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●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その4
したき 人に出会わず また師走 齢気づかぬ ふりしてはしゃぎ」、「人並みが わからず恥じる 身の上が 並みと気づくは 並みとなりけり」、「得られしや 半世紀後の 謎解きは ありがたきかな 冥途のみやげ」、「よきことを 数えて楽し 年末は 酒の助けで なお夢心地」



●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その4_d0053294_01352186.jpg昨日に続いてQ&Aから書くと、映画『200 MOTELS』(以下、本映画)を製作する思いは遅くて1968年にあった。当時ザッパは映画製作者の幾人かに接触したが、本映画の企画を部分的に説明するとみんな悲鳴を上げて遠ざかった。ところがユナイテッド・アーティストのピッカー氏は興味を示した。ザッパが作った10ページの説明書とテープ2箱、そして彼がマザーズの演奏を知らない場合に備えての新聞や雑誌の切り抜きを見て、彼は「契約しよう。予算を決めさせてくれ」と言い、その後予算が決まり、弁護士が入って企画が動き始めた。1968年のことだ。当時ザッパは映画に使う管弦楽曲と合唱曲を作曲中で、そのための時間の6割はマザーズのツアー中のモーテルで費やされた。予算は60万ドル、当時のレートで2億1600万円だが、6年前のビートルズの映画『ヘルプ!』が10万ドルとされるから、妥当な額だろう。またピッカー氏が関心を示したのは、先立つビートルズの2本の映画を配給したことでミュージシャン主演の音楽映画は当たるとの予想があったためと思われる。ビートルズつながりで言えば、本映画にリンゴ・スターを起用したことだ。Q&Aではリンゴがビートルズで培った人のよさを打破したいために出演を承諾したとあるが、ビートルズは1967年の『サージェント・ペパー』のアルバム・ジャケットでのザッパとの関わりからザッパをさらによく知り、また意識していたはずで、後の実験的な音楽を手がけるビートルズの「ザップル・レーベル」の名称はザッパとは無関係ではあり得ないだろう。ただし、同レーベルはジョンやジョージがいくつかのアルバムを出しただけで分解し、ザッパの音楽との直接的な関係はない。ともかく、本映画のリンゴ・スターの出演は、マザーズやその取り巻きの出演だけでは無名過ぎて収益が望めないというユナイテッド・アーティスト側の思惑が働いたのではないか。一方当時映画に関心を示していたリンゴにとっては、前述の理由もあって出演を断る理由はなかった。さらに言えば映画の撮影が終わって5か月後、また公開の半年前にニューヨークでジョンとヨーコがザッパ/マザーズのライヴに出演したことも、本映画でのリンゴの出演が遠因である気がする。ともかく、ユナイテッド・アーティストの目に留まったことは、ザッパの才能によるだけではなく、ビートルズが先立って映画に出演した恩恵を被っていると考えたほうがいいだろう。ただしアイドルとしてのビートルズとは違ってザッパは音楽家としての自覚が強く、その真摯さと力量が買われたことは言うまでもない。
●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その4_d0053294_01354574.jpg Q&Aでザッパは、本映画が7日で撮影され、ヴィデオ編集に11日、35ミリ・フィルムに焼き付けるのに3か月要したと語る。ヴィデオで長編映画を撮ることは本映画が初めてのことだ。それがザッパの意向であったのか、予算削減のために映画会社が案を示したのかはわからないが、大きな利点は撮影中の映像が同時に確認出来ることだ。また色調も即座に変更出来るうえ、フィルムでは不可能な電子処理も使える。ただし当時のヴィデオの画質はアナログでもあって35ミリのフィルムより劣るのではないだろうか。この点が大いに気になる。今年初め頃だったか、本映画の監督トニー・パーマーが本映画の限定盤DVDを新たに発売した。映画の著作権が監督にも認められた結果であろうか。筆者はそれを見ていないので内容や画質が現行の盤とどう異なるのかわからないが、本映画に使われなかったフィルムは生前のザッパがヴィデオとして発売し、今後そのDVD化がなされるとして、その時にはジョー・トラヴァースが発掘した映像も加わる可能性がある。またビートルズの映画『レット・イット・ビー』が今『ゲット・バック』という新たな内容の映画として作り変えられたことから、本映画の別編集盤が出ることもあり得る。そうなった時は、また新たな『200 MOTELS』のサウンドトラックCDが発売されるだろう。話を戻して、撮り直しが手軽なヴィデオで撮影したことは、ザッパのライヴ演奏の録音に似るかたわら、ザッパは一発撮りの緊張感を信頼したのだろう。それには入念なリハーサルが必要で、音楽に関しては初期の、またスタジオで後に加工しないヴァージョンが本作に豊富に収録される。映像はヴィデオのマスター・テープで保存されていたと思っていると、パトリック・ペンディングの文章に「アルバムと同じ大きさの新案の金属製ヴィデオディスク」が使われたとある。デジタル時代であればそれはDVDと同じものと想像が及ぶが、アナログ時代にそのような原盤がLP以外に映像でもあったとは知らなかった。そのディスクは映像の複製に利用可能で、また映像の速度を自由に改変も出来る。昨日触れたように、1秒程度の映像の連続繰り返し場面が本映画に何度かあり、それはその金属盤を活用すればテープの巻き戻しよりも簡単であろう。また本作には初めて耳にする奇妙な音の曲がふたつあり、「SYNTH TRACK」と題されるが、これは基本的にはアルバム『いたち野郎』に含まれるテープの速回しを思わせながら、それとは一味違う斬新さがある。ビートルズの「ブラック・バード」の背後のリズムを複雑かつ多彩にした音で、そのことから器楽演奏に機械音のようなものを重ねた気がする。それが本映画の金属原盤から加工したものという保証はないが、ザッパのことであるから、新しい仕組みに遭遇すれば必ずそれを音楽に応用したに違いない。
●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その4_d0053294_01360811.jpg 当時映画をステレオで鳴らす映画館は少なく、本映画のフィルムのサウンドトラックはモノラルであったという。ところが本作LPはステレオで発売するので、収録音源をスタジオで加工する必要があった。またスタジオで録り直ししたセリフや曲があって、それを新たに映画に組み込むなど、映画とアルバムを相互に進めた。一方アニメーションをどこに挿入するかで協議を重ね、「デンタル・ハイジーン・ジレンマ」に決まり、カル・シェンケルの原画をもとに外注して8週間で仕上がった。その間ザッパはツアーをしたが、最も有名なものはロンドンのアルバート・ホールでキャンセルになったロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラとマザーズの共演だ。これは本映画で実演済み直後の機会で、それが録音されていれば音質のよい新作アルバムになったことは確実だが、オーケストラの組合が練習のギャラを要求し、また一部の団員は本映画での撮影時に下品で猥褻な歌詞に反旗を翻し、ザッパやマザーズの強い抗議にかかわらず、共演はキャンセルになった。ザッパとイギリスの相性の悪さはこの頃に遡るが、結局10年ほど後にロンドン交響楽団を使って自作曲を演奏させた時にも同じような抵抗に遭った。下品や猥褻というのはいわばマザーズの最初のアルバムからまとわりついたイメージだが、本映画で「ペニスの大きさ」と題して合唱つきの管弦楽曲に仕立てるセンスは堅苦しい人には通じない。そういう意外なものの組み合わせはザッパの言う「超現実」で、現実とのずれを面白いと思うかそうでないかでザッパの音楽に対する好悪が決まる。本映画はグルーピーがふたり出演し、半裸になることもあって17歳未満は保護者同伴でなければ見られないというR指定を受けた。またいわゆる映倫がザッパに送って来た認定証は無署名で、その理由がわからないザッパはその署名欄にカル・シェンケルにサインさせ、その認定証を本LPのブックレットの表紙に印刷した。パトリック・ペンディングの文章は最後近くに本作のジャケットやポスターの絵について書く。デイヴ・マックマッケンが最初に描いた絵はザッパな巨大な顔が裸の若い女性を見下ろすもので、これは1993年にザッパの初期曲を収めるアナログ盤のジャケットに使われた。デイヴが次に描いたのが本作のジャケットで、それより各段に出来がよい。36インチ(91センチ)四方のアクリル画で、わかりにくいが今日の2枚目の下の写真にあるように、1971年10月1日にロサンゼルスのサンセット大通り沿いに新たに両脇の絵画を伴なった横長の大型看板が設置された。またラジオでは数種類のコマーシャルが流され、72年1月の映画の封切りは大人気を博した。本作ではそれらのコマーシャルの音源も収録される。今日は本映画についてもっぱら書いたが、明日は本作初の曲を紹介する。
●『200 MOTELS 50th Anniversary Edition』その4_d0053294_01362925.jpg

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by uuuzen | 2021-12-28 23:59 | ●ザッパ新譜紹介など
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