「
秋虫の 鳴き声増えて 暑さ減り 異常も含み 暦正直」、「一度だけ 入って二度は ないかもと 人の出会いも 似たところあり」、「パスタ屋は うどん屋よりも 儲かると 洋風うどん 試作を続け」、「パスタパス うどんどんどん この違い 同じ麺でも うどんはつるり」
上桂にバロックザールがある。そこは稀に500円で入場出来る。夫婦で1000円は、喫茶店のコーヒー代と同じで、たまにはそこでクラシック音楽の生演奏を聴くのもよい。今月25日はその500円の日で、声楽のリサイタルがあった。上桂は阪急嵐山線では嵐山から二駅目だ。家内は長年その駅前の診療所で診てもらっていたこともあって、同駅周辺はよく知っている。ところがスーパーが閉店となり、すぐ近くの診療所のK先生が70代半ばで最近亡くなったので、上桂には用事がなくなった。ついでに書いておくと、K先生とは一度だけ家内とともに面談したことがある。そして紹介状を書いてもらって桂の大きな病院で再検査し、手術を経て今は薬で体調を維持している。月に一度は病院で検査があり、雨天で自転車に乗れない場合は上桂駅まで電車に乗り、そこから病院まで歩く。K先生は男前でざっくばらんゆえ、近隣の高齢者には人気があった。お子さんはおられず、先生は死後は甥が継ぐと言っていた。実際そのとおりになったのが、甥も医院をそのままにして顔を見せなくなった。次はどうでもいい話だが、家内と一緒にその医院の待合室で待っている間、目の前の壁にビーズで作ったA3サイズほどの風景画が額入りで飾ってあった。かなり古いものに見え、額はわずかに傾き、また一部はビーズが糸からこぼれ落ちていたが、オリジナル作品は間違いなく、全体に暗い微妙な色合いや構図など、画力のある人の作に見えた。面談で先生の前に座った時、そのビーズ画について尋ねると、先生は興味なさそうな顔で患者かその知り合いが作ったものと言った。先生が亡くなったことを知った時、筆者はそのビーズ画がどうなったのかと思い、また今もそれを思い出す。上桂駅周辺の話はほかにもあるが、今日は以上までにする。4,5年前まで筆者は嵐山から向日市まで自転車で2週間に一度ほど往復した。それが5、6年続いたと思う。最初の頃は最短ルートがわからず、上桂の範囲内はさほど間違わなかったが、その南の桂地区ではよく道に迷い、どこをどう走っているのかわからないことがよくあった。そのたびに帰宅してネットで調べ、また最短の道筋を確認し、やがてそれが確定した。そのことはその道筋を書き込んだ地図とともに投稿したことがある。しかし最短距離ばかりを走ることは面白くない。それにスーパーやホームセンターに立ち寄るために、往路と復路を違えたことはよくあった。復路ではたいてい物集女街道を真っすぐに北上した。それは樫原交差点より少し南にスーパーが並んでいるからだ。
そのスーパーの一軒は大阪発祥で、丸太町通り沿いにも店舗はある。筆者は家内とたまにそこまで足を延ばすが、わが家からの距離は樫原店の方が遠い。その樫原店の少し南にホームセンターがあって、そこで自治会のFさんはしばしば買い物をし、車で一緒に行ったことで同店を知った。Fさんは自転車によく乗り、小物の買い物であれば自転車でそのホームセンターまで走るが、同店に慣れていない筆者にはとても遠方の気がする。それはさておき、自転車でそのホームセンターから北上すると、500メートルほどか、樫原交差点に差し掛かる。その山陰街道との交差点南西角に木造の大きな平屋の建物があって、そこを通りがかるたびに筆者は振り返りながらその家の前、つまり交差点の角に立てかけられた小さな黒板の白墨文字を流し見していた。パスタ専門店のようで、黒板の文字によればランチはさほど高くなさそうだ。そう思ってバロックザールでのリサイタルの開場が始まる前にそこで家内と昼を食べようと考えた。そして今日はふたりで自転車に乗り、嵐山から上桂、そしてさらに南方の樫原まで走った。千代原口交差点から南は歩道が極端に狭く、また凹凸が激しいのでハンドル裁きに骨が折れるが、ともかく目的地に着き、店内に入った。1時頃で客は大勢いる。トイレに隣接した狭い待合コーナーに座っていると、40代の旅行者らしき女性3人がレジにやって来て、個別に支払いをした。彼女らはネットで店を知ったのだろう。3人とも二千数百円を支払い、筆者はおやっと思った。千円程度と思っていたからだ。席に着くと女性店員がタブレットを持って来た。それがメニュー兼注文機だ。ランチは必ず固定のものに好きなパスタを加えて注文せねばならず、先の3人組の女性の支払い額の意味がわかった。店前の黒板にはその固定メニューのことしか書かれておらず、入店した人はその予算の倍を支払う覚悟をせねばならない。筆者と家内で4500円少々支払ったが、そのことを嵯峨のFさんに話すと驚かれた。樫原の片田舎でひとり2000円以上のパスタランチなどあり得ないと言うのだ。その金額で河原町でサーロイン・ステーキのランチを食べてお釣りがあるとも言う。まあそれでも仕方ない。筆者は烏賊墨パスタを注文した。30代半ばの昔、ある女性にイタリアン・レストランに車で連れて行ってもらった時、筆者は烏賊墨のリゾットを注文した。真っ黒な食べ物は珍しかったからだ。それはさておき、食べ終えて早速また自転車でバロックザールのある上桂へと北上した。今日の最初の写真は上が店内天井、2枚目は筆者のすぐ背後、店の南西角の庭で、足元に盛り塩の皿があった。駐車場の車のナンバーを見ると、客は他府県が多いようだ。旧街道沿いの農家の納屋を転用した店で、鄙びた雰囲気が好きな人にはよい。夜の営業は知らないが、ワインを飲めばひとり1万円はするかもしれない。
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