「
疑いを 持たれぬ姿 さびしきや 目立たず馴染む 雑踏の中」、「目指すは 名風物の たたずまい 見かけて和み なければ空虚」、「風雪に 耐えて固まる 銅像に 鳩が留まりて 猫が尿かけ」、「銅像の 偉人知る人 消えてなお 語り継がれる 愛の尊き」
10月22日の時代祭りの帰り、「風風の湯」の常連客である85Mさんの奧さん、そして筆者の家内との3人で平安神宮から四条河原町まで筆者が引率して歩いた。祇園から四条河原町に向かい、同交差点まで50メートルほどのところで奧さんは高島屋に寄ると言って筆者らと別れた。その直後、四条通り沿いに5,6年前に見かけるようになった銅像男が手製の箱台に乗ってポーズを取っていた。筆者は嬉しくなり、マスクに笑みを隠しながら、一旦交差点近くまで歩き去った後、また戻った。彼はコロナで活動を中断していたのではないか。銅像男の横で1分秒ほど立ち止まっていると、そばを通る人は誰も目に留めない。それほど風景に溶け込んでいる。筆者は20代の観光客らしき女性と目が合い、次の瞬間彼女は筆者の右手にそびえる銅像男に気づき、おおげさな恐怖を示して驚いた。その時のことを銅像男は認識したはずだが、彼はどう思ったろう。銅像はしゃべらず、動かない。人間がそれを演じるのは無理があるので、彼は何分かに一度はさっとポーズを変える。筆者は銅像男の前に立ち、その場を去ることをにおわせた。すると銅像男は満面の笑みで筆者を見下ろした。筆者と銅像男との間に何かが通じ合った。笑った彼は全身真っ黒であるのに、口の中だけはピンク色であるから、その様子が黒猫のように見えた。江戸時代の既婚女性はお歯黒で歯を黒く見せた。銅像男が歯を黒くするには海苔を貼ればいいようなものの、口の中で溶けるか。さて、今日は家内と市内の各地を巡った。市バスが河原町通りを南下して四条河原町交差点を西に曲がる際、筆者は銅像男を思い出し、時代祭りの日に彼が立っていた場所を眺めやった。彼の姿はなく、一抹のさびしさを覚えた。大丸百貨店で歳暮の品定めをするためにバスを降りることにした。正面玄関ではなく、横断歩道に近い東側の出入り口から店内に入ると、何と左手に銅像男が立っているではないか。温かい店内でポーズを取って静止するのは彼にとっては僥倖だろう。話題の彼を起用するとは大丸もやるではないか。筆者はまた彼と目があった。彼はカラーコンタクトを嵌め、それに筆者の服装は時代祭りの日に横に立った時とは違うので、彼が同一人物と認識したかどうかはわからないが、筆者に対してまた口を大きく開けて破顔した。筆者らは地下の菓子売り場を一巡し、また銅像男のいる場所に戻った。横に立つ店員にSNSに写真を載せていいかと訊ねて写真を撮り、ここに紹介する。彼は「Mr. Kids」と名乗っている。ネット記事によれば彼はいつか本物の銅像になることを夢見ていると言うが、そのことについては明日書く。
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