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●アクセル・ムンテ著『記憶と頓狂』第11章「カプリの犬 内面」その3
リア・ヴァッカの精肉店の前は死んだ鶉を吊るし、ドン・アントニオの「軽食店」では長い列の銃が立ち並び、椅子は大きな狩猟鞄と火薬の容器を載せる。日の出から猟師は巨大な射撃用長靴を履き、腰に弾薬帯を巻いて葡萄酒店にいる。今に鶉への災難がマリア・ヴァッカ店で現われるだろう! ただちに猟師の大きな鞄の中へと消える。村役場の玄関屋根の下では若い世代が一日に何千羽もの鶉が捕獲されたという老いたティムベリオ・パガーノの若い頃の話を聴いている。そして教会の階段の上で聖職者はカプリが司教を擁している時に消失した素晴らしい期間について悲しく思う。司教の擁立は鶉の収穫による代償だ―「鶉司教」(*3)とローマでは呼ばれていた。時が経つにつれて興奮が増し、ついに鐘楼の鐘が最初の狩猟日の終わりを告げる。みんなは翌日の奮闘のための力を蓄えるために帰宅する。ふたたび暗闇が島に落ち、カプリは熟睡する。

(原注*3)カプリはもはや司教を保有しなかったが、鶉の収穫がまだひとりを擁立している。そしておそらく島の収益の項目として最も重要だ。

 疲れた羽で鳥の群れが海上を飛ぶ。幾千が長旅のために集まるアフリカの海岸に降り、幾千が疲れ切って波間に沈み、幾千が暗闇の中で遠く光る岩の島で死ぬだろう。暗がりの最後の時間に隠されて彼らは島に接近し、眠る海岸に静かに急降下する。ティベリウスの邸宅のそばの高所では、隠れ人が罠を前にして見つめている。ミトロマニア(*4)や「小停泊地」の崖の間では鳥を捕獲する網が広げられ、リンボとプンタ・ディ・カレーナの岬ではカプリの犬が猫のようにこっそり獲物を狙ってうろつき回る。モンテ・ソラーノの夜が明け、最初の光が差す時、二千年前にミトロマニアの洞窟の中の古き太陽神の崩れかけた祭壇の聖火の前で為されたのに、網の中で幾百羽の鳥、鶉、森鳩、雲雀、鶫が飛び交い、崖の間では他の幾百が死の出血をする―しかし太陽は何も気にしない! 太陽に対して暗闇が多くの疲れ果てた鳥を肉食の目から隠して分散させるのは大事なことだ。今日はその輝く光によって示される跡に沿って死は崖から崖へと闊歩する。

 「自然は耳が聞こえない、
 それを知らずに惨めだ。
 ベンはそう懇願しなかった
 ひとりでいること以外は」(*5)

(原注*4)ミトロマニアにはわずかなよそ者しか訪れない。その名前は「マグナム・ミトラ・アントゥルム(ミトラスの大洞窟)」に由来するだろう。西に面し、日の出の最初の光が神秘的な暗がりを照らす。ここで行われた発掘によって、老いてまだ若々しい太陽神がこの洞穴で崇拝されたことが知られる。
(原注*5)レオパルディ

 モンテ・ソラーロの高みに猟師は座り、征服者の眼差しで下方の戦いの野原を見つめながら歯ぎしりする。暑さが続く日で、猟師は異なった方向に数百発を撃った。彼の足元には二匹の犬、母親と息子がいて、彼の背後にはスパダロが両手に余分の銃を手にし、巨大な狩猟鞄を肩にかけて座っている。時々母と息子は逃げ去る鳥を夢中で追いながら、小さく吠えて尻尾を振り、時々猟師の手は想像上の鶉や鳩を倒す信頼の銃を求めて探り、時々スパダロは広大な鞄に新しい獲物を詰め込むように見える。沈黙がどんどん深くモンテ・ソラーレを覆う。彼らの足元にフラグリオーニ(海中柱)の3本の岩が紫と金色に輝き、沈み行く太陽の光が湾の波に落ちる。カプリの町からホテルの鈴が夜食を報せて鳴る。鶉パイの香ばしい幻覚が猟師の鼻孔をくすぐり、半分閉じた瞼の下に見える湾全体が海への食欲をそそる本物の「カプリの赤」の類似と思い込ませる―その紫の色相はとっくに老ホメロスが赤葡萄酒になぞらえた―一方でスパダロのより大きな想像力は下の崖の波のつぶやきにマカロニのパチパチという音と沸騰を聞き、そして夕陽の紫色の輝きをその上にたっぷり注ぐ「プマロリ」(*6)のソースと見る。

(原注*6)「プマロリ‐ポミドーロ」すなわちトマト。南イタリア人が好む果物。彼のあらゆる食べ物の中で最も重要な素材で、マカロニの単調さを甘くする。

 突然猟師は目覚め、目をこすって周囲を夢心地で見る。スパダロは驚いて鞄を探す。そこでは一羽の小さな雲雀のみが北での春の演奏家を開こうとしていて、最後の眠りを眠る。「やあ! スパダロ! さあ行こうよ!」 犬たちは徐々に起き、そして隊列はゆっくりカプリへと目指し始める。一日の労苦に疲れてついに彼らは広場に着き、馴染みの葡萄酒店で猟師は腰を下ろし、スパダロと犬たちは勝利の雲雀を家に運ぶ。
 続く骨折りの中で狩猟の季節の幾週かが過ぎる。毎朝彼らは夜明け前に企てに動き出し、飛翔の中に春を捕獲し、毎夕休むために広場で会い、そしてほぼ常に我々は友人の猟師のもてなしの食卓の周りに集まる。それは彼が唯一提供出来る素晴らしい鶉パイに参加するためだ。
 しかし仲間が減ったにもかかわらず、一万の行進がなお勝利して前進する。すぐに雲雀は遠い北の凍った野原の上で歌い、燕は長らく雪に半ば埋まって眠る遠く離れた小さな小屋のひさしの下でさえずり、そして鶉は柔らかい春の夕方にその単調な音を響かせる。
 狩猟の季節は終わった。カプリの犬は鳥が狩りの手を逃れて飛び去った方向の湾を見つめながら、ぼんやりと広場に座る。どんどん高く、聖なる火は毎朝ミトロマニアの洞窟の下の太陽神の祭壇の上に燃え上がり、どんどん明るく、フラゴリオーニの岩は毎夕紫と金色できらめき、猟師の網膜を魅了する湾の葡萄酒の色合いはさらに赤く輝く。静かに進歩的な犬は昼の燃えるそして問いを熟考し、そして、息切れしながら、聖職者たちは司祭が日曜日ごとに涼しい内部で称賛する教会の日の当たる階段から煉獄の炎の予言を聴く。公の生活は次第に終わり、それはあたかも狩猟季節の興奮が去った後の反動の定めのようだ。確かに蒸気船の到着はまだ広場から見られる。そして片目を開けて彼らは広がる写生用傘と画架、絵具箱を少年の頭に載せて広場に上って来る数人の外国人を注視する。実際、彼らはまだ郵便鞄が開けられるのを待って郵便局の閉まった扉の前に集まるが、政治的な生活の関心はひと休みし、手紙の希望は静かな退職となる。薬局では薬が深鍋の中で沸き、ドン・ニコリーノの理容店では蠅の生きたフレスコ画が壁を飾る。モンテ・ソラーノの斜面辺りにシロッコ(南風)が厚い雲に耐え、そして抵抗出来ない眠気が広場の上に定着する。カプリは夏の麻痺状態に入る。

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by uuuzen | 2022-11-25 23:58 | ●本当の当たり本
●「菊のつく 名前の児童 今は... >> << ●健気に咲き続ける白薔薇VIR...

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