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●京都大宮高辻 Live&Salon「夜想」にて、F.H.C.
れる音 耳をそばだて わからねど 人の気配は お互いさまと」、「横になり 心地よき声 想う午後 庭に鋭き ひよどり啼きて」、「意図せずに 校歌浮かびて 口ずさみ 級友の顔 どれも幼なき」、「楽しみを 求め続けて なお渇く 傍から中毒 異様に見えし」



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何で読んだのか記憶にないが、最晩年の土方定一は日本の公立の美術館が毎年コンクールでの受賞作品を購入し、それを長年続けてはどうかと言った。そこには若手の美術家を世に出そうとの思いと、どれも大した存在ではないという皮肉も混じっている。筆者が土方のその半世紀近く前の意見をよく思い出すのは、彼がバブル期やポストモダンの流行を知る前に死んだにもかかわらず、その後現在につながる日本の芸術家の思想や個性にあまり期待していなかったように感じられるからだ。つまり若手芸術家の活動を公的機関がどう支え得るかを考える殊勝さよりも、出現し続ける芸術家の作品をコンクールの審査員が評価することの困難さを感じる一方、古典を知らない、知る必要もないと考える世代が持ち上げる作品を公的機関が所蔵する意味があるのかという疑問ないし葛藤を抱いていたと思えるからだ。公募展でグランプリ受賞作品を美術館が半世紀収集したとして、その50点の大半は歴史に残らず、置き場所に困るがらくたになる可能性が大だが、もっと年月が経てば一時代の特徴を築いていたことが明らかになる可能性は当然ある。そうなればそれがひとつの美術史となって後世に影響を与えるかもしれない。ところで針生一郎は積極的に個展に足を運び、「現在の日本美術」に関心を持とうとしたが、その成果が本にまとめられた話を聞かない。才能にきわめて優れる美術家は、公募展を見てもわかるが、千人にひとりもいない。そう思えば画廊巡りは散歩にはよくても精神を疲労させるだけと言ってよい。一方で思い出すのは洲之内徹が『気まぐれ美術館』の最初の方で紹介した若手画家だ。本にはその後建て替わった京都の有名な造酢店やその背後にそびえる大きなイチョウの木の素描が紹介され、洲之内はその個性的な表現力に着目したが、当の画家は数年後か、発狂して自殺した。表現を目指すきっかけは他者の作品に魅せられるからであろう。直接教えを受けなくてもよく、何百年も前の絵画を画集で見て刺激されることもある。それは作風やそれから感得される精神性につながっていたいとの思いだ。そのつながりがあって美術史の流れに組み込まれ、そして評価もされる。もちろんそんな大げさなことを考えずに、子どものように好きなように描く人がいて、そういう画家が増えるとそれもまたデュビュッフェが着目した「アール・ブリュット」のようなひとつの流派となるが、無数に存在する作品のどれを好み、評価するかは個人の自由だ。ただしそこにたとえば土方や針生の見方に関心を抱くことは自分の考えを客観視する点からも意義がある。
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 「ポストモダン」はひとまず「何でもあり」と解釈すればいいが、それは先立つ思想や作品に何ら負わないのではなく、「モダン」が前提にある。「モダン」を「現代」と訳すか「近代」と訳すかとなれば欧米では後者だ。日本にも「モダン」と呼ばれる時代はあったが、それは欧米のそれとは違うので、「ポストモダン」も違うことになる。ここでまた話は変わるが、10日ほど前のTVにヴァイオリニストの葉加瀬太郎が出演し、興味深いことを語った。彼はとある有名女性歌手のバック・バンドの一員としてアメリカをツアーした。アメリカは巨大な田舎で、どの街にもショッピング・モールがあり、そこを会場にコンサートをすると万単位の客が集まる。それほどアメリカではポップスが生活に重要な位置を占めているとのことだ。それはいいとして、ライヴハウスで数十人程度を相手に自作曲を演奏する音楽家もいるだろうが、その状態は日米でどのような違いがあるのか。日本のTVに出る演歌やアイドルの歌手は芸能史に刻まれるだろうが、ライヴハウスで演奏する者はその点をどう考えているか。また日本のクラシックの音楽家が西洋のクラシック音楽に名を遺すかとなれば、まあ無理だ。そこには日本美術が世界の美術史でどう評価されるかがひとつの参考になるが、明治までを評価して「モダン」の時代は見るべきものがないとして除外する。それが「ポストモダン」のおかげで国際的に買われる芸術家を輩出している。ここからようやくF.H.C.(以下FHC)の話になる。今回のライヴはドラムスを加えた3人編成で、同じ編成で収録した去年発売のCD『褶曲』を筆者は「夜想」から帰ろうとした時、かさいさんからいただいた。それを3,4回通して聴き、また以前のCDも改めて聴いた。最も古いCDは2010年発売で、そこに収められる1曲が『褶曲』にも入っている。聴き比べると録音の音量の差のせいもあるが、やや柔和ないし落ち着いた雰囲気が増している。今回のライヴがYouTubeで見られることを金森さんから教えられ、それも先ほど見た。留美さんは自作CDをはにかみながら曲の合間に宣伝し、またかさいさんは帽子を深々と被って顔を見せず、含羞のカップルであることがわかる。今回は結成30周年記念の「関西ちびツアー」で、チラシは2年前の旧「夜想」でのライヴと同じく留美さんのイラストを使い、名称のロゴは使い回ししている。留美さんは絵も描くが、誰かの影響を受けているかは明らかではない。そのことが奏でる音楽に通じているだろう。その流派に属さない点が個性だが、人脈の意味ではなしにどこにも所属しないことは、ほとんど評価を受けつけないことでもある。聴き手が分析するにも手掛かりが得られないからだ。とはいえFHCもさまざまな音楽に触れて作曲しているのであって、直接的な影響は見られなくても必ずその痕跡はある。
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 前述の初CDではどちらかと言えば主役は留美さんだ。今回のライヴや『褶曲』では五分五分で、どちらも相手の伴奏を心がけているように感じられた。伴奏を伴走と言い替えてもよい。リズムを刻みながらふたりが補い合いながら2分少々の短い曲を突っ走って行く。基本はかさいさんの奏でるチャップマン・スティックのようだが、これはたとえばバッハの平均律クラヴィーアのように左手が伴奏で、右手がそれに載る対位法で書かれたメロディというものではなく、留美さんも伴奏を奏でると言ってよい。しかもふたりともごく短い、おそらく2、3小節の旋律をわずかに変えて繰り返し、曲全体が伴奏のみという雰囲気が漂う。その意味でサティの言う家具音楽のように邪魔にならないかのようだが、ミニマルさが却って耳につくと言うより、むしろ神経に障る。ところが印象に残るのはわずかなメロディの断片で、その断片の変奏をFHCは30年続けて来ている。とはいえ誰しも有名な音楽家の曲を数小節で記憶している。筆者はビートルズの「涙の乗車券」を冒頭の1小節のみで充分と思い、ベートーヴェンの『運命』は冒頭の「ダダダダーン」で代表させている。その伝で言えば、FHCは今回最初に演奏し曲の冒頭部を記憶すればよく、実際誰しもそうなる。聴き直して気づいたのは初CD収録の「ラブドマンティスト」や『褶曲』の6曲目「磨鑪」だ。「ラブ…」はFHCらしからぬメロディの曲で、題名が示すように皮肉が感じられる。同曲は若い女性シンガー・ソングライターが歌詞をつけて歌えば似合う曲で、日本的な湿っぽい情緒がある。「磨鑪」は60年代のフランス映画を思わせる懐かしさがあって、FHCとしては初めてのいわゆる「まとも」に楽しめる曲で、また皮肉さは感じられない。こうした映画音楽的な旋律を書くところに進歩と言うよりも活動30周年の余裕か心境の変化があるのだろう。ただし映画音楽を言えば、FHCのどの曲も特殊な映画には似合う。それはアニメだろうか。筆者も10代半ばまで漫画で育ったが、ポストモダンの世代は漫画やアニメはもっと大きな位置を占めているだろう。それゆえ学校で古文や漢文を学ぶ意味はないという暴論を言うネットの人気者もいるが、彼の薄っぺらさに筆者は目を覆いたい。それだけ筆者が古い人間と言われようと、古いものと今がつながり、真に新しいものは古いものからしか生まれないと思っている。ブラジル風のバッハ曲を書いたヴィラ=ロボスもそうだが、わずかにバッハを想起させるFHCは「日本風バッハ」や「札幌風バッハ」とは言えず、さりとてロックでもジャズでもない。その独特さは美術の「アール・ブリュット」にたとえられもせず、論評には「ポストモダン」を持ち出し、また半世紀ほど経たねば本質が見えて来ない気もする。その点は絵画と違ってCDは美術館という大げさな置き場所は要らない。
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by uuuzen | 2022-02-21 23:59 | ●ライヴハウス瞥見記♪
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