「
煎じれば 苦さが先の 人生を 甘さ酸っぱさ 知りてしぶとく」、「太平の 太平洋に 戦あり 人を殺すは 人とウィルスや」、「生活の 改善なくて 歳重ね 国を追われて 自己責任か」、「引っ越しの 荷物まとめて 大掃除 寝床を変えて 振り出しに着き」
今日は息子の誕生日。新たな区切りの意味合いを込め、書かないでおこうかと思っていたことを書いておこう。息子は伏見の大手筋商店街から50メートルほどのアパートに長年住んでいた。8年弱だ。それまでは滋賀の野洲市、そして山科の御陵に移り、筆者と家内がたまに訪れるのに土地勘のない山科から強制的に伏見に移住させた。大手筋近くなら京阪や近鉄の駅から近く、スーパーもたくさんあるうえ、何より筆者は昔からそれなりによく知っている。アパートは2部屋で、駅からとても近いことが魅力で、息子にレンタカーを借りさせ、息子の運転で梅津の従姉夫婦に手伝ってもらって荷物を運び入れた。結論から言えばこの8年、息子は39歳になったのに、ただ生きて来ただけでアトピーは全く改善せず、むしろ悪化した。息子はネットでデュピクセントという高価な注射の存在を知り、それを5,6回打ち、劇的に皮膚の状態は改善し、ほとんど完治したかに見えたが、保険が効かない高額な注射を息子の給料では継続的に打つことは不可能で、それで止めた。すると以前より悪化したような感じだ。その注射は回虫を体内に入れるのと同じ効果があるというから、アトピーはやはり昭和半ばの時代のように回虫を抱えている人が多かった時代にはほとんどなかった病気だ。息子はデュピクセントが1本1万円くらいになればまた打ちたいようだが、アトピー症状を止めるには一生打ち続けなくてはならないと言う。そのうちもっといい薬が登場するかもしれないが、アトピーには完治はない。それでもましになるだけでもよい。息子のアトピーは仕事を辞めて入院しなければならないほどにひどく、毎日かきむしった皮膚の破片屑が茶碗一杯分ほど出て、家内はそれの掃除に追われ、また膿と血まみれの下着の洗濯に涙を流す。ひとり暮らしでは安い外食と大の酒好きによって、アトピーがよくなるはずがない。それで伏見のアパートを引き払わせることにした。息子は引っ越し業者に掃除や箱詰めも込みで見積もりを出させ、先月20日を予約した。数日前からLINEでアパートに行くことを伝えていたのに既読にならず、電話をしても出ない。それで19日の夜、2年ぶりに筆者と家内とで息子の荷物のまとめと部屋の掃除に出かけた。足の踏み場もないゴミ屋敷状態で、筆者は引っ越し業者が運び入れていた段ボール箱にせっせと詰め込み、家内は畳や床の掃除をし続けた。小雨が降り、夜9時頃になっても息子は帰らない。パチンコでもしているのかとアパートの近くの商店街の店に入ると、2,3割の客の埋まりで、息子の姿はない。筆者も家内もスマホを持たないので連絡のしようがない。
布団やベッドの大きな物は放置し、小物や書類などを詰め込んだ段ボール箱は部屋から持ち出しやすいように、玄関扉近くに積み上げた。時計を持って出かけず、時間がわからない。2,3時間の作業かと思っていると、家内はたぶん0時近いと言う。作業の区切りをつけて商店街に出ると人通りはほとんどない。京阪の伏見桃山駅で切符を買うと午前0時を回っていた。5,6分遅れの0時20分頃の電車に乗り、四条駅から阪急河原町に向かうと、改札口で最終は終わったと言われた。仕方なしに地上に出て、タクシー代を少々浮かすために四条大宮まで歩き、そこからタクシーで嵐山に帰ると3000円ほどかかった。深夜でもコンビニや食堂は営業し、歩いている若者の姿もちらほらあって、これなら西院まで歩けたと家内は言った。今頃になってわかるが、息子はたぶん発達障害かそれに近い。8年前に運び入れた食器や道具はほとんど一度も手を触れずにあった。TVやデスクトップのパソコンも買い与えたが、埃まみれで、ほとんど使わなかった。男のひとり暮らしはどこも似たようなものと思うが、ごくたまに息子のアパートに掃除に行くと、ウィスキーの大瓶が大量に転がっていた。さびしさを酒で紛らわせているのだろうが、それでも酒の量が多過ぎる。息子はアパートに帰宅しなかった。どこで夜を明かしたのかわからない。たぶん快活クラブ辺りだろう。翌20日の午後2時頃、隣家の玄関前に引っ越し業者のトラックが到着した。息子は直前に帰宅し、荷の運び入れを手伝った。学生アルバイトを中心に5人が15分ほどで作業が終わり、代金は4万円強であった。息子は部屋の掃除や荷物の梱包も含めての価格なので、昨夜筆者と家内が片づけたことと運び入れを手伝ったことはやる必要のなかったことと言ったが、あまりに散らかりを業者に片付けさせるのは親としては嫌だ。それはともかく、車が到着して荷物を降ろし始めようとした途端、珍しくも真っ白な霰がパラパラと地面に降り注いで転がった。その後は小雨になり、業者が帰る頃は晴れ間が覗いて春の光が眩しかった。そのめまぐるしい天気の変化が今後の息子の吉事かその逆かだが、霰を見た時、とても美しいと感じ、吉事と思うことにした。27日は息子と一緒に賃貸業者と落ち合う2時間ほど前にアパートに出向き、改めて雑巾がけで掃除を徹底し、それがちょうど終わった頃に業者が到着、汚れた壁や畳の弁償代金を査定し、入居時に支払った権利金では足りない金額の3万円を提示した。同居の提案を息子は受け入れた。まずは体調を改善し、それから住む場所を考え直す。皮膚は内臓の反映と言われるが、息子の肌では内臓もボロボロだろう。食生活はよくなるはずだ。酒はなるべく飲ませないが、買って飲むことまで監視出来ない。今日の写真は19日の夜10時頃にアパートで撮った。もう二度とこの撮影場所には立たない。
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