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●『ZAPPA ‘80:Mudd Club/Munich』その1
躅(てきちょく)の 思い超えての 贅沢を 一度もせぬは つまらぬと知り」、「今年こそ 躑躅(つつじ)の花を 咲かせたし すべきこと終え 庭の春待つ」、「杉花粉 飛びてくしゃみの 三四発 今年は痛き 吹き出物増え」、「アレルギー 荒れる肌見て 疑いて 義理の薬で なおややこしき」●『ZAPPA ‘80:Mudd Club/Munich』その1_d0053294_22560332.jpg 昨日ザッパの新譜が届いた。注文時より300円弱安く、5216円であった。ブックレットではジョー・トラヴァース、スティーヴ・ヴァイ、アーサー・バーロウの3人が書いていて、先ほどざっと目を通した。ジョーが正直に書いているように、1980年の春のザッパ・バンドは他の時期に比べて華々しさに欠ける。それでジョーはザッパが遺した収蔵庫のテープの箱の背表紙に「Mudd Club」や「Munich ‘80」の文字があるのを何度も見る機会がありながら、無視し続けて来た。だがザッパの新譜を発売し続けるのであればいずれは手がける必要がある。ようやく腰を上げてデジタル化し、演奏を通して聴いたところ、思いのほかよかったので、80年5月8日のニューヨークの「マッド・クラブ」と、同年7月3日のミュンヘンのオリンピック競技場での演奏を3枚のCDに収めることにした。どちらのライヴも全曲が収められ、ディスク1の「マッド・クラブ」は約57分、残り2枚はミュンヘンで、合計で107分だ。ディスク1は「アウトサイド・ナウ」以外の曲はディスク2、3にすべて収められ、聴き比べが出来る利点はあるが、会場の大きさによる音の響きを別にすればほとんど同じで、3枚組の本作の売れ行きを心配したであろうことが想像出来るし、また先に書いたジョーの当初の思いを裏打ちする80年春のザッパ・バンドの魅力の少なさを明かしてもいると言える。ただし、それでもジョーは本作の演奏が素晴らしいというのは正直な思いで、ファンとしてもこのいわば珍しいザッパの80年春のライヴ演奏の典型をようやく正式にミッシング・リンクとして手にする満足感がある。それは一方でジグソー・パズルがもうかなり埋まって来たことの半ば喜びと半ばさびしさを感じさせ、次はどの時期のどういう演奏がアルバム化されるかの期待が早くも募る。こう書けば本作の魅力の度合いが伝わってしまいそうだが、80年春のザッパ・バンドの魅力が少ないとすればその理由は何かを考察すべきで、今日から「その3」までの予定で思いつくまま書く。さて、本作は悪く言えば海賊盤を思わせるが、ブックレットは写真が多く、ザッパがテープの収蔵とともに写真もふんだんに保存していたことがわかる。70年代末期から80年代にかけてのザッパのアルバムはザッパの顔写真を使うことが基本となり、メンバー写真はほとんど紹介されなかった。本作でようやく80年春のメンバーを初め、ステージなどの写真が見られることになり、その意味で80年春の演奏が一気に身近に感じられることになった。
●『ZAPPA ‘80:Mudd Club/Munich』その1_d0053294_22562996.jpg ジョーは本作を構成した際の労苦を書いている。テープの箱に演奏場所が記されていても、そのテープに演奏のすべてが含まれているとは限らない。それでほかのテープを探し、見つかっても音質が違っている場合があり、ひとつのショーとしてアルバム化する場合はさらに一仕事を要する。そういう作業は本作の聴き手にはわからないが、ジョーにすれば苦労してまとめ上げた本作であるので、なおさら演奏が素晴らしいと言いたいだろう。それはさておき、この時期のザッパは前年の秋と初冬に結果的にLP3枚組となる『ジョーのカレージ』の発売を終え、通販でLPやグッズを販売する自社のバーキング・パンプキン・レコードを設立する前夜であった。『ジョー……』の録音に参加したメンバーではヴォーカルのアイク・ウィリス、ベースのアーサー・バーロウ、キーボードのトミー・マーズが残ったが、ドラムスはヴィニー・コライユッタから初参加のデイヴィッド・ロウグマンに変わり、またヴォーカルはレイ・ホワイトが復活した。ザッパを加えて計6人で、エド・マンのパーカッションがない分、ヴォーカル主体のストレートなロックという色合いが濃い。本作は見開きが二段になった紙ジャケット仕様で、CDやブックレットを取り出すのに苦労するが、軽いのがよい。ザッパの紙ジャケットCDは、日本で最初に作られたものは厚手の紙を使い、それはそれでいいのだが、LPをCDサイズに縮小した比率で紙も薄くすればと時に思う。そのことを本作が体現していると言ってよい。なぜこんなことを書くかと言えば、ユニヴァーサル・ミュージックはザッパ生誕100年といった機会に、ザッパがLPで発売したアルバムをすべて紙ジャケCDとして大きな横長の箱に入れてまとめ売りするのではないかと想像するからだ。その際、日本の紙ジャケでは並べた全体の幅を取り過ぎるので、使用する紙の厚みを本作と同じ程度にすれば半分の幅になる。CD単体の発売ではしっかりした厚みは必要でも、まとめ売りの箱入りとなれば薄くてよい。生誕100年は17年後で、それまでにはジョー・トラヴァースはテープ収蔵庫のめぼしい録音は全部アルバム化しているだろう。話を戻す。ジャケットを見開くと、ステージを斜め上から捉えた写真が全面に使われ、前列は中央にザッパ、その左右に黒人のギタリスト兼ヴォーカリストのレイとアイク、後方は一段高い壇上の中央にドラムス、上手にキーボード、下手にベースだ。このメンバー配置は当時のツアー中、変化がなかったのではないだろうか。というのは、これは80年6月11日のパリでのライヴを収録した四半世紀ほど前に出回った海賊ヴィデオでもそうであるからだ。それは白黒で画質も悪かったが、現在は全編をカラーでYouTubeで見られる。フランスのTV局が撮影したもので、その後ザッパが発売権を獲得したかどうかはわからない。
●『ZAPPA ‘80:Mudd Club/Munich』その1_d0053294_22565936.jpg ジョーがその映像を知らなかったはずはないので、当時のヨーロッパ・ツアーからミュンヘンを選んだのは新鮮味を意図してのことだろう。ミュンヘンのオリンピック競技場は忌まわしい事件が1972年にオリンピックが開催された際に起こり、ザッパはよく知っていたはずだが、イスラエルとパレスチナの問題に首を突っ込まなかった。同事件は2005年にスピルバーグが映画化し、アメリカのユダヤ系のミュージシャンたちが事件や映画についてどの程度どのように思ったかに筆者は関心があるが、日本ではその情報は得られない。また話を戻して、6月11日の演奏はミュンヘンよりもいいように思う。2時間20分の演奏で、ミュンヘンより23分も長いからではなく、ザッパのギターや他のメンバーのソロもより熱気に溢れて聴き応えがあるからだ。ジョーがミュンヘンを選んだのはマッド・クラブとほとんどレパートリーが被るからだろう。あえてそうしたのは、240人収容のクラブと競技場とで同じ曲がどのように違うか、あるいはほとんど変わらないのかをファンに判断させたい、つまり聴き比べを意図したからだろう。それはほぼ2か月後の変化を知ることでもあるが、種々の要因があっても基本的にほとんど変わらなかった。これは各地に見合った演奏をなるべく心がけつつもザッパはツアー用の選曲を変えなかったからだ。その意味ではミュンヘンという都市とそこでの演奏は関係がなく、ザッパが観光旅行に関心がなかったことを説明もする。ただしパレルモのようにとんでもない事件に遭遇した場合は別で、ザッパはそれを面白がってアルバムの特色に用いた。ザッパにとって欧米各地をツアーする意味の最大は、よき演奏の録音を得、それらを後にアルバムに使うことで、各都市で音色も含めて演奏が大きく違うことは好ましくなかった。となればツアーを追って見る熱烈なファンは都市ごとの演奏の特色が乏しくて退屈するかと言えば、それは半分は当たっているだろう。その半分とは変化のないヴォーカル・パートで、観客は気楽に聴き流す。もう半分は即興演奏で、特にザッパのギター・ソロだ。本作にもそれがたっぷりとあり、ザッパはツアー各都市での演奏を自分でも予測つかない一期一会の得難い機会、正念場の最たるものと考えていたはずだ。気楽に聴き流すにはあまりに冷徹かつ真剣であるからだ。もちろんステージにいる間中は全メンバーがそうだが、特にギター・ソロになると他のメンバーはザッパを邪魔せずに無我の境地に浸れることを助けるという役割の認識を強めていることが伝わる。これを簡単に言えば、ヴォーカル曲の俗としての空間に、聖なるザッパのソロが屹立しているステージということになる。もちろんそれは80年に始まったことではないが、この頃から特にザッパはギターの可能性の模索に没入し、多くの成果を得る。
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by uuuzen | 2023-03-05 23:59 | ●ザッパ新譜紹介など
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