れる。

