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●アクセル・ムンテ著『記憶と頓狂』第11章「カプリの犬 内面」その1
代ローマ人のように、カプリの犬は一日の多くの部分を公の生活に捧げている。広場は彼らの公開討論会場だ。そこで彼らは自分たちの歴史を書く。ドン・アントニオが「オステリア」(軽食の店)の扉を開き、床屋で放血医のドン・ニコリーノが彼の「サローネ」(理容店)から出て来る時、カプリは新しい日を始める。それから全方向から犬がいかめしく―医者、タバコ屋、事務所、ドン・アルカンジェロ、ドン・ピエトロ、その他の家の前にやって来る。そして自然に定まった儀式的なあいさつの後、瞑想のために広場に座る。ドン・アントニオは彼のカフェの前に2脚の椅子を置いている。ある犬は招きを受け入れてそれに寄りかかり、別の犬は教会に入る階段、あるいは、彼らの時計世代が高まる驚きで聴いた鐘楼のそばの教会の安逸な角地を好む。その鐘音は太陽のように抑圧不能で、自分の道を前へと押し進むが、ああ! 残念ながら太陽のそれではない。
 しばらくすると「ホテル・パガーノ」の犬が現われる。彼らは恐ろしく硬い食事を食べるためにほかの犬より遅く起きる。みな由緒ある古き「ティムベリオ」(*1)の血統で、パガーノは彼の家族から少し遅れて歩く。ティムベリオは片目が白内障だが、もう片方の目は冷静に生活を見ている。パガーノの犬家族は常にカプリでは最初に位を占めて来た。そして今、彼らの主人のひとりマンフレードが村の長になって以来、彼らは低い階級に向かってどのように維持するかを常に知っておく振る舞いの確保がなお強調された。彼らは自分たちと村役場の玄関屋根の下にいる進歩的な犬とで仲間を形成している。保守的な犬は進歩派が立候補した最新の選挙で敗れ、村長になったマンフレード・パガーノは教会に入る階段のそばにある広場のもう一方の側にいる敵対する少数派を一緒に集めた。時々彼らは教会の中を覗き、そして謙虚なローマ時代の収税吏のようにとても礼儀正しく扉のそばに座る。その間、教会の内陣で典礼の言葉が述べられるか、「マリアの娘たち」が半ば歌う声で連祷を詠唱する。

(原注*1)わたしがここで話すように書いているのは―イタリア語ではなくカプリの方言だ。島に11年住んだ老皇帝はここではティベリオ(ティベリウス)ではなく、「ティムベリオ」と呼ばれた。

 10時頃、猟師(*2)の2匹の犬、母と息子が姿を現わす。彼らはためらいなくドン・アントニオの葡萄酒店に真っすぐ向かう。彼らは島で生まれたが、イギリスの教育を受けた。それで羊の脚や薫製牛肉の一片の味を知っている。ドン・アントニオの犬もこれらの考えを持っている。ドン・アントニオがイギリスの蒸気船で給仕をしていた時から数世代後、まだ漠然としたイギリスの習慣が彼らの間に生き残っている。ドイツの犬はこの場所には絶対に入らない。ドン・アントニオに勝利するためのビスマルクの三国同盟への全努力にもかかわらず、彼らはそこではよく見かけられない。彼らの永続する本部はまだモルガーノの店「ツーム・ヒッジガイガイ」で、そこでは彼らが夜遅くまで吠え、キャンキャンと鳴くのを聞くことが出来る。

(原注*2)我々の友人、老いたG氏―15年間、カプリ広場の喜びと装飾は、いつも陽気で、いつも喉が渇き、大の鶉と葡萄酒の瓶の破壊者で、今やついにカプリの町の外れにある静かな小さな畑に休むために去った。そこでは物憂げな月桂樹と檜が彼の好む植物や葡萄の木の波打つ枝の間に立っている。老いた村長はまだ健在で、彼の惜しまれる主人についてすべてを語ってくれるだろう。

 朝は昼間の骨折りの準備として「甘美な無為」の静けさの中に過ぎる。彼らはここで昨日会って以来、めったに何事も起こらなかったし、新しい日の連続において彼らの動揺しない調和の現状は変化をほんのわずかも示さない。瞑想的静寂が彼らの顔に記されている。理想郷の平和が彼ら全体の存在を規定している。まだこの平和はヴェスヴィオスの斜面を遠くの水平線へと明るくする夏のように火山の上に浮かんでいる。ホテル・クィシサーナの毛むくじゃらの黒い番犬が接近し過ぎると、時々ティムベリオ・パガーノの広い胸の深みから雷が唸る。ふたりの競争相手の医者の四つ足の助手は、薬局の扉の両方の側に座って御茶目に相手に舌を突き出す。そしてしばしばドン・ニコリーノとドン・キキロ(新しい床屋)の犬はお互い充分に向かって行き、毛の房が飛び交う。しかし敵意はすぐに忘れられる。そして老皇帝の宮廷風呂の下方にさざ波がぶつかるように、時間は単調さを刻みながら来ては去る。
 彼らはエレクテイオン神殿の女像柱のように、平衡を保った頭上に強大な石灰石を載せたように大股で歩く時、女性を見つめる。彼らは停泊地の漁師が売るために夜に漁獲した金色のヒメジや大きなサバ、岩礁で採った色鮮やかなムール貝、あるいはおそらく海底で千年隠れていた場所から深いマグロ網によって引っかかった珊瑚の絡まる古代ローマのアンフォラ壺の入った籠を運ぶのを見る。
 時々彼らの行動への切望が目覚める。そして安定の前に広がる賑やかな生活を夢心地で見つめるためにアナカプリの道の角へとゆっくり広場を横切る。そこでは鞍が驢馬の出血した背中に載せられ、錆びた棒が痛む口に詰め込まれて、見知らぬ人の馬上行進がむずむずして待っている。「ああー! ああー! 前進!!」 行け、小さな驢馬たち、モンテ・ソラーロへの幸福な旅行者との1時間半の登山! そう、道は美しく、ギンバイカとエニシダに覆われた山腹にそって曲がりくねっている。眺めはどんどん広がる―「ああー! あああー!!」さらに登れば葡萄畑とオリーヴの森が足元深くに横たわり、頭上にはアルプスのヴィア・マラ渓谷と同じほど非常に荒れ果てた野生の急な崖がそびえている。そして断崖の縁にはバルバロッサの半ば崩れた城がしっかりと留められている。かすかな光の向こうに湾が海岸の不滅の美しさによって囲まれている。そしてポシリポの松のある頂点から島また島が地中海の青い隔たりに向かって浮かんでいる―「素晴らしい! 壮大な!!」

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by uuuzen | 2022-11-21 23:59 | ●本当の当たり本
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