「
策尽きて 柵取り払う 朔の夜に 月下美人の 花陰に猫」、「便利さを 果てまで求め 寝たままに 労苦ありての 楽しさ知らず」、「ミニボトル 飲んで足りるか 真の味 わずかでわかる ものはわずかか」、「粋に飲む 一気飲みして 息止まる いい気になりて 意気のみ盛ん」
テオ・ヤンセンは環境保護の観点からストランドビーストを作っていない。ではプラスティックがなければその作品を作り得ないだろうか。会場を訪れて筆者はそこに注目した。それほどプラスティックには何となく拒否感がある。近年3Dプリンターで住宅を作る動きが出て来ているが、あれは樹脂を使わないのだろうか。プラスティックもいろいろで、自然に還るものもあるようでも、マイクロ化して人間の体内に入り込めばどのようなことになるのか、これから先の人は新たな心配にさらされる。便利になっても必ず新たな深刻な問題が起こり、人間はどこへ向かおうとしているのか。人間が最も幸福であったのはローマ時代のある皇帝の治世下であったという意見があるが、いつの時代も幸福な人がいれば不幸者もいて、結局ものは考えようと自分を慰めるしかなく、実際そのことが最も精神衛生上はよい。近年少しでも早く「FIRE」を実現させるのが夢といった話を聞くと、若くしてリタイヤして暇を持て余せばどうするのかと思う。筆者は毎日忙しいほうが断然よい。もちろん金儲けではなく、やりたいことにおいてだ。それがなくなればもう人生はおしまいだ。さて今日の2枚の写真は手元にある洋酒のミニ瓶で、どれも未開栓であるのに中身がかなり減っているものがある。それはさておき、最初の写真の一番上は左3本がサントリーのブランデーVSOP、右2本がニッカのVSOPだ。写真が小さくてわかりにくいが、左端は最も古く、瓶本体と栓の周囲に縦方向の凹凸がついている。その瓶の右はその凹凸がなくなり、瓶胴部の円形のメダイヨンがバナナ型に変わった。中央は現在の姿のはずで、金属のキャップのみだ。この写真の5本はどれも瓶本体はガラスで、栓のみプラスティックだ。サントリーはプラスティックをなるべく使わない主義によって現行のミニボトルの栓を省いたのではないか。そうすれば製造単価が少なくて済む利点もある。デザイン重視の立場を捨ててまでこの歴史ある、といっても70年ほどと思うが、このブランデーの瓶と栓を簡略化して来ているのは、時代の様相を反映している。とはいえこれはあくまでもサンプル品としてのミニボトルのみで、700ミリリットル入りの本製品は相変わらず本体と同じガラスの栓がついている。ちなみに筆者はそのサントリーのVSOPの瓶に梅酒を大きな保存瓶から分けて詰め込んでいるが、メダイヨンつきの最初期の瓶かと思って確認すると、バナナ型でがっかりした。気に入った空瓶は捨てずにいたほうがいいと思う時もあるが、置き場所に困るので飲み終わればさっさと捨てる。
最初の写真の中央は左2本がロシアのウォッカ『スミノフ』で、スーパーで売られているほどに日本でよく知られる。面白いのは左端がガラス瓶、その右がプラスティックであることだ。当然左が古く、スミノフのミニボトルはガラスからプラスティックに切り替わった。右3本はコーヒー・リキュールの『カルーア』だ。これもどのスーパーの酒売り場にある。筆者はウォッカにこのカルーアを少量加えたカクテル「ブラック・ルシアン」が昔から大好きで、今もよく飲む。不思議なことはウォッカのみではかなりきついのにカルーアを混ぜると口当たりがマイルドになり、酒と感じなくなる。最初の写真の一番下は上の段にアメリカのバーボン、下にアイルランドのウィスキーを並べた。ミニボトルを作っているのは大手だけだろう。宣伝用にそれをばら撒く費用とそのことによる本製品の売り上げ高を比べれば、小さなメーカーではミニボトル製造は割に合わないのではないか。プラスティックにすることで輸送に便利、しかも割れないので現在はどのメーカーもプラスティックかと言えば、それはわからない。2枚目の写真は上下ともすべてガラス瓶で、上の写真は上段がバーボン、下がカナダのウィスキーだ。下の写真はすべてスコッチ・ウィスキーで、どのラベルも瓶の形も個性があってすぐにわかる。プラスティック瓶は何となくプラスティックが酒に溶け込みそうな気がして嫌だが、そのことは発泡スチロールのカップ容器に即席ラーメンが詰め込まれた時にも感じた。熱湯で発泡スチロールの成分が溶け出すというニュースが一時あったが、その後それは否定された。アルコールでプラスティックが溶け出ることはないと思うが、プラスティック臭がつく気はする。それはガラス瓶に長年酒が保存されると、味に敏感な人はガラス臭がすると言うのと同じで、ガラスの味がごく微量に酒に混じるのであればプラスティックはもっとのような気がする。ウィスキーは樽の中で熟しても瓶詰めされるとそれはなく、なるべく早く飲むのがいい。そうでなければ栓から少しずつ蒸発する。それゆえ瓶の形が面白いと思って収集することには向かない。さりとて空瓶であれば中身の色がないので面白くない。色で思い出した。今日の最初の写真の一番上、右端2本はどちらが古いのか知らないが、明らかに琥珀色の濃度が倍は違う。樽の中での醸成期間の差でないとすれば何が原因か。それはともかく、ミニボトルはだいたい40ミリリットルで、一杯分だ。それでもちろんそれなりに味はわかるが、たいてい物足りない。そこがメーカーの思惑で、大きな瓶を買わそうという魂胆だ。しかしその瓶でもすぐになくなる。量が少なくなって来た頃のさびしさは、砂時計の残り少なった頃と同じで高齢になればなおさら身に沁みる。それを忘れるために酒を飲むのだろうが。
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