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●『第3回 野外工芸美術作家展』
壺の 名前知らずに 母に訊き 片づけ人の 労苦思いし」、「琺瑯の 白き痰壺 忘れ得ず 駅のホームの 柱の根元」、「結核の 蔓延よそに 煙草吸い 煙にむせつ 煙に巻きたし」、「血痰を 見せる家内と 見つめ合い 肺は見えずに なすすべはなし」
●『第3回 野外工芸美術作家展』_d0053294_14383683.jpg
先月16日は家内と京都市内の展覧会巡りをした。最初に見たのは昨日書いた山口華楊の展覧会で、会場となった堂本印象美術館の敷地内西側にある丘状の庭で野外作品展が開催中であったので、バスを待つ間に見て回った。前回は野外彫刻展があったが、今回は野外工芸展で、京都府が意欲的に京都府在住の造形作家の紹介に努めていることがわかる。野外であるので雨に濡れてもよい作品が選ばれたが、その点からは彫刻よりも工芸は作品の素材に限りがある。工芸品はだいたいが室内で使うから、雨ざらしには出来ず、また彫刻と違って掌サイズの比較的小さなものが普通であるので、野外展示では盗難の恐れが大きい。そこで本展でも小型の作品は釣り糸で台座に固定されるなどの処置を受けていたが、盗む気になればその細い糸は鋏で簡単に切断出来るので、釣り糸は触れてはならないというちょっとした抑止効果しかない。また盗難の可能性は有名作家でない限りはほとんどなく、また有名作家は本展のような半ば合同展には取り上げられない。東山五条の河合寛次郎記念館から20年ほど前か、作品が盗まれたことがあった。寛次郎の娘さんの談話は、盗まれたことではなく、盗む気を起させたことを悲しむものであった。盗んだ者はよほどの愛好家であったか、それとも換金目当てであったかわからないが、盗んでまでほしい気持ちは精神病であって、本物の強盗でない限り、盗品を所有し続けることはその盗品について思うたびに罪悪感が蘇るはずで、筆者ならとうていそれに耐えられない。だが現実には盗みを何とも思わない者がいて、筆者も非常に大事にしていた高価なものを盗まれたことがある。そのことを思い返すたびにはらわたが煮えくり返るが、気安く自室に他人を入れてはならないことと、恩を仇で返す者は確かにいることを学んだと思って諦める。話が逸れた。野外工芸展は野外彫刻展ほどの意味合いはない。本来室内で展示すべきが、建物内部は絵画の展示やお土産品の販売で占められ、仕方なしに空いている庭園を有効利用する考えによる。もう少々敷地が広ければ別館を建てればいいが、その費用の捻出は無理で、それで樹木が生い茂っていた庭を整備してどうにか野外展示用の空間を確保した。適当に樹木は残されたので、展示作品はの雨ざらし具合はさほどひどくないだろう。それに樹木間での展示は道路からは見えにくく、盗難の心配は少ないだろう。それに向かい側の大学の学生らが展示を見ている光景に出会ったことがなく、無料とはいえ、鑑賞者はわずかであろう。無料の美術展はそれが普通で、作者は見てもらうことより、展示した、されたということに意味を見出す。
●『第3回 野外工芸美術作家展』_d0053294_14385132.jpg
 京都府下に活動拠点を置く造形作家は無数と言ってよいほどにいる。筆者もそのはしくれだが、団体に所属せず、公募展には20年ほど出品していないので、作家活動をやめたと思われるだろう。だが収入の根本は作家活動であり、その意味でプロであって、自作には責任を持つ気概がある。ところが本展のような京都府主催の団体展の出品依頼はない。こうした税金を使っての展示では公募展の受賞歴や所属する団体展での経歴が審査の優先事項とされるからだ。つまりはより広く名前と作品が世間に認知されていることが重視され、そのことは工芸であればその各分野においてある程度序列が決まっている。そこには作家としての経験年数も加味されるが、何より重要なのは平入選ではなく、受賞歴で、本展の次回の出品者はもう決まっているだろう。個展活動のみの作家も京都には大勢いるが、彼らも選ばれる対象にはならない。才能の乏しい作家が個展を開き、それなりに作品が売れる例はいくらでもあるが、それは仲間うちでの評価に過ぎず、公の選抜展には取り上げられない。そうなるには先輩作家からの評価すなわち受賞歴がものを言い、その直接間接の子弟関係によって新進作家の評価は定まる。簡単に言えば有名公募展に出品し続けることだ。ところが京都はあらゆる工芸の本場になっているように見えて、有名団体展では諸工芸のあらゆる技法作品が網羅されているかとなれば全くそうではない。筆者が専門とする友禅染、もちろんすべて手作業のその染色は、日展では作家が皆無に等しく、したがって蔑みがあるほどだ。一方友禅のキモノ作品が毎年数点並ぶ伝統工芸展でも、友禅の技法を新たに工夫した斬新なデザインのキモノはまあ絶無と言ってよい。筆者はそれで団体展に出品しなくなったが、それは名声を諦めたといった程度の低い考えからではない。団体展に出品せず、個展も開かていないのは、ひとつの大きな目的があったからだ。それに正直な話、技術に対して眼力のない作家ばかりがたむろする団体展が時間も気力の点でも無駄に思うからだ。尊敬出来る先生がいればいいが、いても筆者の技法への関心はなく、論は噛み合わない。それで筆者は孤独かと言えば、そんなことを考える暇もない。何をどう学ぶかはもうとっくの昔に周知しているし、ネット時代になっていくらでも自分の考えを発信出来る。とはいえネット上の作品との出会いは実物作品とのそれと同じほどに偶然と呼べるほどに機会は少ない。出会いは常にたまたまであり、そのたまたまの機会を増やす機能を本展のような半ば団体企画展が担う。だがたまたま作品に接し、その作品や作家を強く記憶に留めることはさらにわずかで、こうした展覧会の有意義さは作家の経歴に箔がつくという点にある。ただしそれは当の作家が今後も制作活動と作品発表を続行しなければ意味はない。
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 さてこれを書くに当たって、会場に置かれていた目録を兼ねたカラー刷りのチラシを初めて開いた。出品作家は5名で、各人の顔写真と経歴が書かれる。顔写真はよけいだ。筆者はそれを知らずに作品を見、そして今日の写真を撮った。最初の写真の左は樹木の間に吊るされた染織作品で、雨に濡れてもよい素材を中心に織られていた。染織作品は水濡れ厳禁が普通であるので、意表を突かれた。しかし実際の用の美を考えると、樹間に染織品を垂らすことは一時的な面白みはあっても、室内の壁かけのような長時間は考えにくい。風によって大きく揺れるし、また劣化も激しいからだ。それに光の透過の美しさを最大限に考慮すれば、素材はもっと別のものがいいのではないか。そこで筆者が想起したのは蜘蛛の巣だ。その造形に勝る樹間の織物はないように思う。それで古今東西、染織品は主に人間がまとう衣装に使われている。最初の写真右はステンドグラスの立体版と言ってよく、作風は流行りのロリータ・ゴシック系だ。三日月を配した作品が他にもあって、昔の純喫茶店やバーの看板に似合いそうだ。あるいはこうしたインテリアをほしがる人は一定の割合でいるだろう。もっと大規模のシャンデリアを崩したようなガラスの煌めきを中心に見せる作品もあって、彫刻家を自称してもいいかもしれない。2枚目の写真は台座上に青磁のオブジェを円形状に配置したもので、これも彫刻に分類可能だ。前回同じ場所で見た野外彫刻展にも小型の磁器を並べた作品があった。オブジェと書いたが、どれも穴があって、花器として使えるだろう。痰壺にもよさそうなものがあるが、容器であれば何にでも使える。3枚目の写真は左右とも同じ作家で、左のだるま像は誰しも見慣れた張り子のだるまを金属に置き換え、その素材の異質性が印象深い。この手法は彫刻ではたとえばハンガーに吊るしたジャケットを木材でそっくり同じように作ることに通じ、斬新さはない。だが、新たなだるま像の創造はたやすくはない。出来たとしても鑑賞者はそれをだるまの新デザインとは認めない。それをするのであれば同じ張り子でなければならない。そう考えるとこの金属だるまはパロディで、その面白みに留まる。右の円形テーブルは卓表面の銀色の模様が美しい。これは日常生活に使うと存在感があって楽しいだろう。さて、庭園に面した建物の裏出入り口にもう一作家の地味な暗褐色の作品が数点置かれていた。雨に濡れれば困るのであろうか。それとも林の中に置いては目立たないからだろう。工芸作品としてどういう用途で使用するかわからず、写真を撮らなかった。目録には「紙を繰り返し折り畳むと、自然に渦巻く曲線が現れる。折り畳むことで生み出された凹凸は、螺旋構造となり、装飾的な陰影を見せる。…」といった作者の説明がある。これを読んで作品を見れば印象深かったかもしれない。たまたまの出会いは大半はその一回限りで終わる。
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by uuuzen | 2022-12-10 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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