「
甥や姪 親に似るのは 仕方なし 金あるほどに 敬う知能」、「お父さん 呼ばれて知らぬ 顔をして なぜ言えぬか ご主人と呼べ」、「迷惑を かけぬがよしと 気を使い かけられむくれ 目尻釣り上げ」、「アルバイト どこも変わらぬ 賃金で 暇あるほどに 人気集中」
今夜は22日で「風風の湯」はスタンプが2個捺してもらえることを月始めから知っていたが、フロントでスタンプ・カードを家内の分と2枚差し出すと、Sは当然のような顔をしてひとつしか捺してくれない。「あの、今日は夫婦の日で2個ですよね。」「えっ? そうですか、ちょっと待ってください。いつからそのように決まったのですか?」Sは10年近く働いているが、 まるでプロとは言えない態度で、女性客から評判が悪い。以前に書いたことがあるが、筆者や家内を「お父さん」「お母さん」と呼び、一度注意してやろうかと思いながら、つい先日家内が「お母さん」と呼ばれた瞬間、「わたし、何となくそう呼ばれるのは嫌やわあ。」「あっ、すいません。同世代ですしね。」次に訪れるとまた「お父さん」「お母さん」が始まり、文句を言う気が失せた。そのことを嵯峨のFさんに言うと、「アホばかりやからな。言うだけ無駄やで。」と吐き捨てた。普通は「ご主人」「奥さん」だろう。筆者なら年配の女性には「お姉さん」と呼ぶ。家内は「まだお婆さんと呼ばれないだけましやけど」と笑いながら言うが、一度注意してもすぐに忘れるところや、決められていることを知らないとなれば、いくらアルバイトでも失格だ。投書箱があれば筆者は「態度悪し、クビ相当」と書いてやる。というのは、外国人観光客が増えて忙しくなって来た頃、コロナ禍の頃を懐かしんで、「同じ給料やったら暇なほうがいいに決まってるし」と真顔で言うことに驚いたからだ。筆者の母親は誰が見ていなくても他人の倍は働けというのが人生訓であったが、そんな損を引き受けるのは今はみんな馬鹿らしいだろう。85Mさんの奥さんが以前Sにロッカーの掃除不足を注意したことがある。ところが「ちゃんとやっておきました!」との返事で、85Mさんはもう相手にしなくなった。またこれは今月1日にあったことだが、30代半ばの「風風の湯」が三度目というツアーの案内員と家内が声を交わすことになった。「嵐山はいいところですよね。奥さんのような人がいて、環境のよさがわかりますわ。」ところがそういう会話をしている途中、家内が「河童」と呼ぶ若い女性客が水風呂から頭を突き出した。女性は暗がりのその光景に驚き、こう言った。「あなた、後ろの注意書きに頭を水の中に漬けては駄目と書いてありますよ。」すると河童はすぐにスマホを取り出してフロントに電話をかけた。そもそもスマホを風呂場に持ち込むことは禁止されているのに、そういうことも平気な男女がかなり多い。河童は傍若無人で、85Mさんの奥さんも大いに毛嫌いしている。
とにかく自分ひとりの風呂であるかのような振る舞いで、常連の女性客全員が同じように河童を嫌っている。日曜日以外はあまり来ないようだが、筆者と家内は日曜日に行くので家内は必ず河童に出会う。河童は痩せて長身で、いつも黒いマスクをしていて、サウナ用の黒い帽子をすっぽりと被っているが、85Mさん以外の常連からもフロントに苦情が届いている。先の話の続きだが、フロントからSが飛んで来た。そして驚くべきことに河童の味方をして、ツアー・コンダクターに注意したそうだ。Sがいなくなった後、彼女は家内にこう言った。「あの人、馬鹿ですね。なぜ規則を守らない客を注意したわたしが怒られなければならないの?」彼女は世界中を旅していて、日本では特に嵐山が気に入り、そして出会った家内に大いに満足したのに、河童と出会ったことで幻滅したのだ。それでも家内は「日曜日のこの時間帯ならだいたい来ていますから、またお会い出来る機会があるかもしれません。」と言って彼女を慰めた。河童はたいていの女性常連客から白い目で見られているのに、それに気づかないふりをしている。それほどに根性が座っている。ところがこれもつい先日面白いことがあった。「風風の湯」は男女でサウナや湯の温度に差がある。男湯では大湯舟がとても温いことがあって、長らく浸かっていると風邪を引きそうになる。女湯のサウナはとても暑いらしいが、98度はさほどでもない。ところが50代半ばの女の常連客Gは特にサウナ好きで、Gはサウナの温度が暑いので扉を開けたままにしたそうだ。それはそれでとんでもないことで、暑ければすぐに出ればよいのに、自分だけのサウナだと思っている。またGは怖いものなしで、ある時、河童が炭酸飲料を水風呂の近くに置いて飲み続け、サウナの中で大きなゲップをした瞬間、Gは「あなた、こんなところでみんなに失礼ですよ。ゲップは外でやりなさい!」と言った。マスクをして顔がわからない河童は反論出来ずに目がギラギラ光っていたそうだ。河童もGもいい勝負と言ってよいが、年配者の注意はいいことだ。家内がいつも驚くのは、ほとんど照明のない暗い水風呂から急に河童がぬーっと顔を出すことらしい。髪もマスクも真っ黒で、目だけが見え、妖怪のようだと言う。それで筆者が河童と命名した。また「水から上がって来るところを頭押さえてやったらいいのに」と言うと家内は苦笑するが、筆者は半ば本気だ。Sは河童の評判を知っているが、仲良く利用してほしいという思いらしい。「風風の湯」はほかにも問題はあるが、男女の湯合わせて3、4人で回しているので、掃除が行き届かず、石の床がぬるぬるしていて、常連が減って行くのは無理もない。筆者は家から近いので通っている。また大半の常連客、そしてフロント全員と親しく話をするので、それを楽しみにしているところがある。
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