「
肖像を 何歳のもの 選ぼうか 迷う間に 撮る機失い」、「積雪に 家屋耐えれず ひしゃげれば 菱の文様 どこが目出たき」、「不規則に 規則あるとの 見立て屋は 森羅万象 見える記号に」、「単純な ものほどよきと 知る境地 齢重ねて あの世目の前」

3日前にザッパ・ファミリーのサイトに『ボンゴ・フューリー50周年記念盤』を発注した。日本のアマゾンと発売日は同時ながら、2000円ほど安価で、少しでも安いほうがよい。昨日の投稿の題名の短歌(短気歌と呼ぶのがいいが)の最後を「紙袋持ち」としたのは、75年にザッパの前に現われた親友のキャプテン・ビーフハートは文無しで、紙袋ひとつを提げていたとの逸話を思い出したからだ。贅沢三昧で生涯食べて行けるミュージシャンは珍しい。金儲けにいかにも無縁のようであったビーフハートならなおさらだ。そういう人物ほど純粋で作品も素晴らしいかとなれば、それとは言えないが、TVに頻繁に登場するいかにも知性とは無縁な顔の芸人を見ていると気分が悪くなり、即座に切るか別のチャンネルに変える。TV番組は馬鹿を基準に作られているのだが、ネットも同じで、それで昔の本を好んで読む。今日の投稿は昨日の後半に書こうかと思いながら、二回に分けることにした。三越百貨店の紙袋の新デザインに採用された森口邦彦氏の訪問着は題名を知らないが、菱の文様を抽象化したものかと思いながら、全く菱の葉や実の形には見えない。菱の抽象化とは呼べず、花鳥風月とは関係のない純粋な抽象かもしれない。染織では最初にそうした純粋抽象があった。縦縞模様はその代表で、次に絣のさまざまな文様がある。絵文様を自在に染められる友禅染において、花鳥風月ではない幾何学文様を染めることは、斬新な試みと言えばそうだが、視点を変えると全くそうではなく、邦彦氏の染める文様のもっと複雑で独創的なものはイスラムのタイルに触発されたエッシャーの作品にある。それはさておき、昨日は花札の絵模様は極端化した記号と書いたが、植物はどれも同じレベルで単純化され得る形をしていない。楓は写実的に描いても花札に描かれるのと大差ないが、牡丹の花は実物は花弁の枚数が多く、花札に描かれるものは思い切りそれを減らして単純化している。それでも牡丹に見えるから問題ないと言う人は花を知らない。もっとややこしいのは松だ。これは若い頃と老いてからの形が全然違う。またどこから見るかによっても形は大いに異なり、誰もが納得出来る記号化は本当は難しい。それだけに画家にとって取り組み甲斐がある。とはいえ、能舞台の背後に描かれる松はほとんどどれも老松で、形もあまりに文様化してどれも変わり映えしない。そういう紋切り型の記号的な花を題材にする昔からの友禅に反抗するゆえの、邦彦氏のミニマル主義かもしれないが、別の理由は若い頃にフランスに学び、現代芸術の一派に感化されたからだ。

2●邦彦氏のキモノの文様がそっくりそのまま三越百貨店の紙袋の新デザインに採用されたことは、父の華弘の代から同百貨店で個展を開催するなど、深い関係があったためだろう。老舗百貨店はどこももとをたどれば呉服を扱っていたから、その意味でも三越が邦彦氏のデザインを紙袋に使って広く世間に紹介することは律儀で的確な判断と言えはするが、現在から将来に向かう視座を取る場合、筆者はミニマルはもう終わった現象と思っている。つまり、古臭い。それで先月11日に紙袋を見た時、田舎じみていると感じた。ではどういうデザインがふさわしいかと問われるが、仮に同じような抽象文様になるとしても、もっと若い世代に委ねると斬新な空気をまとうはずだ。しかし老舗百貨店は若手に名誉ある仕事を任せないだろう。ついでながら筆者が20代の終わり頃に染めた本の装丁の写真を今日の最初に掲げておく。これは木綿にローケツ染めで、ミニマル主義を意識した。題名は「Mの変移」であったと記憶するが、Mの形にある菱型を意識している。今日の2枚目の写真はわが家から最も近い路上のダイヤ・マークで、珍しくも4つがほぼ平行して描かれる。見慣れているかと言えば、全く逆で「灯台下暗し」であった。家内の入院中に
廊下に展示される「障がい者アート」の一作から注意するようになって、世の中には見ていながら注意を払わないものがあまりに多い。あまりと言うより、ほとんどすべてに近いものを無視しながら生きて死ぬ。路上の4つのダイヤ・マークは日本風に言えば四つ菱だ。菱は今は珍しくなったが、昔は救荒植物で、でんぷんを取るために積極的に栽培された。本来水中の雑草だが、人に役立つものとの意識があって、家紋に使用されるようになったのだろう。先に松の文様化について書いたが、松葉以外に幹や枝の形を工夫して描くことで松の文様的表現は多彩になり得る。面白いのは松の樹皮だ。今日の3枚目に嵐山の桂川左岸にある松のそれを載せる。この樹皮は誰でも一瞬で松とわかるものの、松の種類によって差があるのは当然で、いわば記号化しにくい。しかし樹肌のひび割れは偶然の産物でありながら、ある規則によっている面があることも確かで、昔の人は松の樹皮を描くのにどうにか単純な規則らしきものを見て取ろうとした。染織の世界では「松皮菱」という文様がある。これは横長の菱形を三つ上下に重ね、上と下の菱型は同じ大きさだ。その輪郭は稲妻模様に似ているが、まさか松の樹皮とはほとんどの人は思わない。しかし一旦「松皮菱」と呼ばれることがわかると、その単純な記号を実物の松の樹皮に探ろうとし、また妙に納得してしまう。ついでながら、「松皮菱」の三つ重ねる菱形の一番下を最大にし、一番上が最少、中間のものを中間の大きさにした文様は、冷却設備会社の「さんりょう」のロゴマークだ。「さんりょう」の「りょう」は菱で、同社は三菱系だ。