「
賊のボス 下っ端使い 大儲け 義理なき同士 俗に属して」、「不浄の利 貪る族の 浮上にも 夫婦の情の ずっとあるあ図」、「満月が 照らすテラスの カステラの カスを掠めて 烏ずらかり」、「目を閉じて 歌を詠みつつ 夢の中 目覚めて気づく 歌を忘れし」

満月の夜は不吉と言われる。満潮で溺れる人が増えるためかと思ってみるが、月の引力が人にも影響を及ぼすことは考えられる。昨夜「風風の湯」の常連客の85Mさんと露天風呂で話すと、新聞もTVも興味を惹く話題がさっぱりないと言う。長生きするとそのようになるのかと半ば同意しながら、若い頃に関心の幅をどれだけ広げるかによると筆者は思い、そのことは口にしなかった。次に85Mさんは元気で動き回れるのはいいが、徘徊するようになることの心配を笑いながら言った。10数年前、わが自治連合会でたぶん70代後半の男性が行方不明になった。顔写真入りのチラシが各地に貼られ、情報提供が求められ、3か月ほど後に近くの山で死んでいるのを地元の消防団員が発見した。山歩きの元気がありながら、下山の道がわからなくなったのだろう。また85Mさんは先日市バスを途中下車してリサイクル店を訪れたそうで、買うのが目的ではなく、どのような中古品がいくらほど売られているかを知るためだと言った。筆者はやることが多いので無目的でうろつく時間も気持ちもない。最後に85Mさんは戌年と言った。てっきり85、6と思っていたのに、今年89歳だ。認知症の傾向は全く見られず、本に曰く百歳まで生きるとのことだが、前述のように知らぬ間に認知症になり、徘徊する心配をし始めている。還暦以降は厄年がなく、おまけの人生だが、昔の60歳は今の70歳と考えていいかもしれない。筆者のように70を超えると誰からも重視されず、気ままに生きればいいと思うが、85Mさんは現実的な心配を言った。徘徊して死ねばいいが、倒れて病気になれば介護つき老人施設に入らねばならず、入居時に5千万円、毎月15万円程度は必要になるとのことで、高齢者の散歩はリスクが大きいと言う。70を過ぎるとどのように金がかからない死に方をするかを考えるべきでも、自殺以外にどういう死に方をするか誰もわからない。昔からよく言われるようにぽっくり死ぬことが理想だが、それには身辺整理を済ませておくべきで、そうすることで思い残すことがなく、ぽっくりと死ねるのではないか。一昨夜、嵯峨のFさんは「風風の湯」に湯舟に腰まで2時間浸かり続け、サウナに一度も入らず、体も洗わずに湯上りしたそうだ。そして月の引力のせいか、自転車で温泉の駐輪場の坂を上り切った時に倒れ、通りがかった車の女性に助け起こされたと言った。話せる常連がいなければ2時間もぼーっとしやすいのか。常連のTさんはその話を聞いてFさんに聞こえないように耳打ちした。「Fさん、あれ、危ないな」。さらに不吉なことがなければいいが。
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