「噂では わからぬことと 知りながら 三猿になり 噂されしや」、「カンナ咲き 西瓜頬張る 夏休み 今は外では 体温気温」、「雷雨過ぎ 濡れたカンナの 艶姿 何も隠さず 秘密に満ちて」、「いつの間に 大人になった 近所の子 カンナの花の 面影湛え」
仏師のＯさんは週に一度自家用車で大型スーパーに買い物に行く。筆者のことを気にかけ、一緒に買い出しに行こうと何度か誘われたことがあるが、家内と歩いて時に往復２時間かけて数か所のスーパーを訪れる。それでも冷蔵庫が大型ではないためもあって、週に最低二度は出かけなければならない。夏場は歩くのが大変で自転車を使う。ところが家内はリウマチで指が徐々に硬化し、ブレーキを握ることが難しい。それで筆者ひとりで出かけることもある。昨日は冷蔵庫がほぼ空になったので夫婦連れだって出かけたが、ある角を曲がって筆者の目に飛び込んだのが今日の最初の写真の赤いカンナだ。車折神社のすぐ近くの角家の玄関前の鉢に植えてあり、すぐそばに軽自動車が停められている。前庭を駐車場にするのはどの家でも今は普通だが、その家は花好きのようで、わずかな隙間にこのカンナのすぐ隣りに月下美人、そして槿らしき鉢がある。筆者が子どもの頃に咲いていたカンナの花はオレンジ色であった。黄色もたまにあるが、赤は珍しいのではないか。鉢に一花だけ咲き、それが周囲の夏のどこにでもある景色の中で鮮烈な印象を与える。カメラを持っていなかったので、家内と買い物をして帰宅してすぐ、筆者ひとりでまた出かけた。家内は炎天下にまた出かける筆者を見て、どれだけ体力があり余っているのかと呆れたが、ひとつだけ咲く赤いカンナの写真を撮るためと聞くと、頭がおかしくなったのではないかと思うはずで、黙って出かけた。『あの赤いカンナはぜひとも撮らねばならない。』そうして今日は早速その写真を載せるが、投稿用に写真のトリミングを済ませた後、階下に行くと家内はもう最終話に近い韓国ドラマ『愛の群像』を見ていた。筆者が画面を見た途端、そこに赤いカンナがたくさん映っていた。場所を大きく取るこの花は韓国の金持ちに人気があるのだろう。１本だけではなく、何本も揃って人の背丈と同じほどに横並びに咲く様子は貫禄充分だ。また真っ赤な花は他の大きな夏の花に比べて大いに目立ち、筆者は体格がよくて溌剌とした美女が居並ぶ様子を想像する。鶏頭の花はカンナほどには大きく育たない。だがそれは条件次第だろう。正岡子規の有名な俳句「鶏頭の十四五本もありぬべし」は見事な光景を想起させ、筆者はこの一句を下敷きに六曲一双屏風を友禅染めで制作したいと思っているが、カンナに置き換えてもそれは可能だろう。しかし鶏頭は葉や茎も赤くなるので、赤を強調したいのであれば鶏頭だ。それはともかく、赤いカンナは妖艶で、その花を思い浮かべると頭がくらくらして来る。暑さのせいもある。

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