「
視野に入る 赤き矢印 太文字で 電車降りれば みな導かれ」、「紅葉に かけた赤文字 目立ち過ぎ 注意喚起の 裏の意図とは」、「ぞろぞろと 民家の前を 歩くより 林を抜けて 目の前は川」、「紅葉狩り するほどの赤 もう稀な 嵐山には 人のみ多き」
今日の写真は今日撮った。嵐山駅前の広場の北端に渡月橋に行くにはこちらという方向を示す垂れ幕が道路フェンスにステレオのように2枚貼られた。昨日か今日設置されたはずだ。これはどこが設置したのだろうか。たぶん阪急だろう。また警察と相談してのことかもしれないが、当然自動車の誘導用では全くない。今は嵐山の紅葉を求めて阪急嵐山駅を利用する客が最も多い週末で、道がよくわからない観光客に教えようということだ。今日は冒頭の4首の歌に言いたいことはおおよそ書いたが、ひとつ残っていることがある。この垂れ幕は去年はなかったと思う。あってもこのように目立つ文字ではなかった。渡月橋への近道を指示することは観光客にとってはありがたいが、地元住民もそうだろうか。確かに矢印とは反対の左手に行くと民家があるので、そこを大勢の人が歩くのは住民からすれば鬱陶しいが、民家ばかりがあるのではない。写真の2枚の垂れ幕の間がホテル「花伝抄」の玄関で、左端は昔から営業している「カフェらんざん」で、建物の側面に「COFFEE」の文字が見える。この喫茶店の玄関は矢印とは反対方向にあって、らんざんにすればあまりいい気はしないだろう。そう想像してみると、矢印方向に歩くと、阪急電車を利用した人は、必ず
17日にプレ営業を始めた紅茶とカヌレを売る小屋の前を歩くことに気づく。その売店は阪急所有の土地に建ったから、阪急としては宣伝を兼ね、また売り上げ増進を狙って、この垂れ幕を駅を降りれば真正面に目につくフェンスに貼りつけたのではないか。それは地元住民への配慮ではあろうが、所有の土地で営業させる店への便宜でもある。カフェらんざんのマスターと今年の春先に話したところ、昔は8割が一見客、2割が地元住民が利用していたが、近年はその割合が逆転したという。この2枚の垂れ幕を見ると、阪急電車を利用する人はカフェらんざんには目が向かない。SNSの時代、カフェは工夫次第で一見客が急増する。それは営業努力だ。客の8割が地元住民が占めるのであれば、昔と同じメニューと味で充分営業が続けられるだろうが、そうとばかりは言い切れない。京都では何代も続く老舗の和菓子屋がいくつもあるが、そういう店でも新商品を開発し、宣伝に余念がない。流行商売である喫茶店ではさらに時代を読んで先駆ける精神は必要だろう。この赤い垂れ幕にはSNSによる戦略と似たような作為がちらつく。紅葉が過ぎ去れば撤去されるが、来春やまた秋はどうなるか、その変化からまた新たなことがわかるだろう。嵐山が賑わうのに比例して紅葉は駄目になって来ていることは気のせいか。