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●神社の造形―平野神社の桜、その3
蕉さん 場所を選ばず 句をひねり 時代を超えて その名知られり」、「芭蕉さん 下の句省き かぶき者 短歌短縮 啖呵超切り」、「下の世話 我慢を重ね 慣れはせず 介護尊き 問う時いずれ」、「魁の 桜迎えし 平野社や 紋の最中も 味な形や」



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紅白の幔幕で囲まれた有料の桜の園は東と西北角に出入り口があって、筆者らは東から入って西北から出た。今日の4枚の写真は園を出て撮ったもので、順に掲げる。最初の写真は右端に幔幕が見える。つまり写真の右端から出て来て西を向いて撮った。正面の鳥居は昔から色がやや浅く、それがまたよい。写真はその大鳥居の裏側で、鳥居の奧は北野天満宮の北辺に当たり、毎月25日の縁日は古道具屋や古着屋が店を連ねる。2枚目の写真は180度回って撮った。左端の枝垂れ桜は魁桜(さきがけさくら)と呼ばれるもので、京都市内ではどこよりも早く咲くと言われている。中央に見えるのは中門で、左右に短い回廊がついている。魁桜の手前、つまり2枚目の写真の左端から外れたところに木造の平屋の建物があり、その出入り口に立て看板がひとつあって、看板には桜の花の形をしたピンク色の最中の写真を大きく撮ったポスターが貼ってあった。建物の中ではそれを売っていたのだが、筆者は入らなかった。ポスターの写真を撮らなかったことを後悔しているが、それは最中の実際の大きさはわからないものの、形があまりに見事な五弁であったからだ。木型を作った職人の腕がよいのは当然として、最中の皮を完璧に焼く職人の技も素晴らしい。そのように焼けたものを撮影したと言えばそれまでだが、さすがの京都と言うべきだろう。最中を買おうと思って家内に中に入って値段を確認させると、1個300円で小さいと言う。それで買わなかった。毎年桜の満開頃に京都の和菓子屋がその最中を販売するのだろう。一度は買わねばならない。WIKIPEDIAによればその最中は平野神社の神紋をそっくり象ったもので、それを最中にして食べさせるのは神様に対して失礼と思うが、売り上げの幾分かは神社への浄財になるはずで、みんながよければそれでよい。またポスターのその最中の写真のピンク色は派手気味で、平安朝を想起させるにはもっと淡い色がよい。ただしそれでは今の若い人には歓迎されないだろう。それでコチニールの染料を多めに使ってピンクを強調している。ただし実際の最中を筆者は見ておらず、ポスターの写真は目立つように彩度を強調しているかもしれない。たぶんそうだろう。また気になるのは最中の餡だ。これが大豆ではなく、白小豆を使ってやはりコチニールで色づけした桜色であればなおいいが、さてどうだろう。また1個だけくださいとは言えず、さりとて10個となると3000円で、二の足を踏む。家内は小さいと言ったが、その言葉で筆者が思ったのは直径4センチほどだ。実際はもっと大きくて食べ応えがあるかもしれず、それなら300円は妥当だろう。
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 ともかく先にスーパーのイートインで寿司を慌てて食べた直後でもあり、最中を食べたい気は起らなかった。2枚目の写真に戻ると、わかりにくいが中門の奧に真新しい銅色の照りが見える。これは新しく建てられた仮の本殿だ。平野神社は4,5年前の台風で拝殿がぺしゃんこになった。柱が折れて屋根を支えられなかったのだ。筆者はそのひどい様子をTVで見て以来の訪れで、今日の3枚目の写真のように、中門左手に仮殿完成の説明写真が貼られていた。右端の文章は「本殿の檜皮屋根葺き替え工事事業のため工事に先立って本殿の御神体は十一月四日に斎行しました。仮殿遷座祭をもちまして仮殿に御移りされました。」とあって、その下に仮殿の全景写真がある。台風で本殿は倒壊しなかったが、屋根の檜皮が剥がれる被害があったのだろう。明日の写真で示すように、本殿の工事はまだ終わっておらず、工事用の覆いが視界を妨げていた。とても古い歴史がある神社で、平安遷都の際、奈良から遷座したそうだが、拝殿の再建費用は訪れる一般人の賽銭のみでは足りないはずで、どこかが大口を負担したのだろう。京都に宮大工がいるお陰で元どおりになるのであって、伝統技術は伝えて行かねばならない。平野神社はどこかの国から核爆弾が落とされない限り、現状とほとんど変わらず今後も存在するが、一方の門前の民家は半世紀程度で建物の流行が激しく変わり、神社の社殿との差はますます大きくなる。そこで筆者はたとえば江戸時代にこの神社の門前の民家の様子を想像するが、人間が住む家はいわば出入り口のある箱であって、箱は素材と外観、内装が変わりはすれ、機能はほとんどそのままだ。もちろんそれは時代を反映し、それはそれで仕方なく、またそれでよい。そしてどのような時代になっても民家は民家で、それは神社のたたずまいとそう齟齬はないだろう。ところが外国人の流入が多くなればわからない。神社の近くにたとえばネパール人がインド料理店を開くとその外観は神社のそれとは調和しないと思うが、日本の街は何でもありの状態で、隣り合う家が全然異なるデザインであることは珍しくない。そういう景観に慣れた者からすれば平野神社のすぐ近くにインド料理店の看板があっても不思議に感じないだろう。話を戻して、宮大工は絶対になくせず、その関連で同様に消えてはならない伝統工芸がある。金がものを言う社会なので、儲からない伝統技術は廃れて当然と主張する人はいる。そうなれば神社も現在の民家と同じように新建材で薄っぺらい持ち味にして行くのがいいのかという話になる。あるいは面倒臭いので神社など全部壊してしまえと言う人もいるだろうが、野蛮人でも文化や伝統の価値は知っている。あたりまえのようにある神社も、手入れを欠かさず、修復する人がいるから昔と同じ姿で存在するのであって、自分の関心外のことを無価値と思わないほうがよい。
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 中門の奧には無料で入れるので桜の園よりも大勢の人がいた。その様子は4枚目の写真からわかると思う。これでも人が少ない間を見計らって撮った。平日でもあってほとんど高齢者で、筆者と家内もその部類だ。中央に見えるのが新しくなった拝殿で、奧に銅葺きの仮殿が見える。簡素なそれもまたよいものだ。神社の本質は簡素だ。簡素な美を西洋はあまり理解しないだろう。荘厳という言葉は飾りが過剰な様子を思わせるが、案外そうでもなく、簡素でも荘厳であり得る。簡素はたとえば平野神社の神紋で、五弁の桜の花を幾何学の正確さで描く。そこには付け足すものも省けるものもない。そして誰が見ても桜とわかる。ただしこれは実物の桜の花を知っている人に桜の神紋を示してそれが桜であると教えてのことだ。そうでなければ桜の紋を桜と認識しない可能性はある。これは交通標識にも言える。その標識が何を意味するかを教えない限り、人は理解しない。ここには教育の重要さがある。桜の紋が桜を意味すると教える場合、そこには理論はない。理屈は不要で、桜の紋は桜を表わしていると教え、教えられた者は素直にそれを受け取って覚える。同じようなルールをたくさん教える場が教育だ。そのルールを拒否して自分で新たなルールを作ろうとするのが芸術家でもあるが、桜の紋を新たに創出するとして、まあそれは完成度が低いままに留まる。つまり伝統は完成度を高め続けて来たものであって、一旦それはそれとして屁理屈を言わずに受容すればよい。そして個人が成し得る伝統の改変はごくごくわずかだ。伝統には理論があって、その理論の隙を突きたいと考える人はあるが、何でも理論で説明出来るものではない。桜は五弁花で、ごくたまには六弁の突然変異もあるだろうが、六弁の桜の紋を作っても誰もそれを桜と思わない。またその紋は白地に黒の線描きでよく、桜の色は必要ない。その簡素さに本物の桜の精神が籠っている。重要なことは簡素だ。あたりまえのことには理屈はない。平和で暮らしている人々を突如爆弾で攻撃して死に至らせることはあたりまえではない。そうではないとの理屈を並べる必要はない。ところが誰でも知っているように、いつでもどこでも屁理屈を言う者はいる。そういう嫌われ者はいずれ排除される。あたりまえのことだ。話を戻して、桜の紋は完璧な形がひとつだけあるというものではない。むしろ描き手によって異なり、無限の形があると言っていいほどだ。平野神社で売られていた桜の最中は、ポスターの写真を見る限り、WIKIPEDIAに載る神紋と違って、身と蓋の容器として機能する必要上、「ゆるキャラ」的なふくよかな立体で、木型を作った職人の冴えが感じられた。簡素であると同時に無限の豊かさを持つ。それが日本の美のひとつの特質だ。伝統に学びながらその無限の豊かさをさらに豊かにする。そんなあたりまえのことを知らない人は多い。
●神社の造形―平野神社の桜、その3_d0053294_02160613.jpg

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by uuuzen | 2022-04-12 23:59 | ●神社の造形
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