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●『ZAPPA/ERIE』その2
属を しても自由は ありにけり 誰もが神の 意志で生かされ」、「いかす人 裕次郎だと 言う人に いかす人なし 幼き吾知る」、「人様に 届けるものに 誠意込め 金の値打ちを 超えさせたしと」、「侮ると 人は気づくや 薄ぺらさ 真面目で楽し 人に人寄り」



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今日はディスク3,4を聴く時間がなく、昨日に続いてディスク1,2について書く。『ロキシー・アンド・エルスウェア』はマザーズ結成10周年記念盤の謳い文句が日本盤LPにあった。1974年9月の発売で、本作『エリー』のディスク3,4枚目の11月12日、ギャノン講堂での演奏段階で観客は同作を知っていた。そこで気になるのは5月から半年の間にザッパが新曲をどれほど用意したかだ。ところがディスク4,5はメンバーが10人から6人に減り、演奏された曲の大部分は5月と同じだ。7、8月の2か月は『ロキシー…』の編集と次のツアーのための企画に費やされたが、デビュー10周年を迎えてザッパの胸に去来する思いはどのようなものであったろう。ひとつはツアーのレパートリーに古いオリジナル曲を含めることで、その一端は『ロキシー…』で紹介された。ただしごく一部に留まった。本作のディスク1の最後の曲「デュプリーの天国」は、続きがディスク2の最初に置かれ、合計36分の演奏だが、同曲の後、ザッパは古い自作アルバムの名前を列挙し、そこから演奏することを言う。その後ディスク2の最後の1曲を除いて切れ目なしで演奏されるのが、16曲から成る「フリーク・アウト・メドレー」だ。『ロキシー…』の謳い文句の全貌が本作で公にされ、この点が本作の最大の価値と言える。もちろんデビュー・アルバムの2枚組LP『フリーク・アウト』の曲ばかりではなく、メドレー最後の「オレンジ州の木材運搬トラック」、「オー・ノー」、「オレンジ州の息子」、「さらに日々トラブル」の4曲は『いたち野郎』からだが、それらの曲も含めて結成時のマザーズのレパートリーだ。その選曲は回顧趣味と言うよりも、盛衰が甚だしい音楽業界にあって10年も人気を保って生き抜いて来たとの感慨と、初心忘れるべからずと自戒の意味を込めたためであろう。結成時と10年後の74年とで最大の変化は黒人のメンバーが増えたことだ。特にヴォーカルのナポレオン・マーフィ・ブロックとキーボードのジョージ・デュークの存在は大きい。黒人メンバーを雇えば当然ブルース曲をレパートリーにする。本作でその代表はディスク1冒頭の「コズミック・デブリ」だ。ゆったりとしたテンポで、霊感商法など他人の心の隙間を狙う詐欺師とのやり取りをザッパが歌う。管楽器のリフが耳新しく、中間部のソロはナポレオンのサックス、ドン・プレストンのキーボード、次のハーモニカはジェフ・シモンズだろう。続いてジョージ・デュークのキーボード、最後がザッパのギター・ソロで、ザッパのみブルースの12小節循環を1回多い3回を担当する。
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 上記16曲のメドレーから『ロキシー…』は2曲のみ収録した。同じ焼き直しでもアレンジがより黒人っぽくなったことと、「オレンジ州の息子」のギター・ソロが『ロキシー…』を代表すると考えたからだろう。同作には他にもギター・ソロをたっぷり聴かせる曲はあるが、即興でありつつ楽譜上で作曲されたかのような綿密性があるのは「オレンジ州の息子」で、テープを切りつないで不自然さを全く感じさせない技術にはただただ舌を巻く。ザッパのソロのみであれば素人でも編集出来そうな気がするが、バックの9人の演奏を小節の終わりで切って別の小節の頭につなぐのであるから、必ず不自然さが露わになると思うが、それこそが素人考えなのだろう。「さらに日々トラブル」は『フリーク・アウト』でザッパが歌った最初のヴァージョンとは様相を一変し、時代の好みを見据えた臨機応変さがうかがえる一方、世間では相変らず毎日新たなトラブルが起こり続けていて、そのことに思いを馳せるためだろう。「フリーク・アウト・メドレー」はナポレオンが歌い、日本公演でもそれらから選曲されたが、メンバーのソロを順に含む長大なブルースやジャズ調の曲ばかりでは2時間にも及ぶコンサートの起伏が乏しくなる。そして新曲を優先的に収めるアルバムでは最も新曲にふさわしい先の2曲が『ロキシー…』に収められた。アメリカの大西さんが先日YouTubeでマザーズの68年8月のシェーファー・フェスティヴァルでのライヴ演奏が投稿されていることを知らせてくれた。大西さんは当時の演奏がもっと聴きたいとのことだが、ザッパは『自伝』でオリジナル・マザーズの演奏レベルを否定している。それはオリジナルのマザーズすなわちヴァ―ヴ時代が素晴らしく、オリジナル・メンバーの解散後はさほどでもないとの世評に反発してのことだろう。ひとつ言えるのは、オリジナル・マザーズよりもよりポップになったことだ。これは売れ行きを考えることで、ファンへの迎合の度合いが目立つことだが、『自伝』に書かれるようにジャズの大御所がランチ代に困るほどの貧困具合を目の当たりにし、実験音楽路線から方向転換する必要を思ったからだ。筆者はシェーファー・フェスティヴァルでの演奏を聴いてジミー・カール・ブラックの特徴的なドラミングに懐かしさを感じはするものの、全体は間延びして退屈を覚える。当時ザッパはドラマーを2名雇っていた時期もあり、そのことは『ロキシー…』期に再現したが、カウベルの使用など、音色の工夫などオリジナル・マザーズにはない多彩さがある。またゆったりとした落ち着きがなくなり、追いかけられるような忙しさが演奏に露わになったが、それは時代の空気を読んでのことで、また演奏技術の優れたメンバーをザッパは欲した。それはザッパがより独善的に振るまえることを意味し、本作のタイトルも『ZAPPA/ERIE』だ。
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 実験音楽は前衛と目され、その分野で知る人ぞ知る有名ミュージシャンは数多く存在する。彼らは一時期に他のメンバーと組んでツアーし、そこで毎夜同じ曲を同じように型どおり演奏することに飽きてまた即興演奏のみの活動に進んだ例がある。その毎夜同じ曲を同じように演奏する代表はたとえばビートルズで、それで彼らは67年にはスタジオにこもり切ってアルバム作りへと方向転換した。オリジナルのマザーズがツアーで毎夜異なる実験音楽を演奏したかどうかだが、それは聴き手によって判断が異なる。つまり実験音楽家を標榜するミュージシャンが毎夜違う演奏をすると主張しても、いくつかのパターンはあるはずだ。同じ人物であるからにはそれは当然で、そのことで個性を持ち得る。つまり実験音楽家がごくわずかなファンに持ち上げられて神格化されることは、それはそれだけのことで、本人もファンも納得していればそれでよい。ただしそこには貧相さが漂う。ザッパが3000や4000人の観客の前で演奏する時、熱烈なザッパ・ファンはおそらく100分の1だろう。それは実験音楽家のファンの数と大差ないはずで、結局のところ真摯な音楽活動を続けると熱心な固定ファンは得られ、その数は実験音楽も大衆音楽もそう差はないと思う。ザッパは73年からより大衆的になった。大ヒット曲があったからだが、そのことによってなおのこと大観衆向きの音楽を作曲することに方向を変えた。と言いたいところだが、結成10周年記念でメンバーをすっかり変えながらも古い曲を1時間近くも演奏するのであるから、元々実験音楽家を目指さず、デビュー時から思いは一貫していた。それは実験音楽も前衛もポップスも、ブルースやジャズ、ロックも含める考えで、アメリカ音楽の多様性をひとまとめにしようとの思いがあったと言える。ただしアメリカで顕著であった芸術のミニマリズムには否定的で、そこにザッパの個性を解くひとつのヒントが隠されているだろう。何を言いたいかと言えば人種問題だが、ミニマル音楽を牽引したのがユダヤ系であると言い切れるかどうかについては筆者はわからない。またザッパがユダヤ系についてどう思っていたかはたとえばマネージャーのハーブ・コーエンと75年に金銭問題で関係を断ち、以後長年の訴訟問題に携わることがある。ビートルズのブライアン・エプスタインを例にしてもユダヤ人の金儲けのうまさは定評があるが、筆者はそこにTZADIKレーベルを運営するジョン・ゾーンの手腕を見る。彼は実験音楽のきわめて狭い隙間に進出して粘り強くニューヨークの音楽家の紹介に努めているが、それはザッパが死んだ後に目立って来た音楽の流れでもある。ジョン・ゾーンがザッパの音楽についてオリジナル・マザーズ期のみを評価するのは、一般には実験音楽に見られながらそれなりにファンを獲得したからだ。つまりその意味でもザッパは先駆者であった。
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by uuuzen | 2022-06-18 23:59 | ●ザッパ新譜紹介など
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