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●『プロヴァンスの贈りもの』
には きゅうり似合うや 酒のあて 目下トマトで ウォッカを染めて」、「プリン体 気にして飲まぬ ビールかな しょっちゅう飲むは 焼酎限る」、「コルク栓 抜くのが嫌で ワイン避け 度数の高き ウォッカに特化」、「高粱酒 60度飲み 胃を洗う コロナ殺して 吾転がされ」



●『プロヴァンスの贈りもの』_d0053294_11021576.jpgヴァレリア・ブルーニ=テデスキが出る映画を順に見て行くことにしているが、今日は以前紹介した『ミュンヘン』の次に出演した2006年の作品を紹介する。とはいえ『ミュンヘン』と同様、予想通りのチョイ役だ。映るのは30秒に満たないだろう。本作の原題は『A GOOD YEAR』だ。これでは内容がよくわからない。そこで邦題が独自に考え出されたが、映画を観終わった後の思いでは原題は含蓄があってよい。単数形で示されていることも何となく意味深い。その点については後述する。筆者はヴァレリアに関心があって、本作の他の俳優や監督には興味がなく、本作を観終わった後でもそうだ。フランスの南東部、地中海に面したプロヴァンス地方の葡萄畑とそれを所有する屋敷が舞台で、その美しさが描かれる。対になるのが主人公の男性マックスが勤務するロンドンの証券会社だ。ガラスと鉄で出来た灰色の建物群やその内部の無機質さが強調される。田舎と街の対比で、前者は金儲けとは関係のないのんびりとした暮らし、後者は金こそすべての世界だ。マックスは後者の生活に疑問を持たず、仕事では優秀な成績を上げている。それは一瞬で億単位の金を失うか儲けるというスリルに満ちた生活で、映画の最初のほうにそのことが描かれる。そこで連想したのはアメリカ映画『ウォール街』だ。今年1月、その映画がTVで放送され、気乗りしないままに半分ほど見た。予想どおりの展開で、証券会社で優秀な上司に就いた若い主人公は、金儲けに専念する世界の裏側を知り、最後は上司から離れて別の仕事に就く。印象的であったのは、主人公の若いその男性が恋愛関係になる女性が、以前金のために彼の上司の愛人になったことだ。つまり女は金でどうにでもなり、その金はインサイダー取引で莫大に稼げるという現実を主人公の男性が知って幻滅する。資本主義社会では誰よりも金を多く持った者が成功者だ。それには株の売買が一番手っ取り早いと考えられる。筆者は株に全く興味がないので、『ウォール街』の結末はあたりまえに思えた。本作にしてもそうだ。ところが手に職のない人は大勢いて、彼らは金が金を生む投機の世界に参入し、ロジェ・カイヨワが分類する「賭け」の遊びを生活の手段とする。賭けは勝つとは限らず、その心配は精神を歪めると思うが、筆者は株のことを終日考える生活は絶対にしたいとは思わない。このことで書きたいことがあるが、別の機会に譲る。ともかく、金儲けだけが目的の生活を筆者は意味があるとは思わない。結論から言えば本作はマックスの精神の変貌を通じてそのことを描く。
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 マックスは40代半ばか、独身で、トレーダーとしてきわめて優秀だ。筆者は株について無知なので本作の最初のほうのマックスの行動と周囲の仲間の反応をよく理解出来ないが、「空売り」という言葉が使われる。これは先物取引で用いられるようだが、マックスは度胸があり、読みが深く、運や勘に恵まれているのだろう。映画の最後のほうでは会社の頭取のナイジェル卿から相棒としての契約を結ぶか、退職金をもらって辞めるかの選択を迫られる。その理由はマックスが一時的に叔父の遺産の整理にプロヴァンスに行き、数か月間休職になったからで、マックスの不在中、会社は大変な目に遭った。また結末を書くと、マックスの秘書の女性はマックスとは恋愛関係にはないが、マックスが会社を辞めると決めた時、映画では直接には描かれないものの、やはり辞職して別の世界に行く。そのことがエピローグとしてごくわずかに描写され、その場面も筆者にはよくわからない。ヒップホップ系の白人と黒人の若い男性が登場し、彼らを売り出す仕事をするのか、とにかく全然違う仕事に携わる。そこで思うのはイギリスでは好きに生きて、案外簡単に仕事を辞めることだ。それは日本でも変わらないだろうが、日本がそのひとつの会社にこだわらなくなったのは20年ほど前からではないだろうか。ナイジェル卿はマックスに相棒となるか退社するかの二者択一を1時間で示せと迫る。マックスの秘書はナイジェル卿が53年要して手に入れた地位をマックスは返事ひとつで得られるし、そうすれば一生安泰だと意見する。ところがマックスは提案を断り、叔父の残したプロヴァンスの屋敷に戻る。金より大事なものを見つけたからだ。その点だけを見れば、誰でもマックスのような幸福はあるということになる。だがマックスは両親を早く亡くし、葡萄畑を世話してワイン造りに一生費やした叔父の、価格に換算しれば500万ドルもの遺産があるうえ、証券会社を辞めた退職金も莫大だろう。そういう恵まれた人物は珍しい。それでほとんど人はクビにならないようにびくびくしながら勤務し続ける。そのような人からすれば本作は夢物語で、あり得ない現実に鼻白むだろう。ましてやマックスは今は地元でレストランに勤務している幼馴染の女性と暮らす提案が受け入れられ、厳しい金儲けの世界から解放される。誰でもそのようなゆったりと時間が流れる生活を送りたいと思うが、それは金があってのことだ。だがマックスは生まれ育った場所に戻るので、本作は物語としてはそれなりの説得力はある。日本では都会で定年まで働き、退職金で田舎暮らしをする人がいる。そして田舎に馴染めずに生活が破綻する例も少なくないが、マックスは何もかも手に入れ、後腐れなくロンドンの金融世界から田舎暮らしに戻る。そのことを決めた年が「A GOOD YEAR」かと言えば、WIKIPEDIAによればよいワインが出来た年のことを指す。
 ここでまたチェーホフの小説について書いておく。「すぐり」という短編だ。田舎で生まれ育った兄弟の物語で、兄が死んだ弟について語る。弟は長じて都会で暮らし、田舎が忘れられない。そして田舎に土地つきの家を買うために貯金に励む。年上の醜い女と結婚するが、彼女は3年ほどで亡くなり、彼女の遺産が貯金に加わる。そうしてよくやく小川沿いの庭つきの家を買い、庭には念願のすぐりの木を30本植えるが、川は上流の工場から汚染水が流れて濁り、兄は理想の家とはとても思えない。弟は長年かかってようやく自力で家をかまえ、兄を招待する。その夜、弟はすぐりの実を食卓に出すが、兄はその酸っぱい実をほしいとは思わない。深夜、台所から音がするので兄が起きてそこに行くと、弟は残ったすぐりの実を食べていた。この小説は小市民が一生かけて手に入れられる夢の限界とその酸っぱさを描いている。チェーホフらしい厭世主義だが小説としてはとても鮮烈で、同様の人生は現在でも無数に繰り返されている。翻って本作のマックスはトレーダーとして成功し、その後の生活でも薔薇色が保障されている描き方だ。ただしマックスの同僚は、ロンドンで暮らし慣れたマックスがプロヴァンスの田舎をすぐに飽きると意見する。その可能性もあるが、そうならないかもしれない。マックスはファニーに一目惚れし、ファニーもマックスを受け入れるが、お互い長じて忘れていたが、ふたりは10歳頃からの知り合いで、マックスはそのことを思い出す。マックスは元いた場所に戻るのであって、ロンドンの暮らしに戻ることはないだろう。そう思わせるのは本作に悪役が登場しないからでもある。叔父が雇っていた葡萄栽培の夫婦や、また女好きであった叔父がアメリカに旅行し、ワイナリーで知り合った女性に産ませたクリスティ、それにファニー、みんな善人だ。20代の美しいクリスティは叔父が死んで間もなくマックスの前に現われる。マックスは彼女が遺産目当てのやって来たかと思うが、彼女は叔父と自分の母が写る白黒写真を1枚持参していて、マックスはたまたまそれを見る。同じ写真はマックスも持っているのだ。それでマックスは弁護士に相談に行く。その弁護士をヴァレリア・ブリーニ=テデスキが演じる。彼女はマックスにフランスでの遺産受け取りについてクリスティにも権利があることを告げる。ところが叔父は遺言を残さなかった。その理由をマックスは葡萄栽培の男性から聞かされる。簡単に言えばロンドンに行って故郷や葡萄栽培、ワイン造りに何の関心もない甥に失望していたからだ。マックスは叔父の財産を少しでも高額に売れればいいと考え、葡萄の品質を専門家に調査させるが、ワインはとても飲めたものではなく、土の質も最悪だと言われる。そうなればますます売却することに気が向くが、葡萄栽培の夫婦を失業させないために彼らを引き続き雇用する条件を含む売却とする。
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 マックスは叔父に育てられ、小切手のサインを叔父に代わってしたり、ワインの味を小さな頃から教え込まれたりした。叔父のワイン貯蔵庫には二種のワインがあって、もっぱら飲むものとは別に埃を被った一塊の古いワインが眠っていた。80年代半ばに仕込まれたもので、マックスはその1本をたまたま持ってファニーのレストランに行く。ファニーはラベルを見るなり驚く。「こんな高価なワイン、わたしを口説く気?」と言われてマックスはきょとんとするが、ファニーは説明する。そのワインはガレージ・ワインあるいはブティック・ワインと呼ばれ、ごく少数しか製造されず、市場に出回らない。「COIN PERDU(コワン・ペルデュ)」という名前で、ネットで調べると同じラベルのものは5000円程度で買えるようだ。ともかくマックスは叔父のワイン造りの才能を過小評価していたことを知り、それも叔父の遺産を売らなかった理由だ。しかもマックスは叔父の遺言書を偽造する。クリスティがワインの勉強をしていて、彼女から叔父の夢であった葡萄畑や屋敷を換金してしまうことを責められたからだ。マックスは叔父になり代わって彼女に遺言の手紙を書き、最後に昔習った叔父のサインを書く。一旦列車に乗ってプロヴァンスを去っていたクリスティはその手紙を車内で開き、屋敷に舞い戻る。そしてマックスに「緑のインクが減っていたので買い足しておいたわよ」と言う。マックスが遺言を偽造したことを知ってのことだ。このようにマックスは新たな人脈を手に入れ、後半生が満ち足りていることが暗示される。それはプロヴァンスという土地のせいでもあるだろう。冷たく天候の優れない日の多いロンドンとは違い、陽光溢れる地域だ。まるでプロヴァンス観光を薦める映画で、フランスのワインを宣伝する意図もあったのではないか。またクリスティが屋敷の窓からの眺めを見てマックスに「まるでセザンヌ」と言うように、美術好きならよくわかることも盛られる。だがセザンヌよりもゴッホが重要な要素として使われる。ゴッホがプロヴァンスのアルルに行ったことは説明するまでもない。ゴッホはプロヴァンスで糸杉に感銘を受け、しばしばそれを描いた。本作でも糸杉は登場するが、もっと重要なことはゴッホの名画「夜のプロヴァンスの田舎道」が小道具として使われることだ。まずそれはファニーの店でポスターとして飾られている。絵の下部に「PROVENCE」の文字が入っている。こういうポスターをプロヴァンス地方では実際に作っているかもしれない。映画の終わり近く、ナイジェル卿がマックスを呼んで部屋で話す時、壁にはいくつかの絵が飾られている。その1枚が「夜のプロヴァンスの田舎道」だ。マックスはその絵のことをナイジェル卿に言うと、「本物は金庫に仕舞ってあって、それは模写だ。だがそれでも20万ドルはする」と答える。
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 マックスは「いつ本物を見るのですか」と訊き返す。それはマックスが本物の生活をするために退職してプロヴァンスへ帰ることを確信しての言葉だ。場面が変わってファニーの店にマックスがいる。ファニーは壁のポスターが油絵に代わっていることに気づく。映画では説明はないが、それはマックスが卿から退職の際にもらったものだ。ここでひとつ疑問が湧く。その絵はポスターよりはるかにましだが、20万ドルはするものの本物ではない。もちろん本物は天文学的な価格で、市場に出るはずはない。出れば確実に何百億円もしてマックスには買えない。それで模写でも印刷よりはましということなのだろう。ただしマックスとファニーの今後の人生が模写ということになれば、ふたりが幸福であり続けることの隠喩としてふさわしくない。そのことはさておき、面白いのはヴァレリア・ブルーニ=テデスキとゴッホのつながりが本作で出来ていることだ。彼女が「夜のプロヴァンスの田舎道」を含むオランダのクレラー=ミュラー美術館のゴッホの絵画群を紹介している映画のDVDを筆者はすでに購入しているが、本作でチョイ役ながらも彼女の女優人生の「概念継続」が見られる。そのことをもう少し言えば、マックスがナイジェル卿と社内で話す時、ロダンの「永遠の青春」の縮小サイズのブロンズ像が映り、マックスはその表面を指でなぞる。ヴァレリアは以前紹介した映画『不完全なふたり』でロダン美術館を訪れた。また『ミュンヘン』では彼女はフランスの田舎で多くの人と共同生活する場面で登場した。その田舎はプロヴァンスとしてもいいだろう。となればその点でもヴァレリアは彼女なりにつながりのある映画に出演している。プロヴァンスはイタリアと接し、北イタリア生まれのヴァレリアが実際にプロヴァンスに住んでもおかしくない。彼女は本作当時42歳で、それなりの雰囲気と貫禄で本作に登場し、筆者は『ミュンヘン』と同様、強い印象を受けた。そのためファニーやクリスティに魅力を感じないほどだ。本作の舞台はフランスであるので、登場人物がフランス語を話すかと言えば、ロンドンで働くマックスは英語を話す。ファニーは地元で生まれ育ってフランス語を話すべきが、やはり英語を話す点で違和感を抱いたが、観終わった後に調べると本作はアメリカ映画だ。それで全編英語だが、マックスが詩をファニーに語る場面ではフランス語でその英訳が字幕として表示される。ヴァレリアも英語で話したはずだが、声が小さくてほとんど聞き取れなかった。女性は40歳を超えると映画では主役になり難いのかどうか、おそらくヴァレリアが監督を務める以外は本作以降の作品もチョイ役ではないだろうか。これは蛇足だが、今日の彼女の2枚の写真をパソコンのデスクトップにサムネイル表示させると、筆者は自分の顔かと思った。遠目に似ているのだ。家内もやはり筆者に見えると言う。
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by uuuzen | 2022-05-03 23:59 | ●その他の映画など
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