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●神社の造形―疫神社
の実の 毒ある青を 外し後 赤きを集め 鳥の待つ声」、「おもてなし 裏のみありの ことを言い」、「おもてのみ 飾りて酷し 心根に 焦がれ憧れ 真似てお詣り」、「疫避けて 益得ることを 子に伝え」



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半年に一度くらいか、設定しているパソコンの壁紙画像が変わってしまうことがある。以前のものに戻したいのに、その画像がどこに保存されているかわからず、結局新たな画像を選んで使うが、それはそれで気分がよい。今は「〇は〇か、その42」の最初の「茅の輪」の写真を使っている。今年3月27日に祇園の八坂神社で撮ったもので、今日は同じ日に同境内で撮った写真から疫神社の4枚を使う。向日市と三条大宮に用事があったので、今日は思い切って自転車で2か所を回った。自転車に乗れるほどに体調が戻ったからだ。嵐山、向日市、三条大宮の3か所を直線で結ぶと三角形になり、向日市と三条大宮を別々の日に訪れるよりは1日で巡ったほうが距離は少なく、時間も1時間短い3時間で済むうえ、気になっていたほかの用事も済ますことが出来る。それで炎天の午後1時20分に家を出ると自転車の後輪から妙な音が聞こえる。上桂駅付近でついに空気が全部抜けてしまったので、自転車から降り、転がして家に戻った。往復1時間を無駄にし、午後2時20分に別の自転車で出直したが、向日市から三条大宮に向かう途中、雷雨に見舞われ、ずぶ濡れになって小さなビルの庇の下に逃げ込んだ。シャッターが下りていたからだ。20分ほど雨宿りしている間に若い女性、そしてウーバーイーツの配達人がそれぞれ逃げ込んで来て1分ほどでまた豪雨の中を出て行った。雨宿りしたビルの南2軒がライヴハウスの「夜想」だ。真向かいはホンダのバイクの修理店か、大通りに面したガラス扉の向こうに、昔ポール・マッカートニーが飼っていた大型犬のシープドッグのぬいぐるみが置かれ、それがずっと筆者のほうを見ていた。小振りになって自転車を走らせ、大宮通りを北上し、染色工場に着いた。生地を受け取りながら30数年来の馴染みの女性と談笑していると、彼女はおもむろに「今日は宵々宮やな」と言う。なるほどそうだ。それで今日の投稿は「疫神社」と決めた。宵宮の明日に投稿してもいいが、今日は昨日の投稿に続く話題をと考えていながら、そのための適当な写真がない。それでいわば仕方なしに疫神社の写真を使いながらまずは昨日の話題の続きを書く。録画した書画骨董の真贋と価格を鑑定するTV番組を昨夜見たのだが、とても気分がよかったという話だ。出品作は長谷川潾太郎の毛糸を描いた油彩画で、たまたま中年夫婦が訪れた東京の画廊でその絵が気に入り、130万円の入札価格をつけて落札出来たものだ。本物で間違いないと思いながら、長谷川のことを何も知らず、鑑定してほしいと思って同番組に応募したのだが、200万円の評価額となった。
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 筆者が長谷川の作品を初めて知ったのは洲之内徹が芸術新潮に連載していた「気まぐれ美術館」だ。緋毛氈の上に寝そべる虎猫を描いた作品がカラー図版で載った。それが同番組でもいちおう代表作のような形で紹介された。関西では見る機会が少ない画家だが、同番組で出品されたさまざまな毛糸の玉を並べて描いた作品は一見して素晴らしさが伝わった。画面右上の白い毛糸は他の玉とは違って糸が太く、またぐちゃぐちゃとまとめられているが、それが全体のリズムを小気味よく崩しつつ調和している。毛糸を描いた油彩画はゴッホにもあって、ゴッホは色の対比の研究のためにさまざまな毛糸を丸めて保管していた。長谷川の絵は単色の毛糸の玉を並べ、それぞれの玉が個性を持った子どもに見え、また優しさと純心さと調和に溢れている。購入した夫婦は、妻が43歳、夫が12歳年長であったと思うが、晩婚ながら、若い女性のように妻は夫にべた惚れ具合を隠さず、妻が描いた夫の顔のマンガ的イラストを印刷した揃いのTシャツを着ていた。妻は美大を出ているのではないか。眼鏡をかけた夫は真面目なエンジニアらしい雰囲気の顔つきだ。ふたりが元気で暮らせるのは長くて30年と思うが、妻は金婚式を迎えたいと言っていた。また妻は出勤前に必ずその絵を見て元気をもらうと語り、幸福なふたりにぴったりの絵であるのが気持ちよかった。130万円で小さな絵を買うのは経済的に恵まれているかと誰しも思うだろうが、経済的にいくら豊かでも絵画に見向きもしない人のほうが圧倒的に多い。1万人の金持ちがいて、たぶんひとりいるかいないかだ。いても絵画の価格を見て買うような醜悪な連中ばかりだ。その点、この女性は画家の名前も有名度も知らないまま、作品を一目見ただけで気に入った。心が豊かなのだ。そういう女性がようやく出会って結婚した男性との毎日が楽しくて仕方がないというのは、何とも心温まる。40過ぎの女性でも心が明るく素直であれば、それに釣り合った男性が現われて結婚出来る現実を示している。ふたりの子どもはもう期待出来ないが、夫婦が仲良く満ち足りた気分で暮らせればそれで充分ではないか。そこに1点の絵画が大きな役割を果たしている。ピアニストの高橋悠治は部屋に絵を飾らない、そういうことが嫌いだと本に書いていた。家庭的な落ち着きを得ると創作力が鈍るとの思いからだろう。何となくそれはわかるが、絶対的な何かを欲している人は心のよりどころとして芸術作品を求める。護符みたいなもので、それがあることで幸福感が得られる人がいる。それゆえ人間は絵を描くことをやめない。音楽も同じで、創作過程の苦悩を通して満足にやり切れたという思いがほしいために作曲、あるいは演奏する。長谷川潾太郎は1点の絵に数年以上を費やすことが珍しくなかったが、そういう悠然さが絵に刻印され、鑑賞者はそれを瞬時に感得する。
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 八坂神社は去年本殿が国宝に指定され、疫神社は重要文化財となった。駒札にはこの神社についての面白い話が書かれる。祖神が諸国をめぐっていたある夜、裕福な巨旦将来に宿を請うて断られ、弟の貧しい蘇民将来に粟の粥で手厚くもてなされた。そして祖神は、疫病が流行しても茅の輪をつけて「蘇民将来の子孫なり」と言えば厄を免れると蘇民将来に約束し、後に巨旦将来は子孫が途絶え、蘇民将来の子孫は栄えた。これと似た話は小学生の道徳の授業で学んだが、今は他人に親切であれと教えることは昔ほどではなくなったのではないか。児童や生徒に悪いことをする教師が増え、親も教師に尊敬の念を抱かない。さらには小学校の卒業証書を破って中学校に進まず、YouTubeで稼ぐことに熱心な親子がいる。これらは為政者が愚者だらけであることにもよる。金は持っていても人助けをしない者はいずれ廃れるという疫神社の由緒は、いつの時代も貧しい人はそうでも思わない限り、心の持って行き場がないことを示す一方、やはりその象徴的な話は真実を突いている。人が人を助けるのでなければ他の何が助けるというのだろう。40少々の主婦が長谷川潾太郎の絵を本能的に素晴らしいと感じ、それを大枚叩いて買ったのは、長谷川の純粋な心に触れたからだ。そういう彼の絵を壁にかけ、毎日眺めて金婚式まで生きようと思うことは欲張りではなく、実際に心は安定し、長生き出来るだろう。今日の最初の写真は疫神社にあった絵馬で、この若きイラストレーターが描いたとおぼしき絵が実に素晴らしい。コロナ禍以前にどういう絵柄の絵馬があったのか知らないが、コロナウィルスを一刀両断にしている八坂神社の祭神スサノオノミコトの勇ましくてかわいい表情は、Tシャツや鞄などに使って神社の売り上げに貢献出来るものと言ってよい。コロナ禍に対応してこういうデザインが生まれて来るところに逞しさを思う一方、コロナで閉塞感のある時に少しでも微笑ましさを惹き起こすものとして神社とイラストレーターの尽力に頭が下がる。2枚目の写真の「疫病退散絵馬願掛け所」の文字は疫神社であるので昔からかもしれないが、コロナ禍によって一気に出番が増えたであろう。かけられている絵馬の数が少ないのが気になるが、コロナ禍で花見の季節も自粛を求められていたからには仕方がない。今年も祇園祭りの巡行はなかったが、鉾は建てられた。荒縄で縛って鉾を組み立てる技法が2年も途絶えると伝承が難しくなるからだ。予測ではコロナは来年も続くそうだが、オリンピックが終わると大規模なお祭りは大阪万博までなく、政府もコロナ終息に本気を出すだろう。疫病神のように嫌われている五輪だが、庶民が疫をぶった斬るスサノオノミコトの刀の餌食になってほしい政治家も、コロナの終息ととともにすっかり消えてほしいものだ。疫病は人間がもたらすもので、何事も元凶は醜い心を持つ人間だ。
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by uuuzen | 2021-07-15 23:59 | ●神社の造形
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