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●『ZAPPA/ERIE』その3
生葉の ごときはがきの 交わし合い 五分と五分の 相思相愛」、 「振り向いて くれぬと愚痴を 独り言 すぐに打ち消し 面影は笑み」、 「若いほど 値打ちがあると 言う人の 顔の小皺は 醜く見えし」、「老いました 負いも増しては 追いは無理 甥に託せば おーいと言われて」



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昨日書き忘れたことをまず。ディスク1は「インカ・ロード」が聴きもので、ジョージ・デュークのヴォーカルからザッパのギター・ソロの間、右チャンネルから聞こえるチェスター・トンプソンが正確に繰り返すカウベルによるリズムのリフがとてもよい。この曲はその後長年演奏され、ギター・ソロのみを切り取ったヴァージョンも含めて特に発表頻度が高い。それらの中でも最初期に相当する本ヴァージョンはラウンジ・バーの雰囲気があってきわめて珍しい。『オン・ステージ第2集』のヘルシンキでのライヴでの本曲は、本作のヴァージョンより速度が5割は増したような手慣れた演奏だ。それをザッパは75年6月に最初にレコード化して『ワン・サイズ・フィッツ・オール』に収めるが、本作ヴァージョンから4か月後にひとまず理想的な形に仕上がったと言える。「その1」に書いたように、レコードに採用するヴァージョンは何度も人前で演奏した果てに得られるとの考えだ。とはいえ、ザッパの音楽の楽しみは曲が変貌して行く過程を見ることにもあって、本作ヴァージョンはそれなりの捨て難さがある。ところがザッパはラウンジの雰囲気を楽しむような演奏にこだわらず、本曲をギター・ソロの腕前を錬磨するのに最適な場とみなした。前述のように、そのことは本曲のギター・ソロをほとんど本曲とはわからない域まで変貌させて行くからで、そのことを知るファンはYouTubeで本曲のギター・ソロだけを数時間もつなぎ合わせて投稿している。さて次に「その1」に書いたことを訂正しておく。本作のボーナス・トラックは本作が収録するエリーでの3つの公演の全貌の一部の録音が悪いために差し替えられたものではない。今日はディスク3と4を聴いたが、ディスク3冒頭にボーナスとして2曲が置かれる。それはザッパが1975年にエンジニアのケリー・マクナブとともに4トラックを2チャンネル化したテープで、そのマスター・テープはインディアナ州サウスベンドのノートルダム大学で74年5月12日に録音された。ディスク1,2の録音から4か後だ。ジョー・トラヴァースは同日と『ロキシー・アンド・エルスウェア』のジャケット裏面に書かれる前日の11日に演奏されたシカゴでの録音の全貌を、いずれ「母の日」に発売すると予告している。74年から50周年は今から2年後で、2024年5月に4枚組CDとして発売されるだろう。本作のディスク3冒頭2曲はその予告編で、おそらく2年後には4トラックのマスター・テープから新たにミキシングが行なわれて別の音の広がりを見せることになる。
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 ジョー曰く、「マザーズ結成10周年ツアー」の全貌がテープで残されたのは本作ディスク1,2と上記のシカゴとサウスベンドの2会場で全部だ。これをザッパ・ファンが少ないと見るかまた同じような演奏を発売するのかと考えるかで熱意の差があると言えそうだが、販売価格に大きく負う問題で、CD4枚組で今度は2万5000円ほどになる可能性もある。話を少し戻すと、ディスク3,4の11月12日はとても寒く雪が降った。ザッパは風邪を引いたままステージに上がり、そのことは声から即座にわかる。鼻をつまんだような、また幾分高い声で、自分が「sick」であることを歌詞に引っかけて何度か言う。それよりも特筆すべきことは観客が前に進み過ぎてザッパが演奏を中断することだ。それはディスク4の最初の曲「満足出来ない」でまず現われる。ザッパは客が目立った動きをしたことに対して鋭いストップの声をかけるがメンバーは演奏を続ける。やがてザッパは観客に冷静になってもっと下がるように言い続け、その間バンドは音を落としてリフを奏で続ける。その時のジョージ・デュークとナポレオンの声の掛け合いはさすがのプロで、バンドとザッパ、そして観客の様子が手に取るようにわかって生々しい。リフが長らく続いた後、ザッパは演奏をついに止めさせる。解説によれば前のほうの席は総立ちになり、後ろの客が見えないと騒いだことによる。係員らの指示にしたがって客が定位置に戻った後、ザッパは「満足出来ない」を最初から演奏し直さず、トム・ファウラーは「モンタナ」のイントロにつながるベース・ラインをやおら奏で始め、気をよくしたザッパは同曲を演奏し始める。ところがこの曲の後半でまた客は騒ぎ、ザッパは注意する。この経験のためにザッパはエリーでの会場を使うことを好まなくなり、近隣の別の都市で演奏するようになる。エリーはジョーの生まれ故郷で、彼が最初に同地で見たザッパのステージは本作のディスク5,6の76年で、当時8歳、父親に連れられてのことだ。彼は5歳からロック・コンサートを見ていて、ザッパの魅力を発見したのは10歳、つまり1978年で、その頃はザッパはもうエリーで演奏しなかった。ジョーは1968年生まれの計算で、2年後は56歳となってまだ余裕でザッパの新譜を企画し、順次発売出来るが、筆者のような高齢者はよほど長生きしなければザッパのテープ収蔵庫の音源のすべての発売を見届けられない。それはともかく、ジョーの解説の途中に1枚のポラロイド写真の裏表が掲載される。ファンに近寄るなと制止しているザッパの姿で、裏面下にザッパのサインがある。これはジョーの母親がガレージセールやリサイクル・ショップ巡りの趣味で見つけたもので、エリーで76年に撮影されたものだろう。ジョーはこの写真を入手し得た幸運に感謝しつつ、本作の解説でぜひとも使うことを思い続けていた。
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 ディスク3,4はマリンバ、パーカッションのルース・アンダーウッドが加わり、逆に5人減って6人編成となった。音質を懸念したが、大音量で聴くとディスク1,2に劣らない。曲のだぶりは少なく、半年後の同じ都市での演奏をしっかりと想定している。これはファンへの奉仕以前に自己模倣を嫌って革新を確信し続けるからだ。ルースが入ったためにレパートリーは変わり、また13分半に及ぶ「黄色い雪を食べるな」は彼女のマリンバの小刻みな連打がスリリングで印象深い。ディスク3の最後の「ダイナモ・ハム」はフェイドアウトで終わり、ディスク4の冒頭とつながっていない。マスター・テープが全曲を録音しなかったためか。「ダイナモ・ハム」と「満足出来ない」の間に別の曲が演奏されたことはあり得る。これはファンジンのツアー記録を見ればわかるが、面倒臭いので今は繙かない。ともかくディスク2枚では余裕があり過ぎで、それでディスク3の頭にボーナス曲をふたつ収めたのだろう。「ダイナモ・ハム」の中間部で鼻声のザッパは、本来は観客をステージに上げるところが、場所柄、また観客の制御は無理で、席に着いたまま騒ぐことを求める。ディスク4の最後は「オー・ノー」、「オレンジ州の息子」、「さらに日々トラブル」で、半年前の演奏であるディスク2と比べると面白い。ザッパが客に語っているように、ディスク4の演奏時には新作の2枚組LP『ロキシー…』が世に出ていた。客は半年前に聴いた曲を『ロキシー…』で知り、さらにまた目の前で演奏される機会を得た。面白いというは「オレンジ州の息子」のギター・ソロだ。「その1」で冒頭4小節を残りの部分と異なる会場の録音を使ったと書いた。それほどにザッパは冒頭の4小節が気に入ったが、ディスク4ではそのメロディをほとんど踏襲している。ところが残りのソロはもっと短くされ、『ロキシー…』とは全然雰囲気が違う。「さらに日々トラブル」はメンバーが4人減ったこともあって隙間の多い音になることは仕方がなさそうだが、そのようには聞こえない。ザッパにとってホーン・セクションは贅沢で、ツイン・ドラムスもルースのパーカッションで代用可能と思ったのだろう。ルースはマリンバ以外に銅鑼も効果的に使い、『ロキシー…』のスタジオでのオーヴァーダブを想起させる音の厚みをもたらしている。「さらに日々トラブル」でディスク4が締めくくられたことは、客の動きを制止したザッパにすればうまく符合した選曲となった。観客の動きひとつで命を落としかねない経験を71年12月に経験したザッパだが、演奏の中断は80年代半ばになっても各地で生じた。もっとも、解説によれば風邪を引いて鼻声のザッパに前に座る女性客はTシャツを放り投げ、それを受け取ったザッパは洟をかんで返したそうだ。京都公演でも前のほうの席はしばらく総立ちになったが、ステージに駆け上ろうとする輩はいなかった。
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by uuuzen | 2022-06-19 23:59 | ●ザッパ新譜紹介など
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