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●『白沙村荘 橋本関雪記念館』その4
かも 鴨はつぶやき 揉めるかも 意見に異見 一見の価値」、「絶景に 絶句した後 絶叫す 返るこだまに 絶品思う」、「柿の葉の いと面白き 色模様 どれも枝から 落ちにけり」、「お互いに 老けたと気づき 口つぐむ 二十年ぶりに 思い出紡ぐ」
●『白沙村荘 橋本関雪記念館』その4_d0053294_00203348.jpg
今日の最初の画像は案内図に印刷される白沙村荘の平面図で、建物の色分けは公開か非公開を示す。中央の正方形の褐色は持仏堂で、昨日書いたようにこれは公開日が決まっている。平面図の西端に南北に二棟の美術館がある。入館口から入って庭園を時計回りに歩んだ最後はその二棟の展示物を見ることになる。そして北の美術館から出口に至るが、そこは駐車場になっている。平面図では美術館の西も空白の敷地になっている。これは林であろう。隣家との境の塀が丸見えでは興ざめするので、一万平米の半分弱はひとまず林としたのだろう。美術館は鉄筋コンクリート製で関雪が存命中には建設されなかったが、構想はあったかもしれない。その場所としてふさわしいのは庭園の西しかないが、もう20メートルほど西の敷地の西端でもよかったかもしれない。庭園を散策した後、この美術館が前に出現するのはやや圧迫感を覚えるからだ。それはともかく、2階のテラスは東向きにしかなく、案内図に説明されるようにそこからの眺めは東山を借景として「白沙村荘内随一の絶景スポット」と説明される。今日の最初の写真上は美術館の前からの眺め、下は美術館の玄関口、2枚目の写真はテラスから眼下の眺め、3枚目はテラスからの東山を臨み、2枚の写真とも上が左手(北側)、下が右手だ。美術館のすぐ近くに雑草を抜くなどの掃除中の中年女性がいた。また入館券売りの70代半ばの男性は他の人と交代したのか、筆者らが南の美術館から出た直後、美術館に来たところに出くわした。売店の若い女性と交代するためかもしれない。それはともかく、施設の人としては上記の3名しか見ておらず、入館者は人の目を気にせずに過ごせるのはいいが、これは悪戯されてもわかりにくいことでもあり、その点いささか気になる。というのは、浦上玉堂展の展示室、つまり今日の最初の写真下の出入口を入ってすぐ右手に椅子が2,3あり、そこに20代半ばのヤンキー風の女性が陣取っていて、やおら立ち上がって撮影出来ないはずの展示物をスマホで撮るかと思えば、戻って居眠りを始めるなどしていたからだ。筆者らが2階の展示を見てまたその場所に戻った時も相変わらず眠っていた。1300円の入館料で静かな場所で誰にも邪魔されずに過ごせると知っているのだろう。あるいは男と待ち合わせをしているのか。きわめて入館者が少なく、また施設側の監視の目がないからには、逢引きの場所としては最適といったところだろう。ともかく、こうした施設で場違いな者を見かけるのはあまり気分がよくない。
●『白沙村荘 橋本関雪記念館』その4_d0053294_00145157.jpg 二棟の美術館は南がⅠで、北はⅡと記され、ⅡはⅠの4分の1ほどの面積だ。二棟はつながらず、一旦外に出てⅡに入る。Ⅰは1階の数分の1が企画室で、残りの部分は収蔵庫であろうか。2階は小さな売店と大きな一部屋の展示室で、主に関雪の大作の下絵が数点展示されていた。Ⅱは2階のみの展示で、関雪の生涯を写真で説明していた。1階はたぶん収蔵庫ではないか。関雪の設計した庭に隣接して美術館を建てるのは関雪の画業を顕彰するのに必要なことだが、代表作はしかるべき場所に収まっていて、いわば関雪はそうした自作を売ることで庭園を得た。手元に昭和59年(1984)5月に見た生誕百年記念展の図録があって、そこに記される収蔵先を列挙すると6,7割が個人蔵で、他は所蔵数の多い順に足立美術館、兵庫出石の正福寺、木下美術館、山種美術館、京都市美術館、大阪市立美術館となっている。木下美術館は琵琶湖畔に昔あって、一度だけ訪れた。その後長らく閉鎖し、2008年に比叡平に新しく開館したことを今ネットで知った。関雪の絵は透明感があると昨日書いたが、竹内栖鳳に似た筆さばきの洒脱さが特徴で、猿や犬、馬を得意とし、鹿や猫、鳥もよく描いた。風景も人物にも印象深い作があり、また歴史画も好み、それらどの作にも関雪らしさがある。案内図の説明には代表作として「玄去猿」、「木蘭」、「唐犬図」、「南国」などとあるが、「木蘭」は「その1」の最初に掲げた入館券に印刷される作で、これは大正7年(1918)35歳で描いた六曲一双屏風の左曲第4扇の部分図だ。文展に無鑑査で出品し、特選となって永久無鑑査の推薦を得た。この作は説明がなければ今ではおそらく誰も意味がわからないだろう。図録の解説から引く。「『木蘭辞』という中国の古詩で有名な話にテーマを求めた作品である。木蘭は中国古代の孝女で、男装して父に代わって戦場に行き、12年たって故郷に帰って来た。だがその勇敢な戦いぶりを見て、誰も女性であることを見抜くものがなかったといわれる」大木の根元に座って目を閉じている木蘭を中心にする左曲に対し、右曲は白馬に乗る男性を描くが、その男性はもう一頭の白馬をそばにしたがえ、それは木蘭が乗っていたものだろう。両者とも刀を携えるので、木蘭は戦いが終わって故郷に戻ってすぐのところで、自分を知る者がいないさびしさに浸っている。2年後の帝展にも「木蘭詩」と題して出品しているところ、関雪が大いに画想を掻き立てられた詩であろう。関雪の女性観はわからないが、木蘭のような男勝りでしかも親思いの女性が好みであったか。関雪の女性像で有名な「防空壕」も代表作としてよいが、これは昭和17年の最晩年作で、インドネシアのきりりとした表情の女性を描く。その後日本も空襲に晒され、関雪は戦争が終わる間近に死ぬが、戦争の惨禍をどう思っていたであろう。「防空壕」に描かれる女性は強い意志がみなぎる。
●『白沙村荘 橋本関雪記念館』その4_d0053294_00153639.jpg この「防空壕」はその題名でなければ、南国のとある家から出ようとする市井の若い女性と思われるだろう。ところが「防空壕」と題することで敵機襲来を睨みつける逞しい女性になる。同じく意志の強い女性像として昭和19年の「香妃戒装」があり、白い唐犬とともに武装姿のウィグルの酋長の娘を描く。彼女は乾隆帝に求められて都に行くが、帝を受け入れずに縊死したとされる。日本がアメリカに戦争で負けても日本女性がアメリカ人になびかないことを願って描いたと想像するのは妄想のし過ぎか。現実は東京が焦土になった時、上流階級の女性にも米兵に易々と媚びを売る者があった。それはともかく、「防空壕」の女性は村上華岳の重文指定される「裸婦像」を思い起こさせる。同作は大正9年の作で、関雪はよく知っていたであろう。「木蘭」にやや似た作として記憶に鮮明にあるのは大正2年の「遅日」と題する六曲一双屏風だ。左曲に褐色の馬を引いて立つ横向きの中国古代の男性、右曲に白と黒の二頭の馬とともにたたずむかなり若い男性を描く。また右曲左端に花咲く藤の木の幹を置き、その花が二曲の天全体から垂れ下がる。この作を10年ほど前に再見し、その時の説明には絵絹の裏から全体に金箔を貼っているとあって、白地が全体に淡く輝いて見える理由に納得した。「遅日」から藤を除き、人物ひとりに馬三頭を描く六曲一双の「進馬図」は昭和8年の作で、同じく中国を画題にしつつ「遅日」より簡単に仕上げた手抜き感がある。それはともかく、人の背丈ほどの六曲一双屏風の大画面となれば、馬を描くのに最も適していると考えたのだろう。その点、大正3年の六曲一双屏風「南国」は中国に取材して描いた船乗りたちを描き、前年の「遅日」の静に対して賑やかな動を描き、同一人物の作とは思えない。色彩豊かで今村紫紅の画風に似る。ちなみに紫紅は関雪より3年早く生まれ、29年早く死んだ。関雪は舟が好きであったのか、「月下帰帆」や「姑蘇春色」など、中国の帆船を描く作があるが、それは冨田渓仙にも言える。「唐犬図」は二曲一双屏風で、顔の長い大型犬三頭に右曲右端に赤い牡丹を添える。関雪の動物画は後の山口華楊に影響を与えたであろう。「玄猿」は昭和8年の作で、下絵が美術館Ⅰに展示されていた。他の下絵として大正7年の「鉄拐先生」がテラス側の柱に展示され、一部が破れていた。ガラス入りではなく、まさか鑑賞者が触れたためではないだろう。「玄猿」の生誕百年展図録の説明から引く。「文部省買い上げとなった関雪生涯の代表作である。この作品を契機として、関雪晩年の動物画の世界が展開されることとなる。晩年の10年、……さまざまな動物の名品を描いた。四条派の写生から入り、中国の文人の世界にあこがれ、新南画と呼ばれる南画を多く描いて来た関雪は、晩年、再び写生による動物画の世界に回帰したのであった。この「玄猿」がその回帰点である」
●『白沙村荘 橋本関雪記念館』その4_d0053294_00151868.jpg

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by uuuzen | 2022-10-09 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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