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●天理に行く、その2
る 湯のありがたき わしゃシャワー 熱き痛みの 快感如何」、「天理にも 土産ラーメン あると知り 半額で買う 地元の店で」、「アーケード やっと抜ければ 広き空 すぐ先左 天理神住む」、「威容とは この建物に ふさわしき おやさとやかた どこまで延びる」
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昨日書き忘れた。家内は大阪の阿倍野に住んでいた小学4、5年生の夏、妹と次兄と一緒に天理教本部の「おぢばがえり」に参加し、信者たちから親切にしてもらった記憶がある。昨日載せた4枚目の上の写真が神殿正面、下の写真は同じ場所から180度体の向きを変えて南を向いて撮ったが、眼前に広がる広大な場所で「おぢばがえり」があったそうだ。家内は成人して「おやさとやかた」に行き、そこで親の言うことは聞くようにといった「いい話」を拝聴したにもかかわらず、筆者と駆け落ちして暮らすようになった。さぞかし両親は落胆したはずだが、半世紀近く一緒に暮らしているので、駆け落ちという大それたことが悪かったとばかりは言えないだろう。筆者にはそういう気持ちがあるので、今月2日に家内と一緒に天理に行くと決めた時、天理教の教祖中山みきの霊が筆者らをどう思うかを半ば挑戦的に意識した。ついでに書いておく。駆け落ちしたのであるから、家内は数年は実家の誰とも会わなかったが、家内が息子を生んでからは実家の全員と和解し、家内の母親とも親しく話をするようになった。そして家内は母から「大山さんは何の心配もない人や」と言われたそうだが、真面目に見えたのだろう。どこまで真面目かは大いに疑問だが、友禅の仕事は元来真面目でなければ出来ない。ついでに書いておくと、義母は若い一時期、霊感に優れ、近所の人が占いをしてもらいによく訪れたそうだ。ハルピンから引き揚げて天理教の教会に間借りして暮らしたので、自然と中山みきから感化を受け、少しは霊感のようなものを得たのかもしれない。若い女性がそうした霊感をごく保有する話はさほど珍しいことではない。何かをきっかけに凡人に戻ってしまうのだが、中山みきは並外れた霊感と人々に対する愛があったのだろう。彼女は自分の教えを天理教として確立し、神殿を建てて信者を増やすことには関心がなかった、あるいは反対したようだが、周囲の人はそれではもったいないと考え、その後現在のような神殿や建物が出来た。一方、創価学会は各都市の目立つ一等地に鉄筋コンクリートの立派な建物を擁していて、それらのデザインはだいたい似ているが、部外者を寄せつけない厳めしさがある。2年前か、創価学会が大阪の太閤園を購入したとのニュースがあった。そうなると園内の歴史的な文化財は信者以外は見られないのかどうか、気になっている人は少なくないだろう。家内の身内には太閤園で結婚式を挙げた者がいて、筆者も二三度訪れたことがあるので無関心ではいられない。どうでもいいことだが、集金力で言えば天理教は創価学会の足元に及ばないではないか。
●天理に行く、その2_b0419387_01241401.jpg
 これもついでに書く。家内と暮らし始めるようになる前、筆者は友禅の師匠に2年学び、その後近所の染色工房で働くようになり、間もなく工房の主宰を一任された。次々にアルバイトを何人も雇い、その最初は近所の50代の主婦で、熱心な学会の信者であった。あからさまな入信の誘いは受けなかったが、彼女のふたりの息子の長男Kが信者で、やがて会った。筆者より4,5歳年長で、旅好きの独身、趣味で陶芸をしていた。彼の誘いで五箇山に行ったことがあるが、当時のKは五箇山が真宗の郷であることを意識していたのかどうか。Kは柳宗悦の著作はまだ読んでおらず、民藝や「妙好人」については知らなかったはずだ。Kは当初は学会の教えに懐疑的で、相手を論破してやろうと思ってある人に会ったが、逆にその人に魅せられ、一夜にして熱心な学会員に変貌した。そして次は同じように筆者を信者にしようと思って京都でも有数の「偉い人」である50代の女性と無理やり面会させた。その女性の顔は忘れたが、雰囲気はよく覚えている。ほとんど政治家のように堂々としていて、10数分話した後、「あなたは学会員になる必要はない」と言われた。そのことをKに言うと、目を白黒させた。Kは優しく温和で男前、女性には大いにもてそうな人柄であったが、筆者は全く物足らなかった。芸術家としてだ。狂気のようなものが皆目なかった。しかしそうであるので学会員となり、宗教の教えを心の中心に置き、陶芸に勤しもうとしたのだろう。芸術家になれなくても、民藝やそれ風のひとりの職人にはなれる。またそれがKの限界であった。よく話をした頃から20年ほど経ち、Kが嵯峨のとある画廊で個展をしている時にたまたま筆者は通りがかった。Kは不在であったが、作品は日常雑器ながら、珍しい釉薬をうまく使いこなし、研究の跡がうかがえた。選挙のたびに電話がかかって来るKの母親からは、Kが結婚し、2,3人の子がいると聞いた。そうなれば趣味で焼き物をするという呑気なことは出来ない。その後のKやその母親がどうなったかは知らないが、Kは学会員としてかなり上の方に上がって行ったのではないだろうか。そうなれば同じ学会員が作品を大人買いしてくれるのではないか。昨日書いたように、学会員は助け合う。それゆえ売れない学会員の作家はほとんどいないだろう。筆者はそのことを羨ましいとは全く思わない。売れなければ無収入で生活は出来ないが、売れるから作品がよくて、売れないから駄目という考えを最初から抱いていない。それで家内は大いに苦労して来たが、よいこともたくさんあった。ただし、周囲から祝福され、経済的にも安定した夫婦と違って、傍からは何と業の深い夫婦かと映ったであろう。そのことを前述のKの母親から仕事の合間に嘆息しながら言われたことがある。筆者が身の上話をしたからだ。
 Kの母親は筆者がやがて家内と駆け落ちした時にも工房でアルバイトしていて、業が深い云々は確かに当たっていた。ただしKの母はKと弟の仲がとても悪く、同じ家にいて口を利かないと語り、その原因が弟のみが創価学会を理解せず、呪詛しているからだと言った。それを語った彼女はさびしそうであった。また彼女はお見合いで結婚したが、最初の見合い相手は友禅師で、きっと色事に興味が強く、茶屋遊びをするだろうとの理由で断り、警察官と結婚した。その話を聞きながら、筆者はどの家庭にも業はあって、完全な幸福はあり得ないことを思った。ところで、創価学会は法華経だが、宮沢賢治は父が信仰していた真宗からやがて法華経に目覚めた。創価学会が宮沢賢治をどう評価しているか知らないが、気になるのは宮沢が思った業の深さについてだ。宮沢は虫も鳥も人間も、生き物すべてが業に囚われていると考えた。宮沢の短い人生も業でがんじがらめであった。そう考えると、Kの母親が筆者や家内の人生を深い業と見たことは、あまり大きな意味はなく、ごく普通の生活をしている人から見て、若いのに苦労が多いなといった程度の意味であったと捉えたほうがよい。筆者はその点は否定しない。筆者は4,5歳ですでに自分の人生は壮絶なものになるとの予感があった。幸いさほど大きな波乱はなくこの年齢に至ったが、何かに衝突した時、折れていい場合とそうではない場合を明確に区別して来たつもりでいる。筆者から見ると、ほとんどの人は折れては絶対に駄目な場合に簡単に折れ、折れていいことに妙に固執して頑固になる。だがそれも当人にとっては業で定められたことなのだろう。話を少し戻すと、Kの母親が友禅師と結婚していた場合、生まれた長男のKは学会員にならず、そして陶芸家になっていたとしてどういう作品を作ったか。もっと芸術的になったか、遊び人になって家を潰したか。それはわからないが、Kが素直に母の言うことを聞き、創価学会員になったことは「個」としての主張は強いとは言えまい。これは蛇足だが、Kの母親は戦時中に甘いお菓子に不自由せず、戦争の苦労を知らないと言った。経済的に恵まれた家の子どもであったのだろうが、なぜ創価学会の熱心な信者になったかについてはあまりに深入りする気がしたので筆者は訊かなかったし、そもそも筆者は学会の話題を持ち出すことを嫌った。それで「大山さんは業が深いなあ」と悲しそうに言われるのを笑って聞き流したが、筆者が学会の信者になれば仲間が増え、全然別の新しい世界が待っていると言いたかったのだろうか。筆者にすればそれはそれでまた業がややこしく、かつ深くなることに思えた。さて、なかなか天理に行ったことの本論にならない。予定を変更して明日に本論を回す。本論というのは、今月2日に天理で経験したことだ。
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by uuuzen | 2023-03-26 23:59 | ●新・嵐山だより
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