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●京都堀川丸太町「大粒の泪」にて、「CV-GATE 京都」豊永亮、宮本隆、竹内圭(三者共演)
きの 仮面をつけた 案山子見て 笑う母抱く 幼子泣きて」、「沈黙に 音のあること 知る人の 味わう生に 音楽ありや」、「勝敗の なき闘いの 儀式かな ジャズのコンボの フリーの振る舞い」、「何事も 生の出会いに しくはなし 感動求め 危険避けたし」



●京都堀川丸太町「大粒の泪」にて、「CV-GATE 京都」豊永亮、宮本隆、竹内圭(三者共演)_d0053294_22050800.jpg
11日のライヴ、最後は「豊永亮、宮本隆、竹内圭」の共演で順に「ギター、ベース、ドラムス」の担当だ。演奏前に金森さんの紹介で宮本さんと顔合わせが出来た。筆者は演奏を聴くのは3人とも初めてで、当夜出演の4組では最も長い30分の1曲を目の当たりにして興奮した。これまでライヴハウスで見たどの演奏よりも刺激的で、全員京都在住かどうか知らないが、ニューヨークの前衛ジャズに全く劣らない。ところで、先月末ジーナ・パーキンスの曲を取り上げた際、彼女のアルバム『ガラスの三角形』について触れた。ジーナのそれまでのアルバムとは違って全曲即興演奏で、最初の曲「パースウェイジョン」の冒頭では女性が二、三度気合の掛け声を入れる。同アルバムのジーナのエレクトリック・ハープ、デンマークの女性サックス奏者メッテ・ラスムッセン、そしてアメリカの男性ドラマーのリャン・ソウヤーの3人は初の顔合わせだろう。ジーナは作曲家で楽譜を書いて他人に演奏させることからソロ演奏、あるいは『ガラス…』のように即興専門のミュージシャンと組むことも多く、才能の全貌は捉え難い。『ガラス…』のジャケット写真は彫刻作品の借用だが、彼女が使用するエレクトリック・ハープと同じ形で、同アルバムの奏者3人の関係と相似を成している。3人は終始関係し合い、どの曲も鋭角を感じさせ、わずかな弛緩で割れてしまうガラスの脆さを持っている。それゆえにガラス彫刻の美しさがあり、ジーナはそのことも念頭に置いている。筆者は一度聴いて同作に驚愕した。ジーナの目論見は見事に聴き手に伝わり、即興演奏でしか成し得ない醍醐味を確認させる。それは3人とも真剣さを持続し、他のふたりの演奏を聴きながら瞬時に次の音をどう奏でるかを本能で判断し続けるからだが、3人とも個性を発揮するには独自の楽器の奏法つまり言葉を持たねばならない。その言葉は各人の文法として確立されたもので、それゆえ特徴を持ち、言葉の壁を超えている。3人の共演は各人の話し方の個性の絡み合いであり、聴き手はそれを楽しむが、真剣さ、言い換えれば緊張感を持続するには時間的な限度がある。奏者も聴き手も同じ人間であるから、だいたいそれは30分が限度であろう。『ガラスの三角形』はそれほど長い曲は収めず、またどの曲も主題のない3人の即興であるから、ある程度似た雰囲気になるが、演奏前にある程度テンポや激しさの度合いを言い交して先に済ました演奏とは違うことを目指し、全曲はおおまかには似てもどの曲も違うという、それこそ1枚のアルバムにまとめるにふさわしい多様性を確保する。
●京都堀川丸太町「大粒の泪」にて、「CV-GATE 京都」豊永亮、宮本隆、竹内圭(三者共演)_d0053294_22052379.jpg ジーナのアルバムについて長々と書いたのは、豊永、宮本、竹内の3人の共演にも同じ音楽性への意図を感じるからだ。音楽による三者の語り合いは卑近なことにたとえると酒場での談笑だ。それを傍で聞いて楽しいかどうかだが、TVでは有名人にそうした雑談を数時間させ、その録画を後に放送出来ない場面や間延びした場面をカットし、数分の一の長さに編集して番組として放送する。客を前にしたライヴ演奏ではそういうカットが出来ない分、より真剣にならざるを得ない一発勝負だ。もちろんどのライヴもそうだが、楽譜がない分、メンバー間の応酬でどのように音楽が展開するかは予想がつかない。ある程度決めていても、客の反応も左右して、やはり一発勝負の度合いは強い。当然演奏のまとまりがつかず、あるいはどこで終えていいかわからずに延々と間延びする即興演奏も多い。即興演奏は出鱈目に見えて楽譜どおりに演奏する以上に、真剣さ、気迫が必要だ。聴き手はそれを目の当たりにすることを楽しみ、その意味では全編即興は真の意味で「音楽」と言ってよい。これは音楽本来の特質である「一期一会」を体現し、聴き手はその場にいて奏者と同じ時間を共有したことで、その過ぎ去った特別な時間を生涯鮮明に記憶する。その意味で儀式的であり、奏者の潔さから人生の最も重要な何かを噛み締める縁になる。潔さというのは、人生あるいは日々と同じ言ってもいいが、全く同じ演奏は不可能であるという再現性の拒否を信奉するためで、一度限りに燃焼し尽くし、それ以外に何も求めないという、音楽の神への奉仕が感じられることだ。どのライヴ・ミュージシャンにもその思いはあるはずで、それでわずかな客でも眼前にいてほしいと思う。あるいは客がおらずに前述のように酒場の仲間うちの談笑的演奏もあろうが、もちろん弛緩を含む談笑ではなく、真面目、真剣に各人の培って来た楽器をこなす独自の語法で音楽的対話に没入する。そこに聴き手は張り詰めた気迫を感得することで凝縮された濃密な時間を堪能するが、各人の語法の吟味、評価は聴き手が知る音楽の知識に照らされるから、聴き終わった後の演奏の独自性の総合的評価は当然のことながら各人によって異なり、たとえば気迫は満点でも部分的にはどこかで耳にしたことのあるリズムやメロディが気になったという意見も出て来る。そこに即興演奏もさまざまで、たとえば実験音楽を標榜する作品でも底の浅さが見え透くことがある。それは他の芸術と違って音楽の宿命と言うことも出来る。花火は一瞬で燃え尽きて美しさを多くの人に伝えるから美しいのであって、ネオンのようにいつも同じ形で輝いているのであれば誰も見向かない。音楽は花火であって、その度合いを強めれば再現不能の即興に行き着く。ただしそれは人生のアナロジーでもあって、即興の音楽は人生そのものを最もわかりやすく表現している。
 先に酒場の談笑と書いたが、3人同時による抽象画の共作とたとえるほうがよい。3人ともソロ・パートはなく、全員が最初から最後までソロだ。筆者は宮本さんのベースに特に注目した。彼が繰り出すリフが多様であるのは当然として、ブルース・コードの断片ないし変形をいくつも用意し、それらをランダムに連ねる、あるいは時に本人の予想のつかないメロディが混じることもあるのだろうが、自家薬籠中の奏法の豊富さに瞠目した。言い換えれば筆者がこれまで目の当たりにしたベーシストでは最高の腕前だ。ベースとドラムは通常はバンドの「基礎」であるから、同じリズムのうえで豊富なリフがつなげられて行くのは当然だが、それのみでは「伴奏」に埋没する。当夜の演奏で言えばギターの音色の豊富さに引けと取るとの意味だが、筆者にはそうは聞こえなかった。3人はそれぞれ三角形の頂点にいて互角にわたり合い、どれが伴奏ということはない。ギターはエフェクターを使わなくてもたとえばボトルネック奏法があり、当夜のように弦に何かを挟み込むなどして音色を変えることが出来る。その点ベースは持ち得る駒が少ないが、当夜はごく一部にルーパーが使用され、その音の多重効果の多彩さは印象的であった。30分に及ぶ曲となると、そういう変化による山場的場面は欠かせない。音楽は始まりがあれば終わりが必ずあるので「起」と「結」はさして問題でなく、「承」と「転」をどうすべきかに集約出来るが、3人による30分の演奏ではおおよそその転換場面は共有しやすいだろう。ただし物語で重要な「承」と「転」は即興演奏でも予想を裏切る鮮やかさで提示してこそ全体が逸品になり得る。明確な主題を伴なう古典的なジャズであれば、主題後にソロ、そして主題に回帰して演奏を終えるという決まりがあり、そういう音楽はある意味ではどれも退屈で時代遅れになった感が芽生えたので、たとえば主題と明確にわかるものを排していきなり即興という音楽が登場して来たが、「承」や「転」も不要とされ、それが却って潔いという観念が支配的になることは『ガラスの三角形』からもわかる。さて当夜の3人がニューヨークで演奏するとして、観客は日本的な何かを期待する、あるいはあえて認めようとするだろう。3人は日本で生活するからには意識せずとも日本的感性は身につき、拒否してもそれが演奏に滲み出る、つまり他力本願的に考えるか、意識して日本的なものが何であるかを追求して語法の個性を磨くという自力本願に立つのか、それが彼らの音楽にどう立ち現われているかは筆者にはわからない。ジーナはユダヤ人でそのアイデンティティを忘れず、一方で女性重視の立場を取っている。そんな彼女と共演するとして、日本の男性はどういう思想、語法で立ち迎えるか。今日の写真も2枚掲げる。ギターの豊永さんは終始坊主頭の横顔しか見えなかった。彼のギターは凄まじく、技巧に舌を巻いた。
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by uuuzen | 2022-06-25 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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