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●「来いや鯉 茄子は成さねど 汝なら 滝を昇りて 勝利の龍に」
売りの 大手振るうや ゴビ砂漠 冷たき泉 地下で濁らず」、「年明けて 賀状刷り終え 早二日 古きLP 鳴らし歌詠む」、「ブギウギに 心転がる ウキウキは 露見せざるを 得ずと再考」、「言うことも なきかと思い 声をかけ その場限りの 話咲きたり」
●「来いや鯉 茄子は成さねど 汝なら 滝を昇りて 勝利の龍に」_b0419387_00215048.jpg
雨でない限り、2日に一度は「風風の湯」で話をする嵯峨のFさんは、年賀状を50枚買って29枚をクリスマスに投函したそうだ。余ったものが使われないのであれば半額ででも分けてほしいと言おうとしながら、筆者は黙った。そして去年届いた年賀状の枚数を数え、28日のスーパーへの途上、西京郵便局で40枚買った。Fさんも毎年書く枚数は減っていると言う。面倒なのでもうやめておこうと思いつつ、やはり書くのは長年の習慣を変えられない、変えたくないからだろう。Fさんはパソコンを使わないので、裏表とも手書きで、絵を添えず、干支のハンコも使わない。そんな年賀状はもらっても感動はないが、生存を伝える役目は果たす。昔は郵便局に年賀状用のスタンプがいろいろと用意されていた。毎年使える汎用性の高い文字のみのものから干支の図柄を使ったものまで、本局に20や30個はあった。使い過ぎてかなり版面は擦り減って鈍くなっていたものもあった。そうしたハンコを使えば手書きの手間を省くことが出来たのに、郵便局が年賀状の印刷を請け負うようになってその無料サービスはなくなった。その時期はたぶんプリントごっこが流行った頃に遡るのではないか。筆者は時代遅れの人間である一方、オリジナルにこだわりたいので、Fさんのように全部手書きで済まさない。毎年干支に因む左右対称の図案を切り絵で作り、それをプリンターで印刷する。決まっているその作業はたやすいと言いたいところだが、図案を考え、色紙を2枚用意し、その1枚を半分に折ってその裏面に鉛筆で図案を描き、そしてカッターナイフで切り進み、全部終えて注意深く開き、裏面を新聞紙の上に広げて粘着スプレーを吹きかけ、もう1枚の色紙をぴたりと貼りつける。そうして仕上げた切り絵をスキャンし、その画像を一旦モノクロに変換して赤系統の色合いに変え、はがきの幅より1センチ少ない9センチに縮小したうえで、今年は図案に因んだ短歌を添えて印刷したが、筆者のプリンターはたぶん20年ほど昔の中古で、毎年4,5枚は失敗するが、そうしたものは親類の年下に出す。ともかく、年賀状を仕上げるのにいくつもの関門を無事通過せねばならず、丸1日では終えられない。今年の辰に因む図案は数日前に寝入りばなに考えた。ナイフで切るのに元旦の午前0時半からの2時間半で終わらず、一旦寝て12時半から再開、切り終えた時が4時10分で、その直後に部屋が揺れ始めた。細かい作業に集中したための目眩かと思ったが、横揺れがゆっくりとした1分ほど続き、立ち上がって階下の家内と息子に大声で注意を促した後、船酔い気分を味わった。
●「来いや鯉 茄子は成さねど 汝なら 滝を昇りて 勝利の龍に」_b0419387_00221584.jpg 階下に行ってもまだ酔った気分は収まらず、TVでは震源地の石川県に津波が来るとい女性アナウンサーが激しい口調で注意を喚起していた。元旦の大地震はなおさら誰も予想しない。夕方に初風呂に行き、帰ってからも年賀状を印刷する気分になれず、深夜までTVにかじりついて地震のニュースを見続けた。ネットのXでは現地の人々がスマホで撮った被害の様子の映像が見られ、TVはもどかしかった。京都では大地震は知らない。そのことを関東から3年前に転居して来て去年の夏にまた関東に戻ったAさんが言っていた。彼女は旦那さんの定年を迎えればまた京都に住みたいと語っていたが、その大きな理由は地震の少なさだ。関東では地震が多く、少々の揺れは話題にならないとのことだが、それでも地震は嫌なものだ。京都は地震が少ないとはいえ、昨日は震度4で、筆者の驚きは福島の原発に被害をもたらした東北の大震災以来であった。喧伝されている南海トラフの巨大地震があれば、京都は震度4で済まないだろう。ただし津波の心配はない。それだけでもましな気分だが、山が崩れたり、家が倒れたりする被害は当然あるだろう。いつそうした災害に巻き込まれるかわからず、一方でネットでのデマによって混乱さに拍車がかかるはずで、京都に住んでいても安心感はない。被災して住む家がなくなればどうなるのかと漠然と考える。筆者のように地震保険に加入せず、潤沢な貯金もないでは家を失えば露頭に迷う。地震保険はいい加減なもので、被害が広範囲に及べば保険会社は倒産を免れることを前提にした金額しか支払わない。それで結局は金持ちだけが生き残ることになる。それは仕方がないのだろう。とまあそんなことを考えながら夫婦ともに70歳を過ぎているので充分生きたかという思いはある。年々人生が面白い気がして筆者は満ち足りた気分でいるが、気が多いのでやりたいと思っていることの数分の一も毎年こなせない。今日の最初の写真は年賀状用の切り絵の制作途中で昨日の3時すぎのコーヒー・タイムに撮った。切り終えた箇所を白い紙で覆っているのは切り終えた箇所の線がとても細くてちぎれやすいからだ。右手に89Mさんからいただいた最中を写し込んだ。2枚目は印刷用に赤系統の色に変換した画像だ。滝壺に鯉が一匹上を見つめているのはいいとして、滝の両側の岩は表現は何かよくわからない。てっぺんに滝の両端に柱があり、それに龍が尻尾を巻きつけて鯉を見下ろしている。その様子も言われなければわからない。つまり失敗作だが、また6時間費やして作り直す気力も時間もない。短歌は昔の邦画『恋や恋なすな恋』の題名をもじった。切り絵の説明に書いたように、去年12月は「風風の湯」の常連ふたりと初めて訪れた福知山温泉で経験した滝行のような露天の「うたせ湯」が念頭にあって図柄が思い浮かんだ。「風風の湯」のそれとは高さが倍近く、爽快ではなく、痛快であった。
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by uuuzen | 2024-01-02 23:59 | ●新・嵐山だより
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