「
左右見て 道路横断 わたり切る 歩道に車 走って来ぬか」、「仮装して アイドル気分 理解して 思いひとつで 何にでもなり」、「一生に 一度のことと 口説かれて 馬乗る雄姿 人目に晒し」、「仕方なき ことと思えど よかったと ハレの舞台の 祭りに参加」

2時間ほど費やして書いたタイトルの歌以下のすべての文章が、パソコンのWORDソフトの不調からみな消えてしまった。復元出来ないかと1時間ほど探ったが、時間の無駄を知り、気を取り直してまた思い出して書き始める。今日は時代祭が無事終わった。そのことは明日書くとして、今日は昨夜の担当学区の小学校での準備について。以前に書いたように西京区は平安講社の第十一社を担当し、毎年同じ室町幕府の40名弱の行列を第十一社に所属する小学校を単位とした20弱の学区が持ち回りで担当する。第十一社が右京区から分離したのは平成半ばで歴史は浅い。右京区に属していた時は30数年に一度しか各学区に行列の当番が回って来なかったのが、分離後は20年弱で一度回って来る。しかし少子化のために学区が統合され、また担当しない学区もあるので、現在17か8の学区が行列を担当し、しかも5名の馬乗り役を担当学区がすべて選ぶことは経済的負担が大きいので、3年に一度どの学区にも1名の馬乗り役が回って来る。今年のわが学区は先頭を行く馬に乗る役回りで、わが学区の平安講社代表の筆者はその人物を決めねばならなかった。去年から14ある自治会が順番に裃姿で歩く2名を担当することになり、今年はわが自治会の隣りの、わずか30数世帯自治会から裃2名と馬乗り1名を選ぶ番であった。裃2名は割合すぐに決まったが、10万円近い自己負担がある。また練習その他3,4日は有給を取って休んでもらわねばならない馬乗り役は簡単には見つからない。そうなれば別の自治会から選ぼうと思っていたところ、今年担当の自治会の長が息子に乗せると言ってくれた。珍しく女性の自治会長で、息子さんは30代半の妻子のあるサラリーマンで、噂によればかなり長身で男前という。母親は今年は自分の自治会から馬乗り役を選ぶという筆者の思いを慮ってくれたのだ。それには口説きが効いた面も大きい。3年に一度の馬乗り役の番で、また今年はたまたまその自治会から選ぶから、一生に一度もない機会だ。しかも130年続く京都を代表するお祭りで、多くの観客の目に触れ、場合によってはTVにも映り、本来願っても得られない機会だと言ったのだ。わが学区が行列を担当するのは15,6年先で、その頃に筆者はこの世にいないか、いても平安講社の代表ではなくなっているが、今年馬に乗ってくれる人物が将来の時代祭の行列担当時に経験者として何らかの役割をしてくれる可能性がある。つまりなるべく若い人に乗ってほしい。冥途の土産として高齢者が乗る場合が多いが、それでは行列は見栄えがせず、観客も若者であってほしいはずだ。

その意味で今年の馬乗り役は最高の適役となった。今日の3枚の写真は昨夜担当学区の小学校の体育館で撮ったが、3枚目が馬乗り役の「伊勢氏」だ。記念写真が撮られる傍らで筆者もカメラを向けた。左端に見えるスマホ画面は隣りの自治会長である母親が持つもので、昨夜は息子の試着の晴れ姿を見るのに一緒に小学校に駆けつけた。筆者は本当は出かける必要はなかったが、代表となって初めての馬乗り役を選出したので一度は試着の様子を見ておいたほうがいいと第十一社の代表から言われた。そして午後6時頃に阪急桂駅から徒歩10分ほどの小学校に着いた。館内はまだ試着する人がほとんど集まっていないが、東京から着付け師たちは来ていて、馬乗り役は特に念入りに時間をかけて着付けがなされた。鎧などの衣装は背の高さにほとんど関係なく毎年同じものが使われ、日本の衣装はそれほどに体の大きさに関係なく融通が利く。そのことを試着の間、見守りながら実感した。筆者は一足先に帰ったので、行列に参加する人たちがどれほど遅くまで体育館にいたのかは知らない。馬乗り役は当日は朝6時に体育館に入って本番の着付けを始めると聞いたので、お祭りムードが高いまま昨夜は眠ったであろう。2枚目の写真に中年女性が数名見える。第十一社が担当する行列はすべて男性であるから、彼女たちは裏方だ。訊ねたところ、自治連合会の各種団体の委員とのことで、体育振興委員や少年補導委員などが協力している。行列に必要な経費は2年前までは200万円と聞いていたが、自治会加入世帯が年々減少し、今年の担当学区は3割台に過ぎず、自治会費から少額を毎年積み立てて来なかった。余裕がなかったのだ。それでどうしたかと質問すると、1年かけて寄付を募り、100万円強の金額が集まったという。商売する世帯が多いからだろう。わが学区のようにサラリーマン世帯中心では無理だ。それで5年ほどかけて自治会費から少しずつ捻出して積み立てて来たが、5年ほど前にやって来た行列担当はコロナで見送り、200万円ほどの積み立て金の大半は学区創立50周年事業に費やしたと聞く。次の担当まで10数年あるので今から心配するには及ばないが、年々自治会加入世帯が減少し、時代祭のための最低およそ100万円をどうするかの問題が必ず起こる。その頃まで筆者は代表を務めていないが、心配はしている。代々続く地元の金持ちが100万円くらい寄付してもよさそうだが、金持ちほどそういう考えを持たない。貧しい世帯ばかりの学区なので行列は出来ませんと言うことも今後はあり得るかもしれないが、どの学区も似たりよったりの経済状態のはずで、まさか行列は担当しませんという見送りの恥晒しをするわけにはいかない。そこは学区の平安講社代表が連合会会長その他、有力人物を口説いて費用を集める必要がある。あと数年で代表をやめるつもりの筆者はその心配をする必要がない。

