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●『京阪アコーディオンクラブ・コンサート』パパガイオス(丸尾知子 aka 丸尾丸子・矢田伊織)
定する 人に誤り 時にあり くさされ励み ほめられなおも」、「一芸に 秀でて照らす 一隅に 人は集まり 輝き増して」、「同調の 楽器合わせて 響く午後 牧神目覚め 妊婦戯れ」、「舞台でも 段差低くて 馴染みあり ほどよき距離の 演者と客や」●『京阪アコーディオンクラブ・コンサート』パパガイオス(丸尾知子 aka 丸尾丸子・矢田伊織)_d0053294_18083381.jpg 昨日最後に触れた「パパガイオス」はこの公演のゲスト出演で、このアコーディオンの丸尾知子さんとベースの矢田伊織さんのふたり組の名前が以前からつけられていたものかどうかは知らない。筆者は彼らの演奏を京都のライヴハウスで二度経験し、いずれも本ブログに感想を書いた。今回彼女は本名での登場で、「丸子」と同一人物であることを公にしていいことを確認してこれを書いているが、シンガー・ソングライターとしては「丸子」、今回のようにアコーディオンの有名な曲を演奏する場合は「知子」とのことだ。言うなれば彼女のアコーディオン演奏にはふたつの面がある。そして今回はヴォーカルを聴かせない分、彼女の技術力が際立った。米谷麻美さんとかなり親しいようで、米谷さんは去年の大病中、丸尾さんから励まされたと語った。そういうこともあって米谷さんは先のことと思っていた杉村さんと丸尾さんとの共演を今回実現させた。プログラムに「米谷談」として丸尾さんのアコーディオンについて「どんなジャンルでも「音楽」にしてしまうしなやかな音づくりは必聴。いろどり豊かな音たちが嬉しそうに遊んでいるよう。一度聴くととりこになるファン多し」と書かれる。彼女は舞台では丸尾さんの演奏を「音が歌って踊って跳ねる」と語ったが、これは演奏技術でも丸尾さんの性格においても言える。端的に言えば「陽気で明るい」だが、彼女はそう思い込まれるのは心外であるかもしれない。実は京阪電車に乗っている間、筆者は村上華岳の『画論』を読んだ。そこにある評論家、たぶん加藤一雄だが、彼が華岳の絵画を評することを華岳は嬉しいとしつつ、自分の思いを言い当てているとは言い難いと書く。自分が思ってもみないことを他者が書くことは致し方がない。作品はひとり歩きするからだ。作者は自分にしかわからない思いを作品に込め、そのことをおおよそにしても人が作品から読み取るとは限らない。文字表現ではない絵画や音楽はなおさらだ。筆者は以前丸尾さんの演奏について書いたことを思い起しながら、今回の演奏をどう書くべきかと迷いもある。「陽気で明るい」音楽性を彼女が否定しないとして、それで充分満足ということもないだろう。長調が明るく、短調が悲しいとはあまりに単純な見方で、「陽気で明るい」音楽にしばしば悲しみは隠されている。しかし筆者は丸尾さんの私生活は何も知らず、結局は彼女の音楽から勝手に思いを紡ぐしかない。これは彼女が筆者のように大量の文章を書いて公にしても同じことだ。ただし表現行為は前進の意思があってのことで、作品には必ず鑑賞者に訴える活力はある。その本質が「陽気で明るい」とは限らないが。
●『京阪アコーディオンクラブ・コンサート』パパガイオス(丸尾知子 aka 丸尾丸子・矢田伊織)_d0053294_18085954.jpg
 華岳の絵画は生前からとても人気があった。そこに美術評論家の賛辞もある程度は影響したろう。誰もが漠然と思っていることを評論家が的確な言葉で言い表すと、一般人はその言葉に影響されやすい。そのことを思って華岳は評論家の文章をいちおうはありがたがりつつ、自分の思いは別のところにもあることを『画論』で示唆した。華岳は有名になりたくもなく、金儲けにも関心がなかったが、そのことを含めて評論家は見抜き、その絵画の本質を説いたであろう。このブログは感想ないし作文に過ぎないが、物故ないし有名作家の場合と違って若い表現者について書く場合はずけずけと本音を書きにくい。一段落千二百字で三段落書く定めを守るゆえ、字数が足りない場合もあれば書くべき内容がない場合もある。後者は筆者の関心の薄さと知識不足のためだが、書くなら今の自分にとってどう意味があるかを優先する。それで公演当日に読み始めた華岳の『画論』を引き合いに出したが、それには別の思いもある。海外では画家も音楽家も自分の思いを著作にするのは普通のことで、華岳の絵画について知るには彼の『画論』は大いに参考になる。ただし論と言うほどのおおげさなものではなく、日々感じることのうち、特に言っておきたいことだ。丸尾さんのそれは、おそらく彼女と小一時間ほど雑談出来れば把握可能であろう。ところが今回も彼女とはごくわずかしか言葉を交わさなかった。それで筆者の一方的な、先の華岳と同じ、勝手で的外れなことを書くかもしれないとの思いがある。彼女は今年川崎に転居したが、京都にいた間、「京阪アコーディオンクラブ」に一時いたか、また講師や審査員のたとえば吉田親家さんと交流が生まれたのだろう。となれば彼女のアコーディオンは日本のそれの歴史を引き継いだその先端の位置にある。そのうえの彼女が好むブラジルの大衆音楽やアルゼンチンのタンゴの演奏だが、どれもダンス音楽で、彼女の音が「歌って踊って跳ねる」のは当然とも言える。あるいはそういう心根であるのでダンス音楽を好むと言ってもよい。彼女のオリジナル曲に洗濯機の槽の中の洗い物がぐるぐる回ることを歌うものがある。「丸尾丸子」のふたつの丸はどの踊りでも輪になったり、回転したりする動作があることに通じてもいるが、洗濯槽も円形自動掃除機も人の役に立ちながらひとりで回転する。ザッパは電気掃除機をロボットとみなして有名フラメンコ・ダンサーのChungaになぞらえたが、円形ロボット掃除機の名前がキューバのダンス名称のルンバというのも何とももの悲しい。とはいえ、これは丸尾さんが悲しみを抱えているとの憶測ではない。またそう捉えたところで彼女の演奏は「歌って踊って跳ねる」ことに変わりはないが、次に書くように今回演奏されたフォオーがどれも明るいがもの悲しさもまとっていて、そういう曲を丸尾さんが好むところにライヴハウスで演奏する姿とは違いがある。
●『京阪アコーディオンクラブ・コンサート』パパガイオス(丸尾知子 aka 丸尾丸子・矢田伊織)_d0053294_18093632.jpg 今回の演奏の中間部「企画コーナー」の前半のフォホーは米谷さんの意向が反映したもので、小野田さんが20年近くフォホーを演奏しており、丸尾さんと矢田さんもフォホー好きであることで合奏が実現した。フォホーとして「フェイラ・ディ・マンガイオ(マンガイオの市場)」、「プライエイロ(浜辺の人)」、そして丸尾さんと矢田さんが演奏する間、米谷さんや小野田さん、司会者が客席を練り歩いた「オー・ショッチ・ダス・メニーナス」が演奏された。ヴェラスケスの名画の題名で知られるスペイン語の「ラス・メニーナス」は「女官たち」と訳されているが、ポルトガル語の「Das Meninas」は英語の「girl」で、「O Xote」はフォオーの踊りの一形式を指す。原曲は歌詞があり、デートを夢見る少女が女性に変貌する願望を砂漠のサボテンにたとえている。米谷さんによれば2曲目で丸尾さんはベロー・シェイクを駆使したが、これはアコーディオンの蛇腹を素早く動かして音色を変える奏法だ。その高度な技術を持つ点も米谷さんが今回の企画を実現させたかった理由になった。企画コーナーは次に杉村壽治さんを加えてタンゴが演奏され、その曲名は昨日書いた。その後に二度目の休憩を挟み、パパガイオスが演奏した。「埴生の宿」、エノケンの歌でよく知られる戦前の名曲「青空」、そしてブラジルのショーロで、これはヨーロッパ起源のダンス音楽のポルカをブラジル人が模倣して独自性を持った。演奏された曲は当日の夜に金森さんから届いたメールによればエルメート・パスコアルの「CHORINHO PRA ELE(彼のために泣く)」で、短い曲ながら目まぐるしい指さばきのメロディがあって、かなりの難曲だろう。次の演奏では今日の4枚目の写真のようにアコーディンが5台並んだ。今さらだがマスク姿がほとんどだ。右端の女性の横顔は半分切れていて、これは黒い幕が邪魔したからだ。ちなみに写真からはどのアコーディオンも左手に120個のボタンが並ぶストラデラ・ベース式で、WIKIPEDIAに各ボタンが発する単音や和音が記されている。120はボタン数が最大で、それだけアコーディオンの内部は複雑化し、重くなっているはずだが、小柄な丸尾さんがそれを奏でるのは体力をかなり要するだろう。話を戻して、最後は「青」をテーマに5曲演奏された。司会者が曲ごとに説明し、「ブルー・タンゴ」、デューク・エリントンの「ムード・インディゴ」、ウクレレ奏者が加わっての「ブルー・ハワイ」、そしてまた観客が一緒に歌った「青い山脈」と「ブルー・ライト・ヨコハマ」が演奏され、米谷さんの語りの後のアンコールは観客の拍手が伴奏となった「東京ブギウギ」であった。「ブルー・ライト……」は丸尾さんが横浜在住ではないが、川崎とは近いという理由に因む。その意味でも今回は丸尾さんと矢田さんが出ずっぱりの感があり、米谷さんの信頼と好意がわかる。
●『京阪アコーディオンクラブ・コンサート』パパガイオス(丸尾知子 aka 丸尾丸子・矢田伊織)_d0053294_18100840.jpg

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by uuuzen | 2022-11-29 23:59 | ●その他の映画など
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