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●『包むを彩る ふろしきデザインの美』
国の 固有の文化 やがて消え 大樹の陰の 草となりつつ」、「軽き人 古さ嫌いて 飛びつくは 命短き バッタもんなり」、「風呂敷で 包んで贈る 風呂敷は 壁の飾りに したき絵のあり」、「紙袋 ブランドものは 高く売れ 目立ちたがりの 大風呂敷や」



●『包むを彩る ふろしきデザインの美』_d0053294_14024497.jpg 4月6日に平野神社の満開の桜を見に出かけた際、少し足を延ばして堂本印象美術館で始まった本展を訪れるつもりであった。ところが平野神社から北野天満宮に南下し、バス停から岡崎に向かった。泉屋博古館と国立近代美術館で展覧会を見るためで、前者は時間と気力がなく、後者の『京の大家と知られざる大坂画壇 サロン! 雅と俗』だけを見た。つまり4月6日に見られなかった展覧会がふたつあって、泉屋博古館での『旅スル絵画 住友コレクションの文人画』は先月14日に家内と出かけ、堂本印象美術館での本展は先月25日にようやく見た。これはふたつとも京都市内での開催であるからで、大阪や神戸で開催される展覧会はよほど珍しい内容でなければ出かける気力がない。そう言えば明日まで開催の大阪市立美術館での中国美術の展示は面白そうだと思っていたが、同館のホームページで同館の所蔵作品がほとんどであることがわかったので興味が失せた。ここ四半世紀は面白い展覧会は東京でのみ開催され、一極集中が甚だしい。展覧会は大勢の人が見なければ赤字になるのでそれは仕方のないことだが、一方では京阪神は東京から見れば芸術度、文化度がひどく劣るとみなされていることの表われで、それを大阪が率先して実行している。京都は財政赤字がもうすぐ1兆円に届く勢いで、美術展を熱心に開催するどころではなく、京都市美術館も一企業に名前を売るほどだ。この状態で東京に大地震が起これば、日本の美術品は大きな被害を受け、美術文化復興には長年を要することになるが、どうせすぐにまた東京は復興し、今度は世界一の3000万人都市を目指す。日本には東京だけがあればよく、他の地域は中国に売り渡してもいいではないかと京阪神の政治家は言い出すだろう。日本が属国になったところで、政治家は自分たちだけが豪勢な暮らしが出来ればそれでよく、日本文化をさっさと捨てて中国服を着る。そうなっても誰も困らないではないか。それどころか、日本の古さを脱ぎ捨てて、世界最先端の文化を担う中国風を真似ることが何よりもの格好よさという時代は日本にはすぐにでも来る。話を戻すと、泉屋博古館は近年東京に別館が出来て京都優位の地位はなくなった。京都にしかないものは有名な社寺のみで、大阪にしかないものは粉もんと下品で醜悪きわまるお笑いのみで、これでは東京から鼻であしらわれるのは当然だ。お笑い芸人もほとんど東京にお辞儀して売り出してもらおうとし、大阪でしか得られないものは何もないと言ってよい。それで大阪画壇を紹介する展覧会を関西が企画するが、東京は全然興味がない。
●『包むを彩る ふろしきデザインの美』_d0053294_13490659.jpg
 大阪画壇については半世紀以上前からごく稀に展覧会が企画されるだけで、誰もまともに評価しない。もちろん京都は特にそうで、大阪と京都は隣り合っているにもかかわらず、全く別の国と言ってよいほどあらゆる点で異なっている。結局また2,30年後に大阪画壇展を大阪や京都で開催するが、人気の少ない文化は消えて行くしかない。冗談抜きで今後はお笑いでも何でもまず有名になってから絵画に手を染める人物が持ち上げられ、そういう作品を美術館が喜んで開催することになり、すでにその兆候はいくつも例がある。時代が大きく変わって筆者のような古い人間の価値感は無に帰すが、国宝や重文指定された美術品がある限りは古い人間の価値感は保たれて行くかと言えば、それもどうなるかわかったものではない。国宝、重文がすべて厳重に管理され、いつでも文化庁が声をかければ展覧会に出陳出来るかと言えばそうではなく、所在不明品があれば、売り出されるものもある。国家が買い取ればいいという意見はそんなに多くないはずで、国宝、重文級の作品を国は年間わずか数十ほど買い取り、その全費用はバスキアの絵画の数分の一だ。簡単に言えば国宝1点につき2億円ほどで、驚くほどの高値では全くない。桁がふたつほど少なく、海外の大金持ちが買っておいて損はないと群がってあたりまえで、そうして外国に流出して初めて価値を知り、何百、いや何万倍もの金額で買い戻すという馬鹿なことをして来ているのが日本だ。一方では100兆円以上の使途不明金がコロナ禍であったとされ、日本は全く文化国家ではなく、火事場泥棒国家と言うにふさわしい。そのような状態であれば、ささやかな税金を使って開催するあまりにささやかな展覧会に却って面白いものがあり、今や日本では廃れた文化の一端が見える。ようやく本論。本展は日本画家が原画を描いた風呂敷展で、着眼がよい。京都ならではの展覧会で、繊維関係の会社が潤っていた時代があってのことだ。風呂敷や袱紗を扱う問屋が有名画家に依頼した原画と、それを元にした風呂敷を併せて展示する企画で、会場ではパネルでその問屋の紹介がなされていた。チラシには名前は伏せられているが、作品目録には「宮井株式会社」とあって今も経営している。展示された風呂敷はすべて化繊で、高崎市タワー美術館所属とされる。昭和時代のオリジナルではなく、2015年の再生産品だ。原画を所蔵する宮井が当時の風呂敷を所蔵していないことは不思議だが、商品は消耗品扱いであったためか。原画さえあればいつでもまた製作出来るとの考えもあったのだろう。消耗品なのでオリジナルの風呂敷はほとんど残っていないだろうが、ネット・オークションで気長に探せば手に入るかもしれない。小さく畳める風呂敷は絵画のように嵩張らず、有名作家の原画を元にしたものならほしい人は多くいるだろう。
●『包むを彩る ふろしきデザインの美』_d0053294_13492294.jpg
 本展に関心があった理由は、筆者は工房勤務時代に親会社の呉服問屋の社長から風呂敷の原画を依頼されたからだ。90センチ角の紙に原寸大で辻が花風の牡丹唐草風の文様を墨、桃、黄土、水色の4色で描き、木綿を使って数種の地色違いの製品になった。原画を元にスクリーン型を起こした捺染工場の職人の腕に舌を巻き、もっといい図案を描けばよかったと思ったものだが、市販されず、関係する小売り呉服店に配布されただけで、筆者はごく一部に染め難のある失敗品を2,3点もらい、そのうち赤煉瓦地色の1点が手元にある。反物を包むのに最適で、染色工場や仕立て屋などに行く際、今なお使っている。それ以外に風呂敷を使うことはほとんどないが、とても便利なもので、また自分が原画を描いたとなると愛着もある。紺や抹茶色の別地色のものも手元にあればと思うが、一時は大量にあっても数年のうちに手に入らなくなることは多い。本展で展示された風呂敷もオリジナルは宮井に残されておらず、市中から探し出す手段もない。原画を描いた画家たちはそういうことがわかっていたかもしれない。風呂敷は包み方法がたくさんあって、本展ではそれらの10通りほどが現物で紹介されていたが、どのように包まれても柄がほどよく見えるという制約があっての原画で、画家にはデザインの才能が求められる。絵画として成立し、しかも積極的に使いたくなる色合いは言うまでもないが、色数が増えるほどに高額になるので、色数を極限に減らして大胆さを主張するのがよい。さらに季節感を盛るほうが、風呂敷製造会社としては売り上げにつながり、洋画家よりは日本画家に依頼することになる。今日の最初の写真はカーネーションとリボンをデザインし、桃色と紺の二色染め、原画は東山魁夷だ。2枚目の写真はチラシ裏面からで、上段左から右へと順に福田平八郎、堂本印象、山口蓬春、望月春江、加藤栄三、池田遙邨だ。他に前田青邨、小合友之助、山口華楊、棟方志功、松尾敏夫、上村松篁、中村貞以の原画が展示された。ほかに宮井が所蔵する額装の日本画も展示され、いずれも小品ながら作家の個性をよく示す楽しいものばかりであった。日本画は今後も描き続けられるが、現代絵画を意識し、風呂敷などの用の美に適する絵を描きたいと思う者はほとんどいないだろう。風呂敷はなくなることはないが、往年の人気を取り戻すこともないはずで、包み隠さずに言えば、日本の巧みに包む文化はもう継承され難い。汚れると洗濯すればよく、繊維の風合いがそのまま保たれ、色落ちもほとんどない風呂敷は日本の優れた文化であったのに、今やTシャツに顔料をインクジェットプリントする時代で、そのごわつき、べたつく風合いの悪さは問題にされなくなった。何とも無粋な時代だが、それをそう思わない文化度の低い人間が増えたからには仕方がない。おっと、包み隠さずに言うことは無粋と取られる。
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by uuuzen | 2022-06-04 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
●神社の造形―北野天満宮の文子... >> << ●『第5回 野外彫刻展』

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