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●西国街道、その24
嗟には てっさは出ぬと 達されて ちっさつっさと 意味不咄咄」、「ちっさくて つっささる棘 抜けばよし 吹けば飛ぶこと 気にせず生きろ」、「いきらずに 淡々木切る 与作かな 言葉遊びの 余作切らさず」、「変な顔 しても元から 変な顔 ひょっとこ仮面 脱いでひょっとこ」



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今日は「その22」の地図で示したCからDまで。阪神香櫨園駅から西宮市大谷記念美術館への道のりはこれまで40年以上、同じ道を利用して来た。駅前から阪神高速の下をくぐると、最初の東西の道の西200メートルほどに同美術館はある。その道が最短距離と思う。また住宅街の中を通るので閑静でよい。芦屋の超高級化はないものの、近鉄の山本駅近くの住宅地に似て、落ち着いた家が建ち並ぶ。さて7月21日は同館で展覧会を見るのに、ひとつ大阪寄りの西宮駅で下車したので家内は訝った。初めての施設に行くのかと思ったようだが、西宮神社を過ぎて西国街道を西に進むにつれて事情を理解した。ところがいつもは阪神高速の下をくぐるのに、筆者は香櫨園駅前を真っすぐに進んだ。西宮神社近くでは左手に阪神高速が間近にあったのに、今度は右手に阪神の高架が続く。地図からわかるように、この地域は国道2号線、阪神電鉄、阪神高速が並行し、歩いても眺めのよさはない。ただし筆者は高架沿いの道路の眺めには慣れている。大阪で生まれ育った家のすぐ近くに近鉄の高架があり、それを思い出すからだ。以前書いたことがあるが、鶴橋と今里の間、今里駅寄りの近鉄の高架沿い下の道路際に、筆者が小学生の頃、木造の小さな掘っ建て小屋があった。秋田犬の小屋と言ってよいほど小さく、夕方にその前を通ると、夫婦と少年が中にいた。電球が灯っていたのか蝋燭かは記憶にない。夫婦のどちらにも似た少年で、親子ともども人から見られても笑顔であった。母子家庭のわが家も貧しかったが、夫婦が揃っているのになぜそんなホームレス同然の暮らしをしているのか筆者は不思議に思ったかと言えば、そうではない。夫婦は悪いことをする人には全く見えないが、いかにも知能が足りないようであったからだ。知能が劣る者は貧しい生活は当然と言いたいのではない。子どもを抱えてのホームレス同然の暮らしは、いかに昭和30年代前半の日本では貧困が珍しくなく、6畳一間のアパートに6,7人が暮らす家族もあったとしても、やはり異様な光景であった。子どもはどんどん大きくなり、小学生の半ばくらいになった時、その家族は民生委員か区役所の生活保護課か何かの支援によって近くのアパートに入居したことを風の便りで聞いた。そして少年は相変わらずの笑顔であったが逞しくなって、筆者は一、二度話す機会があった。その後の少年は知らないが、生活力があるように見えたので、たぶん両親のようにはなっていない。人生はわからないものだ。極貧の中から大成功者が出て来るし、金持ちが没落することも珍しくない。
●西国街道、その24_d0053294_01062135.jpg
 鉄道の高架を見ると先の一家と、そして近鉄のガード下に暮らしていたYさん一家を思い出す。その家族が筆者の母とどういう経緯で知り合ったのか筆者は母から聞いたが、忘れた。その一家は両親に息子と娘がいて、みんな人がよかった。よすぎたと言ってよい。それで人生の成功と呼ばれることに興味がなく、その日暮らしで満足していた。筆者が建設設計会社に勤務していた頃、毎年春に家族を花見に招待する券がもらえた。筆者は興味がなく、その日はいつも家内と別の場所にデートに出かけたが、せっかく会社からもらった食事券つきの宝塚ファミリーランドの入場券はもったいない。それである年、それら一式を母に頼んでYさん一家に届けてもらった。Yさん家族はとても喜んだ。中学生の娘さんは宝塚劇場を初めて観劇し、大感激したことを数年経って耳にした。というのは筆者一家は八尾に転居したからだ。Yさんの奧さんはこう言ったそうだ。「あの時、こーちゃんからもらった招待券で娘を宝塚に初めて連れて行くと、この世とは思われへん女性たちのきれいな劇を見て娘はいっぺんにファンになり、それからは夢中で小遣いをためて通うようになったんや。」娘さんがどのように成長したのか、その後Yさん一家はガード下の家から脱出したのでわからない。中学生の貧しい娘さんがいきなり華やかな舞台を見て驚愕したのは無理もない。筆者が無料招待券をわたさなければその娘さんの人生は違ったものになったかもしれない。多感な中学生が芸能の世界に魅せられることは教育上あまりよくないとの意見があろうが、夢中になれるものがあるのは幸福だ。ついでに思い出した。Yさんのご主人は近大を中退して土木の設計の孫請け会社のようなところに一時期勤務していた。ある日、酒に酔ったYさんはわが家を訪れ、中学2,3年生の筆者に頭を下げて訊ねた。法面の面積を計算するのに、数式がわからないと言うのだ。電卓がまだない時代のことだ。Yさんは平方根の開き方や二次方程式を知らず、筆者は驚いた。曲りなりとも近大を入ったのに中学で習う数学がわからず、社会での応用が利かない。筆者はていねいに説明したが、途中でYさんは頭を抱え、そして筆者は「頭がきれることをあまり自慢したらあかんで」とたしなめられた。Yさんは自分を恥じるあまりそういう言葉を発したのかもしれないが、数学を要する仕事の世界でそれがわからないでは使いものにならない。ましてや中学で習うことだ。誰にも聞くことが出来ず、参考書を探せず、それで酒に酔った勢いでわが家に来たのだ。おそらくYさんはすぐにくびになったであろう。奧さんは常に陽気で優しかった。一家はどうにか逞しくその後も生きていると思う。知性を要する生き方に無縁であっても、人間は出来ることをすればよく、またそれしか出来ず、自ずと身の丈に合った世界を泳いで行く。
●西国街道、その24_d0053294_01064061.jpg
 今日の最初の写真は西国街道をひたすら西に進み、右手にそろそろ香櫨園駅が見える頃の上り坂で撮った。坂になっているのは夙川があるからだ。2枚目の写真は夙川に架かる橋の少し手前だ。この2枚の写真は撮影位置が近い。なぜ二度撮ったかと言えば、長年筆者は橋の向こうから撮影位置を振り返って来たからだ。40数年ぶりに見つめていた場所に立ち、振り返っていた場所を見通した。つまり過去の自分の姿を写真に重ねて見る思いがする。他者には全くどうでもいいことだが、筆者には思い入れがある。もちろん感激というほどのことではない。どうでもいい気がかりと言えば言語矛盾だが、そういうちょっとした気がかりは誰にでもあるだろう。たとえば、この文章を読む人が筆者と直接話したいと思ったとして、何らかの方法でそれがかなったとする。それは感激と呼べる感情を引き起こさず、「まあだいたい予想どおり」という気持ちを抱かせるに相違ない。つまり地図のC地点の香櫨園駅前に立って東側を見続けいて、ある日その東側から駅前に向かった時の感じと同じで、ちょっとした気がかりがひとつ減るだけのことだ。開高健もそう思ったので、一緒に酒を飲みたいと手紙を送って来るファンとは絶対に会わなかった。3枚目の写真は大谷記念美術館へ行く「ホテルUS」脇の地下道をくぐらず、駅前を西に少し進んだところで、右手に阪神電車の高架が見える。家内は地下道を筆者がくぐらないことにまた予想が覆され、立腹度は10段階の8か9にはなったはずだ。それでも家内の顔を見ず、どんどん先に進む。家内はだいたい2,30メートル後ろを歩くが、途中で筆者が何かに気を取られて立ち止まっていると、家内はさっさと前進し、筆者の2,30メートル先まで行く。今日の4枚目の写真は左端に児童が横断するのに手にする黄色の旗があり、近くに小学校があることがわかる。それは大谷記念美術館の東側にあるもののはずで、筆者はこの写真を撮ったDの場所から左に折れた。実はそれまでも左に折れる、つまり南下する道はあったが、通い慣れたおおよその距離感で、4枚目の写真地点が最も同美術館に近いと判断した。その思いは正しかった。左に折れて少し行くと頭上は阪神高速、その下にも大きな道路があって、かなり古びた横断歩道橋があった。それを利用するしか南にわたれず、信号を利用すると美術館から遠くなる。横断歩道橋は筆者ら以外に姿はなく、夜であれば怖い。歩道橋を越えて地面に降りると、人は住んでいるが間口の大きい殺風景な家が道路際にあった。頭上に阪神高速、目の前に車線の多い道路で、環境はよくない。筆者なら住みたくないが、Yさん一家のガード下の暗さよりは格段によい。地図のFが美術館で、同館での展覧会を見た後、同じD地点に戻り、そしてさらに西に歩いた。そのことは同展の感想を書いた後に綴る。
●西国街道、その24_d0053294_01065616.jpg

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by uuuzen | 2022-08-14 23:59 | ●新・嵐山だより
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