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●アクセル・ムンテ著『記憶と頓狂』第10章「カプリでの政治的扇動」その3
テルの階下は耐えられなくなった。予定が立てられた部屋では愛国歌の練習が行なわれ、その間犠牲者の名前と長くたなびくリボンを取りつける旗と花輪の製造で忙しい場所となった。広場は優雅に飾られた。凱旋門が用意された―黒い厚紙の鷲が留められ、その嘴がくわえて掲げる白い貼り紙には大きな赤い文字で「歓迎」と書かれていた。旗持役と花輪はすべて広場に集まり、床屋で「放血医」のニコリーノさえ同盟を結んで巨大な旗が彼の店の前にはためいた。わたしは何をしていいかわからず、ついにティベリウスの邸宅へと散歩に出かけた―そこまで上がるとすべての出来事に対するわずかな平和の機会があるかもしれない。わたしに長い影が落ちるまで、片やナポリ湾、もう片方でサレルノ湾を眺めながら、断崖の端から遠く離れた好みの場所でどうにか横になる時間はあった。わたしは見上げ、愛国者がナポリに向かって望遠鏡でじっと見つめていることを知った。実際、湾に何か見えたが、靄が見えにくくした。突如彼は雄叫びを放ち、古い監視塔の頂上に居続けたに違いない別のふたりの監視者が姿を見せた。わたしはその時の眺めの意味が充分にわかった―それはナポリから帰って来る大きな「スコッパ(通信)」船だ。もちろんわたしは彼らが期待する蒸気船と思い込み、停泊地へと駆け出す間違いがあるかもしれないかすかな望みが常にあることを彼らにお世話にも言うことはなかった。しかし残念ながら彼らも正しく推測した。そして3人はわたしのそばの草に座り、サンドウィッチを頬張ってティベリウスを汚し始めた。わたしはそこを離れ、カプリに戻った。広場でわたしは友人Dと出会った。彼はどちらかと言えばよい気分ではなさそうに見えた。彼は停泊地に向かう途中で、わたしは同行した。停泊地に下りると、行事を前に差し当たって平和で静かであった。老人たちは網を繕いながら開け放った舟の家に座り、小さな男子たちは皇太子妃の到着のために普段以上の衣服を着ているようには見えず、波と戯れ、砂の中で赤銅色の体を転がしていた。ナポリの蒸気船を待つ桟橋は普段と同じ人混みで、少女たちは立って珊瑚や花、果物を売り、その背後には村へと上がる旅行の訪問者を期待し、彼らを運ぶ小さな驢馬たちが鞍を用意されて忍耐強く立っていた。我々は意識からドイツ人全員を消そうとしていた。わたしの友人アレッシオは手を目にかざしながら突然蒸気船を視界に入れた。それはナポリから普通の乗客を乗せる蒸気船ではなく、もっと大きくて速かった。わたしは腕時計を見た。やっと3時だ。わたしは少なくてももう1時間の遅延を望んだ。アレッシオは正しかった。普通ではない重く持ち上がった船が視界に入った。そして停泊地は湧き立ち始め、人々はすべての岸辺に流れ込んだ。全力で丘を駆け下る代表者が見えた。合唱団がそれにしたがい、最後に宮廷詩人がやって来た。彼は皇太子妃が訪問を1時間期待したことが明らかに我々と同じほどに不賛成であった。蒸気船は普通の船よりも確実に速く航行し、港から通常よりもっと遠いのに、さらに多くの海水を引いているように見えた。手近には厳粛なひと時があった。代表者は頭を商用旅行者に向けて戦陣の中の到着舞台に立った。我々は数人が梯子を下りて小舟に乗り入れるのを見た。その舟は急速に岸に向かった。「クランツの勝利を祝おう!」が今や実行され、彼らは舟が小さな岸壁に停泊する時にほとんど最初の一節を終えなかった。そして制服を着た男女ふたりが上陸の準備をした。彼らがそれをとても簡単だと証明するつもりであったと考えたのであれば、それは間違いだ―彼らはポツダムからの商用旅行者によってしばし静止させられた。彼は厳かかつ警告的に右手を彼らに向かって伸ばした。その間、左手はズボンのポケットから紙を引っ張り出した。わたしの皇太子妃に対する古き慈悲心はあらためて湧き起こったが、彼女のために何が出来たか? 逃避の全望みは最後にあった―「わたしはこの岩の岸辺に立っている!」―そちこちで突然沈黙があった。女性のひとりが笑いながら制服の男性に少し言うために前屈みになった。彼女は皇太子妃の従者である自分たちふたりが村への小旅行を懸念していることを静かに代表者に伝えた。その間、皇太子妃は船に残り、島の周りを航行するつもりであった。ちょうどその瞬間、我々は蒸気船が向きを変え、島の西側に進むのを見た。
 全く唖然とさせられた。代表者は戦争の最良の方針に関しての評議会を開いて追及されるべきだった。蒸気船は最終的にカプリが所有する唯一正しき桟橋の「大停泊地」に戻るために「イル・ギロ」(通常の島巡り)をして去ったのは明らかであった。一種の港は南側に「小停泊地」が存在するのは事実だが、それは廃れるままにされ、したがって村への道はとてもでこぼこしている。それゆえ彼らは蒸気船の戻りを彼らの居場所で待つことにした。1時間以上、ほとんどそのままであった。代表者は意気消沈しながらいくつかの向きを変える舟を見つめたが、詩人は礼装外套(カプリで礼装外套とシルクハットを着用する派手さ!)の終わりを怖れて立ち残っていた。そして彼は凍る危険を冒さなかったとあなたに言い得る。彼はそこで太陽の風呂に入っていたからだ。時間は長々と引きずったが、蒸気船の兆しは依然としてなかった。彼らはほとんど2時間待った。漁師は蒸気船が「小停泊地」に去ったことがわかる範囲のことを自分の目で観察した。というのは蒸気船から雑用舟が出発したちょうどその時に彼は漕ぎ去り、誰か船長船橋で彼に「小停泊地」では水深は何フィートを当てにすべきかを訊ねたからだ。代表者は蛾の毛虫に刺されたかのように飛び上がり、そしてカプリの道の埃の雲へと消えた。
 我々は停泊地をしばしうろついたが、ついには我々もカプリへと横道に逸れ、広い運搬道路ではなく、村からいくらか離れたアナカプリの道につながる古い小径を登った。そのようにして広場全体を避けた。
 夏の日のように暑かった。それで我々は背の高い草の中で休むために道端に横になった。我々は例外的に政治を語った。わたしの友人Dはアルザス人だ。彼は普仏戦争を経験した。そしてドイツに対してだけは優しかった。そしてわたしは自分自身の理由によってそうではなかった。我々は寛大な敵同士であったが、皇太子妃に対する申し訳なさでは同意した。しかしながら彼女はドイツ人かもしれない。
 それゆえわたしは商用旅行者との夜の冒険について話すようになった。誰にも聞こえず、詩人の出費に冗談のひとつふたつを言うことは出来た。わたしは我々が彼の詩を安全に操縦しようとしたことを思い出す。そしてそこで寝転んで笑って叫び、彼の未完成の霊感に数節を加えて作詩した。わたしの老犬は草の中でそばに横たわっていた。彼は我々の政治的な飛行には最善の様子でしたがったが、熱が文学的な探求に向かうと幾分無関心になり、同時にふたつの目を開けたままにすることに成功しなかった。我々の背後の古い石壁に絡まる蔦から素早く尾を振る小さな蜥蜴が日光で温まるために時々顔を覗かせていた。誰しもこのような小さな蜥蜴を見れば軽く口笛を吹くだろう。その時優雅な小さな動物は立ったままで音がどこから聞こえて来るのかを知るために明るい眼差しで不思議そうに周囲を見つめるだろう。彼女は輝く緑の胸の心臓の鼓動を見られることをとても驚くが、好奇心は強く、音楽をとても好む―そして古い石壁の中ではとても小さな音楽が聞こえる! あなたは彼女が隠れ場から姿を現わして注意深く聴くために落ち着く様子を見るには、ただただ全くの静けさを保たねばならない。かなり感情的な何かが彼女を最も喜ばせる。彼女はヴェルディが好きだ。そしてわたしはしばしば蜥蜴のために音楽会を開く時は『椿姫』で始める。わたしは音楽が大好きなのだ。そしておそらくそのことがこれら小さな音楽愛好者に親切であろうとする理由だ。その誰しもが小さなものを世話する心を持つことが出来る。優美な小蜥蜴の能力はわたしが理解出来る以上だ。彼らは蔦と日光と同じほどに古いイタリアの壁に属している。しかしアルベルゴ・パガーノにはドイツ人がいて、彼は蜥蜴の捕獲で歩き回ること以外、何もしない。彼はタバコの箱に彼らを閉じ込め、時々それをもうひとりのガリヴァーがリリパット小人国の囚われ人を見つめるかのように開く。我々、彼とわたしは致命的な敵だ。きっぱりとわたしは彼のタバコの箱を開けさせ、蜥蜴を全部自由にしてやった。

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by uuuzen | 2022-11-17 23:59 | ●本当の当たり本
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