「
佃煮に 梅干あれば 茶漬けかな これよりほかに 美味な食なし」、「見わたせば 思い浮かぶは よき人の 吾を見つめる 笑みの声のみ」、「つくづくと 猛暑歎きて 寝転べば つくつくぼうし 裏庭で鳴き」 、「半額の 八つ割り西瓜 二分して 妻と食べれば 蝉時雨止み」

22日の夕方、スーパーに行くのに外に出ると、隣家の玄関脇に勝手に育っている南天の葉に蝉の抜け殻がくっついていることに気づいた。それで家内に鋏を持って来させ、枝を切った。隣家は筆者の所有で、植木の世話をせねばならないが、ほぼ放置している。その南天は5本ほど集まって高さ3メートルほどに伸びていて、あまりに勢いがいいので家内は半分ほどの高さに剪定しろとうるさい。去年は思い切ってそうしたが、いつの間にかまた背が高くなっている。
この南天に2年前に目白が巣を作ったことがある。また営巣してくれないものかと思い、なるべく剪定しないようにしている。蝉の抜け殻はそれら固まった南天の葉のうち、最も外側の端にあって、羽化した蝉は飛び立ちやすかったが、それは鳥に狙われやすい場所でもある。不思議なことは、南天は地面のアスファルトを突き破って生えているので、蝉はどの地中から出て南天の葉の端まで移動したかだ。南天の背後は狭い植え込みで、そこには柊が植わっている。その根元の周囲に砂利を敷き詰めているので、そこから蝉の幼虫が這い上がったことは考えにくい。おそらく南天の根元のごくわずかな土の部分から出て来て、南天の細い木を高さ2メートルほど上ったのだろう。「風風の湯」の常連である85Mさんの奧さんと筆者の家内は親しく、風呂の中でよく話をするが、奧さんは家の近くでよく見つける蛙や蝉などが大好きで、見つけてはよく自宅に持ち帰る。筆者はそのことを聞いていたので、南天の葉の蝉の抜け殻を奧さんにあげてはと家内に言った。昨夜家内は今日の最初の写真の南天の葉を大きな袋に入れて「風風の湯」に持参した。奧さんは蝉の抜け柄を集めているらしく、家内から受け取った途端、「これはクマゼミだわ。じっくり見れば雌雄の違いがわかるわよ。家の前の木なら、殻から出て来るところを観察出来ればよかったのにね 」と言ったそうだ。蝉の抜け柄は珍しくない。わが家の裏庭の合歓木には蝉が群がり、今はつくつくぼうしがたまに鳴くが、家内は蝉の鳴き声は近所迷惑だと言う。付近のどの家にも大きな木はなく、蝉は山だけのものになりつつある。筆者が85Mさんに見せたかったのは、今日の題名の歌のように、南天の木から蝉が飛び立ったことだ。蝉は短い命が前途多難であることを知っている。せめて南天すなわち難を転ずる思いを抱いたとして、葉を3枚かき寄せてしがみつくのは愉快ではないか。ましてや前述のように目白が育った木だ。南天の葉の蝉の抜け殻は吉祥画題にもなりそうで縁起がいい。それを85Mさんご夫婦に分け与えたかったのだ。

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