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●大阪中之島美術館、その4(『超コレクション展 99のものがたり』続き)
の花 色はなしでも 香りあり 栗の花より 刺激少なき」、「入れ物は 入れる物より 安価なり 代えは利きつつ 安心保ち」、「繰り返し 足を運ぶは 贔屓あり 絵の中に住む 女愛すも」、「平和でも 阿鼻叫喚を 浴びる日々 共感すれど 兵はデモせず」



●大阪中之島美術館、その4(『超コレクション展 99のものがたり』続き)_d0053294_00572988.jpg
10数年に投稿したように、筆者がモジリアニの「横たわる裸婦」を初めて見たのは1968年7月21日、筆者16歳だ。中学の友人ふたりを誘って大阪から出かけた京都国立近代美術館のモジリアニ展でのことだ。帰りは三条大橋の少し下流で足を水に浸し、魚を獲ろうとした。その日、貧乏にもかかわらず500円の図録と200円ほどの「ネクタイの女」のポスターを買った。図録には当日買ったチケットを貼付し、当時の新聞の切り抜きを数枚挟んでいる。入場料200円で、中之島美術館での本展は高校大学生が5.5倍の1100円であるから、図録をその割合で計算すれば2750円となってちょうど相場となる。同モジリアニ展はミラノで開催された展覧会から10年ぶりで、それほどモジリアニ展は開催が難しかった。日本では特に人気が高く、5,6点所蔵されるが、その中で最も優れた作が大阪市が入手した「横たわる裸婦」だ。これを戦前に山本發次郎が購入し、昭和61年に西武百貨店が山本家から購入、河北倫明が中心となって大阪市が働きかけて平成元年5月に約19億円で譲り受けた。当時大阪市が美術品取得基金として設けた30億円からの捻出で、同作がいかに目玉となる大作であったかがわかる。モジリアニの裸婦を描く大作が4年前に海外で163億円で落札され、同作と比較するとやや小ぶりの本作だが、絵の出来栄えはより優れ、同額としていい。中之島美術館を建てるのに121億円要したそうだが、現在ではモジリアニの名作1点でそれが賄える。そう思うと美術館の建物は宝石をたくさん詰め込んだ安価な紙箱に等しく、中之島美術館をもう少し贅沢に建ててもよかったのではないか。ついでながらモジリアニは300点ほどしか油彩がなく、また贋作がきわめて多く、東京の国立西洋美術館はモジリアニの素描の贋作をかつて画商から購入して世間を賑わせた。68年に筆者が見たモジリアニ展の図録の最初に今泉篤男は同展に贋作が混じることを極端に警戒したことを書くが、イタリアでのモジリアニ展でも大量の贋作が混じったことがあって、日本でのモジリアニ展もその可能性は拭えない。それはさておき、本展で何度目かに「横たわる裸婦」を今回改めて目の当たりにし、絵具の艶が少し減退したように感じた一方、改めてモジリアニの才能に舌を巻いた。娼婦がモデルであろうが、裸婦の肌の色合いが味わい深く、構図や配色、どこを取っても隙がない。これほどに完成度の高い作品は珍しく、悲哀調でないのもよい。モジリアニには哀愁を帯びた作がままあり、筆者はそれらをあまり好まない。
●大阪中之島美術館、その4(『超コレクション展 99のものがたり』続き)_d0053294_00575314.jpg 本展チラシに印刷された海外の作は他にローランサン、マグリット、ジャコメッティ、バスキア、それにロートレックのポスターだ。これらの選択が妥当かどうか言えば、筆者は不満だが、女性や若者向きを狙ったのかもしれない。5階には10年ほど前に閉館したサントリー・ミュージアムが所蔵していたポスターの多くが展示され、それらを大阪市はサントリーから購入したのか、あるいは寄託だろうか。マッキントッシュらの家具とともに、5階はデザイン部門の作品の展示に充てられ、4階をじっくり見たことの疲れもあって、大方の人は素通りに近かった。ポスターや家具は複数生産で、その分4階の1点製作の絵画に比してアウラは少ない。そのことを美術館側は当然知り、それで3-2は「都市と複製の時代」、3-3は「ペルソナとプルーラリズム」と題された。前者はベンヤミンを意識した題名で、後者はSNS時代を思えばよい。「人格」はあってもそれは「複数主義」に埋没し、たとえば本展のチラシに印刷される作品の選定には、客の「ペルソナ」を想定しつつ、それがより「複数」であることが狙われる。そういう時代の芸術とはどういうものかとなれば、デザイナーズ・ブランドの家具や調度品を思えばよく、ファッションも含まれるだろう。それは百年前に始まったと言ってよい大量消費の都市文化から始まった。それで3-2ではイタリアの未来派やバウハウスの家具や写真、またロシア構成主義のポスターなどが紹介されたが、ところどころに意表を突く作品があって、かなりの美術通を唸らせる。たとえば3-2にハンナ・ヘッヒのコラージュ作品、3-3の冒頭にはアルチンボルドの油彩画があった。前者は京都国立近代美術館にまとまった作品があるが、後者はきわめて珍しく、どういう経緯で大阪市が所蔵することになったかを誰しも思う。そしてそのことを親切にも説明していて、それを読んでまた筆者は驚いた。大阪には赤字続きで閉館になった施設がある。その代表の「大阪市立海洋博物館 なにわの海の時空間」に筆者は二度出かけたことがある。同館から東1キロに「ふれあい港町ワインミュージアム」があったことはうすうす知ってはいたが、ワインに格別関心がなく、訪れなかった。「なにわの海……」が閉館した2年後の2008年に同館は閉鎖したが、同館にアルチンボルドの絵画があることを知っていれば出かけていた。それはともかく、バブル直後のどさくさに同2館は建設され、大赤字の施設となって10年ほどで頓挫した。橋下市長でなくても頭に来るかもしれない。「なにわの……」の総工費は中之島美術館より高く、当時なぜ新美術館を建設しなかったのかと思うが、代わりにせっせと美術品を購入していた。それに「ワインミュージアム」が購入したアルチンボルドの油彩画はその後価格は高騰し、今後はもはや購入の機会はない。
●大阪中之島美術館、その4(『超コレクション展 99のものがたり』続き)_d0053294_00581998.jpg 以上のように、個々の作品には所蔵されることになった「ものがたり」がある。「なにわの海」と「ワイン」の2館の建設費合計の200億円を費やせば、中之島美術館はもっと立派なものになったが今さらそれを言っても始まらない。それに同2館の頓挫以外にも大阪市は無駄と言われる建物を作り、そういうまだ新しい負の歴史がある中での新美術館建設は、税金の無駄遣いに目を光らせている人にとっては大いに文句を言いたいところだろうが、美術に携わる人たちには悲願の館で、大阪のよき部分を見る思いだ。また天王寺の市立美術館の横に売店とレストランを新設する予定で、美術館行政は京都並みになって来ている。話を戻して、121億円以上を費やすことが可能であったならば、美術館の外観はどう違ったであろう。真っ黒な四角い巨大な箱が出現して異様な雰囲気を放っているが、遠目に目立ち、その点は便利だ。江戸時代の中之島は各藩の蔵が並び、そのイメージを再現するために白壁に瓦屋根を主張する人がいたそうだが、本物の蔵でなければそれはキッチュ過ぎる。筆者は舞洲にあるフンデルトワッサーがデザインしたゴミ焼却施設の外観が中之島美術館にあればよかったと思う。フンデルトワッサーの色鮮やかで楽しいデザインであれば、断然黒の箱より楽しく、子どもも喜ぶ。ところがフンデルトワッサーになぜ肩入れするのかと反対意見が出るだろう。ともかく、大阪はかなりちぐはぐなことをして100億単位の税金を無駄にして来た。「なにわの海」は水の都の大阪としてはまだ理解出来るが、希少品種のワインを収集して展示する「ワインミュージアム」はどういう経緯で建ったのか、またワインはどうなったのか。希少ワインの瓶を眺めるより、絵画や彫刻のほうがより多くの人が楽しめ、納得もする。それはいいとして、黒の外壁にした意味は1-5「大阪と関わりのある近代・現代美術-戦後美術」の最後でわかった。「具体」の統率者の吉原治良の作品が20点ほど並び、その背後の展示壁は真っ黒に塗られていた。説明文によれば、吉原が中之島に設けていた「具体」メンバーの会合場所は黒壁の土蔵であって、それに倣ったとのことだ。つまり中之島美術館は吉原に因み、吉原の作品展示に力を入れている。実際彼の作品コーナーは本展で最も印象的な空間となっていた。もっとも、筆者が1点に費やした鑑賞時間が最も長かった作はフォートリエの「永遠の幸福」だ。よくぞこの作品を購入した。これは縦に描いて横倒しにした作で、裸婦のトルソを横たえて単純化し、それを2本の交差するフランス・パンのように描く。彼の戦時中の悲惨な記憶が背後にあるはずだが、「永遠の幸福」と題するのは、1958年の作で、ドイツ軍の人質となって拷問された人々の「形」のトラウマが、健康な裸婦か香ばしいパンに思えるようになったからだろう。不幸は去る。ただし幸福の陰にそれが見え透いている。
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by uuuzen | 2022-02-26 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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