「軸先が プラスティックの バッタもん 模造象牙に せめて代えたし」、「大蜘蛛の 夜の徘徊 邪魔をせず 虫には虫の 生活ありと」、「合歓の花 濡れた地面の 睫毛かな 白と赤とで 若き仙女の」、「蜂の巣や 梅の実ほどに 軒の下 竿で落として 部屋に逃げ込み」 最近知り合ったＮさんに発注を頼んだＴシャツが届いた。筆者は全くＴシャツ派ではないので、アメリカに発注したヨハンナ・アイをプリントした長袖と半袖が新品のまま箪笥に眠っている。オットー・ディックス描く彼女の肖像画をそのＴシャツ会社の受注サイトで見つけた時は小躍りした。美人とは言えない巨漢の彼女の肖像画をＴシャツの胸部にプリント依頼するのはたぶん筆者くらいだろう。Ｔシャツの柄は何でもありだ。Ｔシャツ文化を生んだアメリカが安価で好みの絵柄のプリント商売をするのは当然のことで、日本でも同様の会社はたくさんあるだろう。個人でもプリントは可能だが、１点のみであればそうした会社に頼んだ方が早いし安い。ただし、高級ブランドもののように胸だけではなく、袖や肩、背面、それに全面のプリントはほとんど不可能で、Ｔシャツの生地の品質はさておいて、安価なものは胸の中央に方形の絵柄と相場は決まっている。ヨハンナ・アイのTシャツを発注した頃、あるいはもっと以前か、筆者は自作の左右対称の方形切り絵「いつも心に太陽を」をプリントしたものがほしいと思っていた。それは実際に作らなくても容易に想像出来るし、またＴシャツをほとんど着ないので、作ってくれる店を探さなかった。ところがＮさんから京都市内の竹田界隈で安価でプリントしてくれる店があると聞き、早速ネットで調べると、わかりやすいサイトではなくて注文を躊躇した。次にＮさんに会った時、もっと安い店を見つけたので、画像を送ってもらえれば注文すると言われた。早速切り絵の保存箱から１点取り出し、解像度を高めてスキャンし、その画像を送信した。税別送料込みで２３００円、受注後一週間たらずで商品は届き、早速今日Ｎさんはわが家に持って来てくれた。原画の切り絵は１５センチ角だ。それを２０センチ角にプリント依頼したのが２３センチ角に仕上がっていた。少し大きい気がするがＴシャツの胸の柄としてはその程度が普通だろう。着用して家内に撮ってもらったのが今日の写真で、切り絵の「お日さんが照らす開襟のお日さん」を、開襟して見せるお日さんこと甲日さんだ。実はこの写真を撮る目的でＴシャツのプリントを発注した。目的を果たしたのでＴシャツは箪笥に入ったままになりそうだが、白地の長袖で、写真のように袖なしの長シャツの下にボタンを締めたまま着用し、胸にお日さんを秘めていることを誰にもわからないようにして着ようか。家内はお日さんの顔が不気味と言う。その分目立っていいと思っているが、上着の胸を開かないのであれば目立つことはない。「胸襟を 開いてさびし アラ還は 阿羅漢見つめ 剽軽顔に」

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