「
主なき 落とし物なき ゴミしかり 落ちましたよと 笑みを浮かべて」、「片方の 手袋落ちる 冬の道 どうせ安物 持ち主想う」、「昨日見た 白足袋ひとつ 今日もあり 誰が踏んだか 路肩の溝に」、「膝掛けを 拾い移すは 道路脇 探す持ち主 見えるかどうか
」

家内の入院中、可能な限り毎日撮ったものがふたつある。ひとつは家内の顔だ。これは原則的に本ブログに載せるつもりはないが、気が変わる可能性はある。つまり迷っている。もうひとつは今日紹介する路上に落ちていた幼児用の白い靴の片方だ。最初に見かけたのは1月6日だ。以前書いたようにわが家から病院まで自転車で行く際に走る道は決めていたが、途中ふたつの急な坂があって、そのどちらでも坂の下で自転車を降りて歩いた。一気にペダルを漕いで上る体力はまだあるが、よけいな体力は使わないに限ると、家内の入院後に思った。少しくらい時間が遅くなってもその分早く家を出れば済むことだ。以前書いたように松尾大社の参拝客は三が日はとても多く、自転車で大鳥居前の交差点を走ることは困難で、降りて歩いた。数人固まって歩く地元住民の参拝客の姿は、この片方の靴が落ちていた付近やもっと病院に近い南方でもちらほら見かけ、6日頃まで目にした。そのため、この片方の靴は地元の参拝客のものかとも思ったが、真相はわからない。6日の落ちていた様子の写真は撮らなかった。翌日同じ坂道を歩き始めると、今日の最初の写真のように民家と歩道を仕切る民家所有のブロック上に移動させられていた。これなら落とし主が見つけやすいし、車に轢かれることもない。早く持ち主の手元に戻ればいいと思いながら、毎日午後1時40分から50分頃の間にこの靴の写真を撮った。撮影時は坂の下であるので自転車を降りる。ちょっとした一休みのつもりでカメラを向けた。その日課の半分の日数の様子を今日は紹介する。どれもほとんど同じトリミングで変わり映えしないが、せっかく撮ったので使う。2、3枚目の写真は撮った日づけ順に5枚連ねた。2枚目は9日から13日、3枚目は14日から19日で、18日は抜けている。また8日がないのは当日ネット回線業者が午後に工事に来るというので、息子に仕事を休ませたうえで家内の見舞いに行かせたためだ。18日は上の妹夫婦がわが家にやって来て車で一緒に病院に行ったため、この靴が置かれる脇道を通らなかった。7日は靴がブロック上に置かれていたのに、9日はブロックに立てかけられ、民家の壁により近づいている。民家の住民が気を利かせたためかもしれない。ブロック上に平たく置けば雨で靴内部が濡れやすい。立てかけていてもそうなるがまだましだ。となるとビニール袋に入れればよく、よほど筆者はそうしようか思ったが、持ち主の目にはつきにくい。いや、目につきやすくなるが、落とした時の状態と違うのでいささか戸惑うだろう。

家内は先週「風風の湯」で弟夫婦が見舞い時に持参してくれた厚手の靴下の一足を持ち帰ることを忘れたことを今日また思い出し、開店する正午少し前に電話をかけた。女湯の担当者に尋ねておくとの返事で、その後電話がなかったので、運動がてらに家内と嵯峨に買い物に出かけ、その帰りに立ち寄った。フロントに初めて見る若い女性がいて、彼女に訊くと即座に「ありません」の返事だ。探しもしないのにその返事はない。すると先ほど電話口に出た男性が玄関から入って来た。靴下のことを告げると、1分ほど中座して戻って来て、「これですか」と言う。「ああ、これです」で手元に無事戻って来たが、これまで「風風の湯」で持ち帰ることを忘れた物品の出て来る可能性は5割で、今回は運がよかった。一方、家内は1週間ほど前に嵯峨のどこかのスーパーのレジでの支払い時に落とした黒い手袋の両方がないことが気がかりで、今日は落としたと思っているスーパーで訊ねると、ないと言われた。手袋は冬場の遺失物では最も多いはずで、たいてい片方だけが路上に落ちている。使い道のないその手袋が所有者に戻る可能性はどれほどか。高価なものや特に思い出深いものである場合は必死に探すが、たいていは「まあ、仕方ない」と諦める。拾った人が交番に届けることもまずないだろう。かわいい女性ものであれば別だが、手袋は嵌めていた人の体温や体臭が残っているように感じるからで、汗臭い男性ものとなると踏まれたり蹴られたりしてやがて溝に落ちる。そういう運命になった片方の足袋を先の子ども用の白い靴から20メートル先で見かけた。足袋は珍しく、男物か女性用かわからないが、翌日には踏まれて汚れ、その翌日にはさらにひどい状態になって溝の鉄製の蓋にねじ込まれて足袋とはわからなくなっていた。同じ身につける片割れの落とし物でも、幼児用の真新しい白い靴と足袋とでは人々の認識の差がありそうだ。冒頭の「短歌」に詠んだように、自転車で走っていると道路の真ん中でまだ新しい膝かけ毛布が落ちていることに遭遇した。先月22日のことだ。あまり自動車が走らない道だがいずれ踏みつけにされるから、すぐに拾って路肩の植え込みの隙間に置いた。その植え込みのある家はかなり大きく、筆者が落とし物を置くことを快く思わないだろうが、毛布と落とし主を思えばそうするしかない。しかし落とした人が戻って来た時、筆者が置いた場所では見つけられるだろうか。全体に茶色で、植え込みに置くと目立たなかったからだ。落とし物が所有者の手元に戻る割合はどれほどか。安価なものではみんな諦める。雨傘はどの家にも10本はある。手袋は場合によりけりだが、筆者は家内の見舞いに訪れる際、いつも軍手にした。10や20は家にあるからだが、家内は見栄えが悪いのでよしてほしいと何度も言った。そういう安価なものに限って失うことは少ない。

