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●アクセル・ムンテ著『記憶と頓狂』第11章「カプリの犬 内面」その4
のことは太陽がその炎を減じた時に起こり、卓は創造の主を饗するために席に着かせ、そして犬のために残り物の断片が集められる用意が出来ている。彼らの頭上には蔓棚からたわわに実った葡萄が下がり、オレンジの木立の間から熟したイチジクと赤い果皮の桃が覗く。それから村のお祭り騒ぎがやって来る。歌とからかい、娘たちの大きな葡萄籠の下からの明るい眼差しと潰れた蛹から葡萄酒のまどろむ蝶を解放させる素足を伴って。
 広場には涼しい海風が時々吹く。そしてカプリは夏の熱と埃を洗い流す秋雨の入浴で気力を取り戻す。犬たちは未知の要素の元気さからうまく自身を救うが、曖昧な幾百万もの生が夏の血の戦場を覆う大洪水のように押し寄せる流れの中で溺死する。一方生き残った者はドン・ニコリーノの理容店の刷毛の間に彼らのアララト山を発見する。
 無意識の霧が犬の脳から次第に湧き上がる。そして行動の夢が目覚め、力強さが半ば閉じた目から外をじっと眺める。ドン・ニコリーノは晴れやかに彼の肖像から蠅の後光を取り払い、そして、物思いにふける。ドン・ペトルッチオが夏の「ミクストゥム コンポジトゥム(人工的混合)」によって人生の新しい秘薬を作成し、フェノッチオとジョヴァンニは旅行者の流れから出た銅貨を洗うためにふたたび彼らの居場所に座り、小さな驢馬は震える脚で広場に多くの見知らぬ人をもう一度降ろす。ヴェスヴィオスからの煙は湾に長い雲の流れとなって落ち、そしてトラモンタナ(北風)の羽に乗り、北への結婚旅行の後、夏はふたたび家へと飛ぶ。夏が過ぎ去るまで、無駄にカプリ人は島の海岸の周りにもう一度網を広げ、無駄に犬は岩間で待って横たわり、無駄に猟師はモンテ・ソラーノの高台に満身装備で座り、逃亡者を求めて弾倉を撃ち放つ。
 尻尾を垂れて犬は広場の石の上に群がり、立ち去った夏の牧歌の悲しみを考える。アペニン山脈から冬が泡に隠れた龍の舟に乗って湾の不安な海水の上を航行して来る。警鐘(*7)が長く静かであり続けて来た古い監視塔の廃墟の中に嵐は轟音を立て、波が泡立ち砕ける間、狂ったヴァイキングがカプリの崖をよじ登る。旋風は秋のお祭り騒ぎの饗宴の後も吊り下げられていた蔓棚の花輪を切り刻むほどに強く、そして、野蛮人のように荒々しく、森の妖精が着る葉で織られた衣服をバラバラに引き裂く。

(原注*7)警鐘は海賊の接近を湾の岸辺に警告するために古い監視塔からよく鳴らされた。

 しかし下のミトロマニアの洞窟では聖なる火がペルシアの神の祭壇に相変わらず燃える。そして日の神は優しく彼の愛する島に輝く覆いを広げ、北からの野蛮人をふたたび海へ行けと命令する。それで荒々しいヴァイキングは出発し、彼の用事は成し遂げられず、娘たちの陽で温まった頬からひとつの薔薇も奪わず、オレンジの木立の常緑からひとつの金色の果実も盗まれない。そして彼が島に戻って来ることは小さな丘の間に恐れ知らずの小さな菫が注意深く顔を覗かせる以前にほとんどなく、水仙とローズマリーは厳しい北方人が去った急な崖の上をよじ登り、そしてすぐに花の子どもたちの群れがやって来て草の中で夏を遊ぶために腰を下ろす。
 広場で座る犬たちは以前のように日当たりの中で黙考する。彼らの生活の感情の周期は駆け抜けて来た。そして彼らは自分たちの歴史の空白の頁を新しく書き始め、その頁はどれも相次いで起こる出来事は変わらない。日は日に続き、年は年に続き、そしてすぐに老齢になり、彼らの頭上にいくらかの巴旦杏の花が散らばる。感覚の浮遊する歓喜は麻痺し、遠く飛翔する青春の思考は広場の四方の壁にその羽をぶつけて壊れた。そして飼い馴らされた家鴨のように犬たちはドン・アントニオの葡萄酒店からフェリチェッロの驢馬の厩舎へ、ドン・ニコリーノの理容店からドン・ペトルッチオの薬局へと、彼らの閉じた空間をぐるぐる駆け回る。時々彼らの頭上高く野生の鴨の自由な叫びが広場に届く。若さの浮力が彼らに新たに湧き、彼らの重い手足が彼らを運べる限りは、アナカプリの道に向かってとぼとぼと歩く。ある世界の革命のかすかなこだまがたまにドン・ペッピーノの郵便局を通じて彼らの鼓膜で震動する。そして彼らはナポリの白い町へと平和を夢見て視線を逸らす。そこの人間の生活の騒音は波のつぶやきの中に失われ、あるいは古き革命家のヴェスヴィオスへと去って、その脅迫的な怒りは決して彼らのエデンの園には届かない。
 それで彼らは広場に座り、彼らを過去へと流す時の川を凝視する。彼らは催眠術をかけられてもはや動かなくなるまでさらに数年そこに見つめながら座る。存在の奮闘は終わった。そしてほんの少しだけ彼らは仏陀の涅槃に沈む。無意識になって、苦痛はなく、太陽に酔って。


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by uuuzen | 2022-11-27 17:18 | ●本当の当たり本
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