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●ふたたび天理に行く、その4
の中 覗いた人は 壺の中 生き物すべて 壺から生まれ」、「山辺の 花の盛りの 道行けば 花の下にて 母子は対座し」、「山裾の 林にも咲く 桜かな 気づけば母と 幼児静か」、「花の下 神々しきや 子守り母 吾はただちに その場を後に」
●ふたたび天理に行く、その4_b0419387_01394657.jpg
さきほど初めて天理市をグーグル・マップの航空写真で見た。千鳥破風が並ぶ「おやさとやかた」群が市内のどこにどのように点在しているかがわかる。昨日載せた最初の写真の奧に見える建物は同マップに「天理教語学院」と記される。昨日書いた「道を東に進んだ突き当り」は正しくは「信号のある交差点」で、その南西角にコンビニがある。神殿と天理大学の間に流れる川は「布留川」で、南西にジグザグに流れて大和川に合流する。なるほど。また天理は京都から遠く感じるが、東大阪市からは南東20キロほどで、思ったよりも近い。話は変わる。先日85Mさんの奧さんが電車で阪急嵐山駅に着いた時、改札を出てすぐに数人連れの青年のひとりから交通費がないのでお金を貸してほしいと言われた。断って急いでいつもとは違う道を利用して帰宅したとのことだが、数人連れのひとりから借りれば済む話ではないか。筆者ならどう言ったか。「どこまで帰るん?」「大阪です」「そんなら歩いても今日中に充分着くよ。途中でヒッチハイクするのもいいし」これは本音だ。というのは2,3か月前に渡月橋で人力車を引いている20代半ばの男性と「風風の湯」で親しく話をしたところ、彼は仙台から京都まで歩いて帰って来たと言った。2週間だったか、最大で1日50キロ歩き、ホテルには2泊しただけであったそうだ。体力と冒険心があれば不思議なことではない。なぜそんなことをしたかと訊ねると、近いうちに海外を放浪する予定で、長距離を歩くのに慣れておきたいとのことだ。感心、感心。その青年のことが頭にあったので、85Mさんが見知らぬ男から交通費をせがまれたことを家内から又聞きした時、『情けない』と思った。85Mさんは気味悪がったので、寸借詐欺だろう。さて、筆者は山登りはからきし駄目だが、平坦な道なら数時間は平気だ。しかし旅好きではなく、無目的では歩かない。先月末に天理市を再訪しようと決めたとき、天理参考館だけではもったいないので、地図をざっと見て近くにある「石上神宮」を訪れることにした。本ブログの「神社の造形」のカテゴリーに投稿出来るからだ。あまり遠方であれば行かないが、天理参考館から30分は要しない距離のようだ。本当はそこを訪れずに大和郡山で下車して城を見るのもいいかと思ったが、そうすれば東大寺まで歩きたい。その時間はないから今回は諦めた。さて、今日の最初の写真は「天理教語学院」で、前述のコンビニから南100メートルのところで撮った。グーグルのストリート・ヴューによれば道路際に「天理教海外部」と「おやさとやかた東右第四棟入口」の看板があり、その際の坂道を下がると同学院がある。
●ふたたび天理に行く、その4_b0419387_01400547.jpg 同学院の看板を過ぎてそのまま南に歩くと、今日の2,3枚のような満開の桜の木が続く景色となる。この予想しなかった花見はとても気持ちよかった。それはその道がいかにも奈良らしく、車がほとんど通らず、山裾の静かで落ち着いた気配に満ちていたからだ。その道は「山辺の道」のいちおう北の端としてよい。ネットで「山辺の道」を検索すると、天理駅から駅前商店街を抜け、天理教の神殿前の筆者が歩いた道がその北端に相当し、石上神宮境内から山道を南下して続く。14,5キロ南の桜井市までその道は続き、格好のハイキング・コースになっている。「山辺の道」は昔から耳にしていたが、図らずもその北端のわずかを歩くことになった。だが今日の2,3枚目の写真からわかるように、古代とは趣が違う。車道はなかったからで、道幅はもっと狭く、あるいは石上神宮から北はどのように道が続いていたかは今となってはわからない。それで便宜上、天理教の神殿前の車道からコンビニに至り、今日の2,3枚目の写真の車道をも「山辺の道」としている。車道は興ざめだが、それでも前述のようにのどかな雰囲気に溢れ、日本で最も古い道とされることに納得出来る。あるいは筆者は田舎道をほとんど知らないのでそう感じるだけかもしれないが、近くに石上神宮があるという気配は確かに漂っていて、歩を進めながら前方にどういう眺めが展開するのか期待が膨らむ。ただし、これが桜満開の季節でなければまた思いは違ったかもしれない。桜並木が途切れた辺りで道路の向かい側を眺めて撮ったのが3枚目の下の写真だ。写真には収めていないが、大きな石燈籠がひとつ道路際に立つ。またこれは写真の左端に見えるように、舗装した幅広の山道を挟んで北側にはてっぺんが尖った石柱があって、「石上神宮」の文字が彫られる。同神宮への参拝客がちらほら見え、筆者はその山道にすぐに踏み込めばよかったが、その道が参道というのはどうも無粋で、車専用ではないかと訝り、すぐにはその坂道を上らなかった。どれほど山を登らされるかわからないからでもあった。長い石段があって、30分ほどそれを上ったところに社があるかもしれず、まずは周辺を探る気になった。ひょっとすればその坂道とは違う参拝路があるかもしれない。きっとそうだという思いが増し、歩道をさらに南下した。すると下り坂の向こうは交差点で、どう考えても神宮から遠のく。そして交差点の手前の左手は林の公園で、大きな桜の木が満開であった。その公園から同神宮に近道があるのではないかと考え、踏み込んだ。そうして撮ったのが今日の4枚目の写真だ。どことなく陰気臭いが、その静けさに吸い込まれた。筆者のすぐ後に中年男性がひとり着いて来て、写真を何枚か撮った後、近くのトイレに入った。筆者は公園の奧で「ここからは神宮に行けません」との表示を見て、即座に引き返した。やはり先ほどの坂道を上るしかない。
●ふたたび天理に行く、その4_b0419387_01402128.jpg 4枚目の写真を撮ったのは桜が見事であったからだが、写真にわずかに写る人影に気づいた。中央の階段の右奥の桜の幹のすぐそばに桜色の上着の女児が見える。2歳くらいだ。それに気づきながら筆者は階段を上って奧に進んだ。そして戻り際に左手を見ると、女児の真向かいに若い母親が座っていた。ふたりの距離は2メートルほどだ。話し声はなく、母は無言で娘に対座している。その様子に筆者は名画のような美しさを感じた。そしてまじまじと見るのとは正反対に、一瞬で目を逸らし、そそくさと元の歩道に戻った。あまりの神々しさに見てはならないものを見た気になったからだ。母子は近隣の住民だろう。若い母親は満開の桜の下にわが子を連れて行き、しばしふたりは見つめ合っている。娘はまだ満足にしゃべることは出来ないはずだ。母は桜色の服を着せた娘を花盛りの桜の木の下に据え、しげしげと眺めたかったのだろう。その母子の姿は太古から繰り返されて来た。忙しい都会ではそのようなゆったりとした寛ぎの時間は持ちにくいが、ここは日本で最も古いと言われる石上神宮の境内と言ってよい山裾の一画の鬱蒼とした林の中だ。母子を邪魔するものは何もない。そのことを思うので筆者はすぐさまその場を後にした。そして一瞬目撃しただけであるので、その母子の姿が却って筆者の脳裏に永遠のものとして刻まれた。その母子を父子に置き換えられるか。筆者はそうは思わない。若い母とまだ2歳ほどの女児であったので、彼らが黙って対面する様が人類を代表するひとつのイコンに思えた。それは母と息子でも駄目で、母と女児に限る。これは女性崇拝の思いと言ってしまえそうだが、母が女児を産み、その女児がいつか母になってまた女児を産むことの輪廻が、生命の根幹と思うからだ。筆者はその母親も子どもの顔も見なかった。見れば幻想が崩れる気がした。神々しい様子はただ母と女児が満開の桜の木の下で無言で対座することだけにあって、それ以外の属性は不要だ。母は無言で幼ない娘をしげしげと見つめ、娘はあどけなく母を見続ける。そこに男は不要で、観察すら許されない。筆者はたまたま見つけた林の中に踏み込み、たまたまその母子を目撃した。その一瞬の遭遇と別れに筆者は永遠を感じる。公園で遊ぶ母子は珍しくない。それゆえ同じような光景はその気になれば近くの公園でいつでも遭遇出来るだろう。しかし、不思議なことに母は女児をそばに置かず、2メートルほど離れたところの真正面に座らせ、声をかけない。娘は話しかけられなくても満開の桜を感じ、また誰もいないことも知っていて、母が間近にいることに安心している。その母子の関係は完璧で、そこに誰も踏み込むことは許されない。一瞬で真に神々しいものに触れた思いが湧き、筆者はその場を穢すことなく去りたかった。写真に母親が写らなかったことはよかった。その存在が感じられるだけでよい。
●ふたたび天理に行く、その4_b0419387_01403752.jpg

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by uuuzen | 2023-04-15 23:59 | ●新・嵐山だより
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