●狭い京都の狭い世間
ゴールデン・ウィーク、今日も天気がよいので家にいてはもったいない。だが昨日は夜遅く帰宅したので今日は遠出は疲れる。



d0053294_14312064.jpg
大阪に出てもよかったが、京都市内を回ることにした。まず庭に咲いている牡丹を見た。満開。いや、もう盛りを少し過ぎている。すぐさま写生。はがき大のいつもの携帯スケッチブックでは大型の花は収まらない。それでもっと大きなサイズのものを引っ張り出した。色鉛筆は一応36色のを持っているが、色が揃っていないので近い色でごまかすしかない。それでもどうにか雰囲気は出たか。写生している間に熊蜂が2匹ほどやって来て花芯で嬉しそうに羽音を立てていた。それにしても熊蜂は牡丹や藤の花には必ず飛んで来るが、どんな感覚があるのだろう。数キロ程度離れていてもおそらく感知出来るに違いない。人間にはない能力が備わっている。熊蜂の方では人間のことを自分たちにはない能力が備わっていると思っているだろうか。そんなことはあるはずがないと誰しも思うだろうが、牡丹の写生中に飛んで来る熊蜂はどことなく遠慮しているような雰囲気がある。そう感じるだけで具体的にどうこう言えるものではないが、熊蜂に刺されそうになったことはないし、むしろ熊蜂は花の近くに人がいるとすぐにほかに飛んで行く。それはいいとして、蜂が見る世界はどんなに素晴らしいだろうかと思う。花の中心にもぐり込んで花粉だらけになりながら蜜を吸うのはまるで極楽にいる気分ではないか。そのことを想像してみるがよい。きれいな色にすっかり染まった、青空のある小部屋に入って甘い蜜をひとり占めするのであるから、楽しくないはずはない。しかもそんな部屋は無数にある。次々に入っては飲み放題だ。それの繰り返しだけの生活など、あまりに狭い世界でつまらないと思う人もあろうが、蜂は蜂で充足した世間があり、それを大きいとか小さいとかは思わない。人間はどうか。世間を広くわたる人もあればそうでない人もあるが、結局はみな自分が望んだとおりの人生だろう。
 昨日は東福寺に行った。どうしても見たい展示があったからだが、このことについては後日書く。東福寺は筆者の住むところからは直線距離で10キロ以上ある。昔一度紅葉の季節に訪れただけで、たまに近くは通るが、なかなか境内に入る機会はない。京阪電車で行くと便利なのはわかっているが、交通費節約もあって1日乗車券を買ってバスで行った。途中で乗り換える必要があるが、確か四条大宮で東福寺行きのバスがあったはずと思って確認すると、それは正しく、大宮通りから東福寺前まで行った。京都に住んで長いが東福寺のバス停で下車するのは初めてだ。見慣れない風景に少し旅行した気分になった。それは、バス停が大通りのゆるやかな曲がり角にあって、そのあたり一帯がかなりの上り坂になっているため、京都では珍しい印象を与えているからだ。バス停の目の前には日赤病院が大きく立ちはだかっている。東福寺がどっちの方面かわからず、バイクに乗った女性が信号待ちしている時に道を訊ねた。信号をわたって真っ直ぐと言われたが、それを聞いた途端、通りの向こうに真新しい大きな石碑があってそこに「東福寺」の文字が刻まれていることに気づいた。さて、その石の柱からスタートして東福寺中心に至る道は予想以上に長かった。昔来た時とは違う道なのか、何度もジグザグと曲がるその道のりは、両側に小さな寺などがずっと建つとても落ち着いたもので、東福寺の広さを初めて実感した。そしてようやく記憶にある屋根つきの木製の橋が見えた。そこをわたる時、左手向こうに有名な通天橋が臨める。観光客がちらほらいて、みんな遠くに見えるその通天橋を携帯電話のカメラなどで撮影していたが、筆者ははがき大スケッチブックを持参していたのでそれで写生することにした。通天橋から眼下に見える樹海の紅葉はとても有名だ。それを目当てに毎年訪れる人もある。だが、新緑も見事なことがわかった。この樹海を、昇天橋から見るのと、通天橋を遠くに見つつ誰でも通行出来るこの無料の屋根つきの橋から見るのとでは、どっちが素晴らしいかと言えば、通天橋が見えている分、後者ではないだろうか。となればお金を払って通天橋に佇むことはないかなと、そんなことを考えながら写生したが、色鉛筆は小型の筆箱に10色も詰め込んでいないため、本当の色合いはとても再現出来ない。新緑の美しさを伝えようとするのであれば、形よりもむしろ色が大切だ。仕方がないが、いい景色に出会えることを全く予想していなかったから、それが堪能出来ただけでもありがたい。本当にちょっとした旅行気分になれた。
d0053294_14321337.jpg
 東福寺では2時間ほど過ごした。その後空腹を覚え、中京に出て食事をし、ぎりぎり時間が間に合うと踏んで今度は高麗美術館に行った。バスの中で時間が気になってイライラしたが、4時半を数分過ぎてしまった。門はすでに閉まっていたが、頼み込んで入れてもらった。25分ほどしか見られない。次にまた訪れるのはいつになるかわからないのでそれで我慢することにした。このことについても後日書こう。帰りに妹の家に立ち寄った。ちょっと確認したいことなどがあったからだ。そこで話込んで9時になってしまったが、8時頃だったろうか、甥の女友だちがやって来た。小学生時代からの同級生で、近くに住んでいるのだ。筆者も10年ほど前から何度か見かけたことがあるが、実は筆者の息子が小学生であった頃の校長先生の娘で、そんな奇縁を知った時はとても驚いた。筆者は息子が小学生の頃に母親代わりにPTAに参加してとても目立っていた。父親が出て来るケースが少ないからだ。それで息子が卒業する時には送辞を書いて児童や父兄の前で読む役割も果たしたが、そんなこともあって校長先生とは顔馴染みであった。その後すぐに先生は別の学校に転任になり、それから何年かして甥の同級生の女子の父親がその校長先生であることがたまたまわかった。妹も知らなかったのだが、いろいろと話をしている間にそうではないかという憶測が生じ、妹がその女性に訊ねたところ、やはりそうだということになった。また、妹はその女の子がとても美人で、「兄ちゃんが見たらきっとびっくりするで」とよく言っていたが、そんな美人なら一度拝みたいとかねがね思っていたところ、ようやく妹の家でたまたま見かける機会を得た。それがもう10年ほど前のことだ。女性は今28で、甥と同様まだ結婚はしていないが、甥とは割合何でも話せる友だちで、昨日もたまたまひとりで遊びにやって来たのだった。名前は知っていたが、改めて訊ねると「歌」と言う。「歌子」ではない。とても珍しい名前だ。あの校長先生が名づけたとすればなかなかのセンスだ。ふとその「歌さん」の顔をスケッチしたくなった。甥と庭で焼き肉を焼きながら話も弾んでいたが、筆者はもう帰らねばならず、思い切って頼んでみた。すぐにOKをもらったはいいが、夜中で庭は暗く、座り場所のつごうで筆者が希望する角度では描けない。それに甥と話をしながらの食事中のためじっとしてもらえず、条件は最悪だ。だが、こっちから口を切った以上、やめるわけには行かないし、また似ていないと格好が悪い。どうにか描いたが、公表の許可はちゃんと得ておいた。いつかもっと違う角度でトライしたい。
d0053294_14162353.jpg 京都が狭いのか世間が狭いのか、とにかく上記に似た奇縁はよくある。それに筆者はよほど目立つ顔をしているのか、市中を歩いているところをよく誰かに見られ、それが後になって聞かされたり、家内の耳に入ったりする。それだけうろうろしているわけだが、そう言えば、昔、よく河原町や寺町で画家の池田遙邨を見かけた。老齢でも颯爽としていたが、そんな氏ももういない。京都で遙邨ほどの有名な画家は今はないと言ってよいから、もっと京都人は頑張って有名文化人を生む必要がある。それはさておき、昨日の東福寺の新緑があまりに見事であったので、それを家内にも見せようと今日も出かけた。だが、まずその前にひとつ展覧会を見ておくことにした。それを見終わってバスで東福寺まで出ようとしたところ、知恩院のずっと手前でバスがあまりの交通渋滞のため、普段なら20分で行くところを1時間以上もかかると運転手がマイクで言った。ゴールデン・ウィークと好天が重なって、清水寺付近が大渋滞になっているのだ。それでそのままバスに乗っていてもかまわないが、地下鉄に振り替え輸送するので、よければ下車して特別のチケットをもらってくれと言われた。バスの扉が開くと、別の職員が待っていて、ひとりずつに地下鉄の特別チケットを手わたしてくれた。それは京都駅まで使用可能なものだが、これがまた不便で、東西線に乗って御池駅まで行き、そこで南方向に乗り換える必要がある。地下鉄は階段が深く、それを考えただけでぞっとするが、仕方がない。東西線に乗ったはいいが、電車は市役所駅までで、そこで一旦下車して次の電車を待つ必要があった。それがいやで、そのまま地上に出た。そして市役所から三条河原町まで歩き、またバスに乗った。これがまたとても混んでいた。歩けば2往復出来るほどだったが、どうにか一停留所向こうの四条に行き、結局京阪電車に乗り換えて東福寺の駅まで行った。それなら最初から京阪電車にしておけばよかったが、1日乗車券ならただであるので、それを使わねば損と思ったのだ。何とたった数キロの道のりを、地下鉄、バス、京阪と乗り継いだため、1時間以上かかった。歩いた方が早い。へとへとになって新緑の樹海に浮かぶ通天橋が見る場所までまたやって来たが、もう6時で日がかなり傾いていたので、昨日の午前中に見たのとはかなり印象が違った。家内はたったそれだけを見るためにこんなところまで連れて来たのかと文句たらたらで、さっと引き返してまたバスに乗った。清水寺界隈の車の混雑はかなり解消していたが、祇園付近がまたとんでもない車と人で、バスはまた動かなくなった。それで下車して歩いたが、乗ったり降りたり、市内移動は拷問のようなハード・ワークだ。
 家内は電車の定期があるからいいが、筆者は1日乗車券があるのでバスで帰ることにした。だが、最も近いバス停から自宅まで20分ほど歩く必要がある。それも運動と思っていつもそうしているが、家内がスーパーの米を安売りを今日買っておくべきだったと言うので、急いで帰宅して自転車で20分ほどかかる遠くのスーパーまで米を買いに走る役目を負う羽目になった。つまり、ハード・ワークはまだまだ続いたわけだ。で、四条河原町からひとりでバスに乗ったが、そのバスは途中で違う方向に行くので乗り換える必要がある。下車した停留所から、乗り換えのバス停まで300メートルほど離れていて、何と歩いている時に乗るべきバスがやって来るのが見えた。それを逃すとまた20分は待たねばならない。思い切り走った。拷問ハード・ワークは終わらない。最初から四条河原町でそのバスを待っておけばよかったし、その方がずっと座れたはずだが、とにかく一刻でも早く帰ろうと思ったため、来たバスなら何でもよかったのだ。それはいいとして、間に合ったバスでは座席がひとつ空いていたのですぐに座った。すると筆者の背後で小柄なスーツ姿の老人男性が同じように席を探していたので、すぐに席を譲ろうと申し出たが、老人は怒ったような素振りで拒否し、やがて別の空いている席を見つけて座った。身なりと顔立ちはそれなりに知的な雰囲気があって、昔は学校の先生をやっていたような感じだ。筆者は疲れていたので、そのまま終点まで目をつぶっていたが、家に着いてすぐに自転車に乗ってスーパーに向かった。そして米を10キロ買い、そのほかに安そうなものを適当に買った。もう8時を回っていて、大型スーパーでも客はとても少ない。どのレジに並んでもすぐに終わると思って、ちょうど老人男性がレジをしてもらっている後に着いた。ふと見ると、その男性はさきほどバスで筆者の席を断った人物だ。どこで降りたか気づかなかったが、服装からしてバスから下りてそのままスーパーに来ていることは明らかであった。だが、あのバス路線からではスーパーはかなり離れている。乗り換えるにしてもそんな路線はない。それにしても奇遇だ。当然筆者のことは知らず、まさか先ほどバス座席を譲ろうとした男とは思ってもみないだろう。老人は財布からお金を出すのがとても遅く、3分以上はかかっていた。あまりに遅いので別のレジに並び直そうかと思って、筆者の後ろを見ると中年のおばさんと目が合った。そして苦笑いをした。その意味がわかって筆者もそうしたが、全く老人もさまざまであろうが、ちょっと異常なほどその男性は変なタイプで、2000円そこそこの買物に5千円札と小銭を出しながら、小銭を何度も出し間違えたり、また5千円札を1万円札だと言い張ったりと、とにかく後の人のことが何も見えないわがまま振りだ。もう会うことはないと思うが、そのスーパーに筆者はたまに訪れるので、案外わからない。京都の世間は狭いからだ。それにしてもこんなどうでもいいことを今日の拷問ハード・ツアーの後にまたこつこつと書こうというのであるから、筆者もよほど変な人間だろう。筆者の顔を知る人は、そんな筆者が京都のあちこちを歩いているところをいつかきっと見かける。何しろ京都は狭いから。
[PR]
by uuuzen | 2006-05-03 23:59 | ●新・嵐山だより | Comments(0)


●ポップスとザッパ >> << ●『ZAPPA PLAYS Z...
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
以前の記事/カテゴリー/リンク
記事ランキング
画像一覧
ブログジャンル
ブログパーツ
最新のコメント
"Can't Affo..
by インカの道 at 20:33
回答ありがとう御座いまし..
by インカの道 at 20:50
来日公演の際にテリー・ボ..
by uuuzen at 15:52
「パンキーズ・ウィップス..
by インカの道 at 14:53
技術だけで有名になれない..
by uuuzen at 17:38
彼ら(ビートルズ)に関し..
by インカの道 at 17:20
本質とは生前のザッパが出..
by uuuzen at 16:04
本質とは?どう言う事です..
by インカの道 at 15:26
7枚組はまだあまり聴いて..
by uuuzen at 10:18
間違いと言えば、オフィシ..
by インカの道 at 22:29
最新のトラックバック
http://venus..
from http://venusha..
ファン
         ブログトップ
  UUUZEN ― FLOGGING BLOGGING GO-GOING  © Copyright 2018 Kohjitsu Ohyama. All Rights Reserved.