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●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その5
尽きて 寒さに縮む 雪の夜 薄布団巻き 『雪の宿』食べ」、「決めたこと ひとつずつ終え さらに増え 時間足りぬの 言い訳言わず」、「考えて 楽しきことを 脳天に 能天気とは いささか違い」、「自己暗示 事故を案じず 誇示すべし 事案はすべて 自恃の下に」



●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その5_d0053294_02112341.jpg昨夜パトリック・ペンディングの文章を全部読んだと思っていたが、前半があることに気づき、今しがた読み終えた。それをかいつまんで書くと今日の投稿で終わらない。それでもかまわないが、「その5」までと決めたので、いちおう今日で終える。本映画の予算はザッパが後に語ったところによれば67万9000ドルであった。またユナイテッド・アーティストのデイヴ・ピッカーにザッパとマネージャーが面会したのは1970年とある。昨日は68年と書いたが、ザッパは「プリ・プロダクション」として映画のための管弦楽曲の作曲が同年に6割完成していたというので、同年頃から映画会社に打診し、70年にユナイテッド・アーティストと契約出来たと解釈してよいだろう。ともかく予算は無駄に使えず、イギリスのオーケストラを出演、演奏させるには、マザーズその他アメリカの関係者がロンドンにわたったほうが安上がりで、ロンドン郊外のパインウッド・スタジオで撮影した。撮影日数が短過ぎて毎日ザッパは脚本を書き替え、フィナーレの曲「ストリクトリー・ジェンティール」ではスタジオに向かうバスの中で歌詞を書いてフロ・アンド・エディにわたしたほどで、追い詰められた状況での底力が発揮された。ただし当初の計画どおりに行かなかったことのほうが多く、失敗作となることを回避するためにワルふざけやナンセンスを用いた。これはザッパに漫才師特有の天然の面白さを急場に発揮する才能があったことを示す。それゆえ本映画の出演者の多くが面白かったと思ったそうだ。ザッパが隠し録りしたメンバーの愚痴を脚本に活かそうとしたことにベーシストが憤慨し、撮影中にアメリカに帰り、その代役を見つけるという逆境を含めて、まとめたはずの脚本を7日で撮影することは土台無理な話であった。きっかり5時にスタジオが閉鎖されて全員が帰宅することに対し、ザッパは脚本の練り直しで寝る暇もなかったことを想像すればよい。またそのように結果的に急場凌ぎに見舞われ続けた本映画だが、管弦楽曲は楽譜どおり、一方のマザーズの演奏は手慣れたもので、映画とは違う、また映画以上の完成度が音楽にはあると言える。それは管弦楽曲とロックに完全に分離出来るものではない。もちろんそれが可能な曲のほうが多いが、オーケストラを背景に混成合唱やナレーター役で出演したセオドル・バイケル、フロ・アンド・エディが歌う「ストリクトリー……」は後年のザッパが頻繁にライヴで演奏したほどに完成度が高く、また歌詞はザッパの精神をよく表わしている。ロンドンでの滞在経験から、「イギリスの食事は粗末」という皮肉を含むからだ。
●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その5_d0053294_02234806.jpg 曲の前半は3拍子で、歌詞とともに讃美歌の影響が濃いが、そこにカトリック教徒として育ったザッパの出自が垣間見える。警察官や肉体労働者に対して神の加護がありますようにという歌詞は、人に対しての優しさだ。そのことはフロ・アンド・エディが蛙のような声で「アル中、薬中、気色悪い人らも」と歌うところにも示される一方、その茶化し具合はザッパのユーモラスな人柄を理解するのに最適な部分と言える。アメリカから招いた女性のソプラノ歌手の声はいかに上品で本曲の題名を体現しているが、彼女の声は本作では欠かせない神々しさをもたらし、ザッパは他の曲でも歌わせている。それは海賊盤では「インタヴュー」と題され、今回「あなたのバンドの名前は?」という題される曲で、そのため筆者が先月投稿した「究極のザッパのベスト・アルバム」の選曲は本作のその音源に差し替える必要がある。「ストリクトリー」に話を戻すと、ライコディスク盤より15秒長く、オリジナルの音源に遡っての編集がわかる。また同曲のフェイドアウト後がどう演奏されたかを伝える6分ほどの曲も収められる。この曲は前半の讃美歌調から、いかにも黒人が歌って様になるフロ・アンド・エディが歌うロックに変わるが、そのロック部分はライコディスク盤とはミキシングが違ってより迫力がある。また前半部分は半分近くがカットされたことを明らかにする長いヴァージョンも収められ、しかも同曲は本作では筆者が最も驚いた部分を含む。昨日ザッパは本作で「ライトモチーフ」を用いたと書いた。そのことは本作を熱心に聴くと随所でわかる。「ストリクトリー」前半の終わり頃、「インカ・ロード」のテーマ・メロディとそっくりな旋律が奏でられる。ここで話は少し外れる。マザーズとズビン・メータ指揮のロス・フィルがUCLAで演奏した1970年5月の演奏は録音されず、海賊盤で楽しむしかない状態にあるが、同公演で「インカ・ロード」の主題が演奏された。ただし「ストリクトリー」においてではない。本作で初めて明らかになったが、パインウッド・スタジオでのマザーズと管弦楽団との共演において、「ストリクトリー」の前半の後半部で「インカ・ロード」の主題がゆったりと奏でられる。それをザッパはカットして本映画やアルバムに収録したが、本曲ではライトモチーフとしての断片使用は残り、それが聴き手の意識下で「ストリクトリー」と「インカ・ロード」の親和性を昔から感じさせていた。そのことを含めて考えるに、本作がザッパ作品の頂点で、以降の作品はみな本作に「紐づけ」され得る。それは30歳でエネルギーを使い果たしたとも言え、その後は毒を抱え込み、それを吐くことを10数年続けることになった。本作の曲目を予約開始時に見て最も興味を持ったのは「芸術における海軍飛行?」だ。やはり後年何度も演奏されたが、本作が初であったことに本作の重要性を再認識する。
●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その5_d0053294_02240915.jpg この曲は76年の日本公演では最初に流され、直後にザッパは「インカ・ロード」のテーマをギターで奏でた。つまり76年は70年から直結している。「インカ・ロード」はさらにその後ザッパのギター・ソロの最重要曲になり、題名を変え、また演奏もひどく改変されて何度もアルバムに収録される。そのこともライトモチーフの思想で説明出来る。ライトモチーフはワグナーが最も有名だが、オペラや交響曲にはつきもので、ザッパの音楽は楽劇、オペラ、交響曲に基礎を求めたものと言える。そういう多彩な音を組織化する音楽を学び、創作すれば、ロックやジャズが簡単かと言えばそうではないだろう。管弦楽曲の作曲とは違ってザッパはギターを高度に奏でる技術を磨き続けた。それは管弦楽曲の作曲と同様、独学で、自己流ゆえの明確な個性の発揮を可能にした。そのことは音楽を聴けばよくわかる。ザッパの音楽が管弦楽曲を学んだことが基礎になっているとして、それら学んだ作曲家の作品や生涯について詳しく知る必要は全くない。最も大事なことは偏見をなくして音楽に直に触れることだ。そして感動すれば深入りするし、そうでなければ一生縁がなく、それは仕方がない。相性が合うか合わないかはどんな人や作品にもある。昔筆者より2歳下の美術家にザッパの音楽を示すと、ビートルズに心酔する彼は「とんでもない」と嫌悪の情を示した。筆者はそれに対して何も言わなかった。説得する気もない。人それぞれに好きなものを聴けばいいからだ。本作ではサイモンさんのリンゴ・スターへのインタヴューが収録され、そこでリンゴはザッパを「インクレディブル・ミュージシャン」と言う。「とんでもない」には二義があるが、リンゴは「途方もない」の意味を託した。話題転換。本作にはヴァレーズの「イオニザシオン」を彷彿とさせる未発表曲がある。それが本映画に含まれなかったのはヴァレーズの影響が濃すぎるからだろう。懸命な判断だ。模倣はすべきではなく、ザッパは30歳でそのことを守った。また同未発表曲は題名も含めてザッパの「超現実」主義というよりも、「自然」主義の濃度を感じる。それは自然風物との馴染みの情感の表出で、ザッパがその方面での作曲を深化させなかったことが惜しいが、本作を経験したことでなおさら人との交わりに絶えず晒される生涯を送ったザッパには、自然を愛でて作曲する一種瞑想的な作品は苦手というよりも、アメリカでは金にならないと思ったのだろう。そこにひとつの悲劇があるが、後年ザッパは管弦楽曲の作曲に没頭したことを否定しながら、最晩年にまたドイツの若手の楽団と組んだところに、管弦楽曲や現代音楽をそれなりに愛好するザッパ・ファンは、嬉しさと時間切れになった悲しさを同時に思う。もう10年か20年の余命があればザッパはイタリアの伝統にそれなりにつながるオペラの作曲家になっていたはずだ。その基礎は本作で築かれた。
●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その5_d0053294_02243048.jpg

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by uuuzen | 2021-12-29 23:59 | ●ザッパ新譜紹介など
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