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●『夏の香り』
心が 揺れて別れて また揺れて 挙句は老いの ひとりの暮らし」、「中心は 吾のみとして ここに照り 他はみな惑う 遠き星くず」、「我慢せず 好きに生きるが 勝ちの価値 後悔なきが 晴れの航海」、「好き嫌い ありて当然 何事も 多様左様の 選び選ばれ」



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ケーブルTVのJ.COMと契約していることもあって、たまにその無料番組を見るが、今年2月にユン・ソクホ監督の『秋の童話』が始まった。月曜日から木曜日までの週4回の放送で、家内が毎晩見るそばで見るともなしに見たが、正しく言えば後半のたぶん5分の1程度しか見ず、どういう内容なのかわからなかった。それが終わった後、『冬のソナタ』が始まり、これは全回をじっくりと鑑賞した。ノー・カット版とのことで、毎回わずかに放送時間の長さが違った。ただし、高校生役のチェ・ジウが校内の放送室でレコードをかけてひとりで踊る場面は最初の放送時に使われたアバの曲「ダンシング・クイーン」ではなかった。そのことに気づくと、あちこち違う箇所もわかったが、そのことはさておいて、昔見た時の感動はあまりなかった。何度か見て内容をよく知っているからだろう。『冬のソナタ』が終わった翌日、4月13日から予想どおりに『夏の香り』が始まった。全18話で、最終回は5月13日であった。韓国で2003年、日本では地上波では2年後に放送された。当時の評判がどうであったか知らないが、『冬のソナタ』の大人気の陰に隠れたであろう。最近評判になった『愛の不時着』にヒロインであるソン・イェジンが主役を務め、また彼女が21歳の時の撮影であるので、美しさは群を抜いている。ついでに言えば、彼女は3年前、つまり36歳でTVドラマ『よくおごってくれる綺麗なお姉さん』に出演し、先日その1話だけ録画して家内が見たが、30半ばの仕事を持っている独身女性が会社の若手に奢らされ、露骨に嫌味を言われる様子を見て、「最近の若い女性は少し年配の女性を尊敬するどころか、ひどい仕打ちをする」と憤っていた。それは家内の実際の職場での経験も反映しての言葉で、ソン・イェジンがもうそういう役をするほどに年齢を重ねていることに月日の経つ早さを実感した。女優は年齢を重ねてそれに見合う配役が来るのはあたりまえだが、彼女はまだ美貌を武器にした演技が出来るだろう。そのことに無理が生じるのは40歳になった頃かと思うが、『愛の不時着』ではどういう演技を見せたのか、筆者は興味がある。いずれDVDを入手するか、TVの放送を待ちたい。筆者は彼女のファンではないが、『夏の香り』では見事に演じ切っていて、彼女の持ち味は気弱なはかなさにある。チェ・ジウにはそういう演技は似合わず、またそうであるので『冬のソナタ』は人気があったのだろう。こう書けば『夏の香り』は悲しみを基調にしたメロ・ドラマと思われがちだが、「秋の童話」のようにヒロインは死なない。
 それどころか最後の最後でハッピー・エンドとわかり、後味がとてもよい。それがとても意外で、そのためにブログに感想を書く気になった。筆者はどの俳優が登場し、どういう内容の作品かは全く知識がなかったが、毎回録画しながら最初の回からリアル・タイムで見た。それほどに楽しく、放送のない金、土、日曜日が早く過ぎてほしかった。ただし結論を言えば、多忙な人は最初と最後の回だけ見ればいいかもしれない。それほどに途中の16話は、だらだらと進むと言うのではないが、やきもきさせ続ける。映画と違って連続ドラマであるのでそれは仕方がなく、またその「明日も見よう」との思いを起こさせなければならない。ふたりの男の間でどっちつかずのヒロインの行動から彼女は最後に死ぬだろうと予想するが、監督は視聴者のその思いを見事に裏切る。ところで、ユン・ソクホは映像が美しいと評される。そのとおりで、本作は映像詩と言ってよい仕上がりで、悪人がひとりも出て来ず、大声で怒鳴る場面がないことも気持ちよかった。筆者が韓国ドラマを見なくなった理由のひとつは、罵り合う際の大きな声が我慢ならなくなったからだ。喧嘩はドラマの要素だが、怒鳴り合う場面が強調され、数多いと疲れる。気持ちよくなりたいために娯楽は存在する。怒鳴り合う場面を見て気持ちが和らぎ、胸がすく人は少ないだろう。ユン・ソクホは柔和な性格と思う。映像はどこを取っても絵画的に美しくあるべきで、またそこに美しい音楽と美しい俳優の演技、そして台詞を使う。そういう意味で本作は同監督の頂点に位置するのではないか。本作が終わった直後から同監督の四部作の最終ドラマ『春のワルツ』が始まった。筆者はそれが最初に日本で放送された時にわずかに見て興味が持てず、今回はひとまず録画をしようと思いながら、第2週目の4話が録画出来なかった。また昔気になったのと同じく、ヒロインの着衣の派手な濃いピンク色が画面の色彩効果を考えてのこととしても、あまりに目立ち過ぎ、演出の過剰さが鼻につく。画面の美しさにこだわるのはいいが、作り込み過ぎれば嫌味になる。『春のワルツ』にはその負の面が出ている。ただし、ついでに書いておくと、10数年前に見た時、たぶん全羅南道の海沿いの街を高度100か200メートルから俯瞰する場面があり、その街のたたずまいが日本にはない珍しさで気になった。その場面を確認するために録画をいずれ全部見ようと思う。なおついでながら、同作は田舎で暮らす子ども時代の場面が多く、その田舎の家の屋根その他も赤や青、黄色の原色の対比が強烈で、不自然さを感じる。その点、本作は緑の多い雨季を舞台にし、しばしば登場する全羅南道の茶畑も緑で、全体に瑞々しい仕上がりになっている。夏が好きな人向きと言えばいいか、ロケ地の美しさに現地を訪れたいと思う人がきっと少なくないだろう。
●『夏の香り』_d0053294_01005777.jpg
 『冬のソナタ』にしても韓国ドラマはあまりに現実離れしていると言われる。『秋の童話』という題名が示すように、ユン・ソクホ作品はどれも童話で、本作も『夏の童話』と題してもかまわない。現実にあり得ないことをさもあるかのように描くが、それはロマン主義であって、リアリスムの観点から見ては楽しめない。西欧ではロマン主義の後にリアリスムの時代、そしてリアリスム後にシュルレアリスムがあり、今はそれから100年も経っている。作品にロマンを標榜するのであればネオロマンと呼ぶものになるだろうが、さまざまな手法が混在する時代にあって、現実を理想化し、そこに純粋さを認めて楽しむ態度はあってよい。非現実的として排除し、とことんリアリスムにこだわる立場もあるが、それとてロマン主義と同様に今では古臭いだろう。筆者は見た韓国ドラマをほとんど忘れてしまったが、ユン・ソクホのピュアなロマンティシズムはおそらく昨今の韓国ドラマにはないだろう。そう思うゆえに本作を見て大いに感じ入った。あまりの純粋さを描く作品は気恥ずかしくて見られたものではないという意見があることは承知している。韓国ドラマを全く見ない日本の男性はたぶんそういう先入観がある。また恋愛ドラマなど、若い娘が見るもので、甘いも辛いも知った男が見るものではないという意見もわからないでもないが、ロマン主義のひとつの特徴は恋愛を謳い上げることだ。ユン・ソクホはそれを最重視し、また男女2組を登場させていわば型どおりに失恋する者と恋愛が成就する者とに分ける。本作は『冬のソナタ』とほとんど枠組みは同じと言ってよいが、ソン・イェジン演じるヒロインのへウォンは心臓が悪いが、その後心臓を移植によって健康になり、恋愛もするというところからドラマは始まる。その点は現実的だが、移植された心臓の持ち主の精神がヒロインの心を左右するという、一見あり得ない設定でドラマは進む。またヘウォンは心臓のドナーが男性と思っているが、実際は同世代の女性で、しかも彼女はソン・スンホン演じるミヌと恋愛関係にあった。ミヌは若くして死んだ彼女が忘れられず、傷心のまま3年ほどイタリアに建築デザインの勉学に行き、韓国に戻って来た時に空港でヘウォンと擦れ違う。ヘウォンは結婚を迫られている金持ちの息子チョンジェが外国から帰って来るのを迎えに行ったのだが、ミヌと擦れ違い様、心臓の高鳴りに気づく。心臓の以前の持ち主である女性がミヌを恋しく思っているからだが、当然ヘウォンはそのことを知らない。ヘウォンの心臓の高鳴りはその後何度も訪れ、ヘウォンは移植された心臓によってミヌに接近して行く。本作は最初の回がなかなか見物で、空港で擦れ違っただけのヘウォンとミヌは山登りでまた出会い、その後怪我をしたヘウォンを見ぬが見つけて一緒に山小屋に泊まるということにもなる。
 そこで関係が終われば現実にありそうなことだが、チョンジェの所有するホテルの内装をミヌが請け負い、フローリストであるヘウォンはそのホテルで仕事をするという経緯からふたりは距離を縮めて行く。チョンジェはなかなか立派な男で、ヘウォンを信じ切るが、ミヌがかつての死んだ恋人を忘れ、ヘウォンを愛していると気づき、そのことをヘウォンヤチョンジェが知るに及んでチョンジェも強引になる。ところがやはり紳士で、ヘウォンを自分の嫁にすることよりも、ヘウォンの幸福を第一に考える。それどころかそのための多額の費用も惜しまない。これが現実の話であればおそらく刃傷沙汰になる。チョンジェは醜さを露わにするだろう。ミヌもそうかもしれない。そういう修羅場を一切描かず、ヘウォンの気の済むように、ヘウォンの健康が第一と思ってチョンジェ、そしてミヌも行動する。ヘウォンがふたりの男の間を揺れ動くのは、チョンジェとは婚約式まで挙げる寸前の仲であったためを思えば無理もない。ヘウォンはミヌが登場しなければチョンジェと結婚していた。ところが運命の悪戯あるいは必然か、ヘウォンに移植された心臓はミヌを追い求めていた。最終話近くなってヘウォンは自分の心臓がミヌの忘れられない恋人のものであることを知る。そうなればそれまでのミヌとの関係は心臓が導いてのことで、自分の本心ではないかもと疑い始める。それにミヌが自分のことを愛していると言うのは、心臓に引き寄せられているだけだとも考える。この疑念は彼女を苦しめ、疲弊させる。そして本作を見る者はヘウォンは死んで、ミヌは二度恋人を失うと想像するが、それではあまりに悲恋で、『秋の童話』に近い作品になる。そこで脚本家は大胆なことを考えた。それはもう一度別人の心臓を移植することだ。実際そのような事態が最終話で生じる。二度の心臓移植が現実的かどうか知らないが、筆者が思ったのは現実問題として、彼女の胸を二度大きく切り開けば、その傷跡は酷く、彼女をチョンジェやミヌが抱くとして、その時の気分は労りが先に立って、性的な衝動が起こりにくいのではないか。つまり、よほど愛しているのでない限り、男はもっと健康な女性を選ぶだろう。美女を娶りたいのはよくわかるが、筆者は最近は美女よりも心身ともに頑丈であることを最優先したい。もちろん美女で頑健であれば理想だが、美人薄命と昔から言われ、本作のソン・イェジンはそれをそのまま体現している。つまりそれほどに演技がうまく、『愛の不時着』が大人気であったことも何となくわかる。ただしそのドラマではどういう役柄であるのかは知らない。家内は彼女に似た日本の女優として大竹しのぶを挙げたが、顔は確かに似たところがあるが、セクシーさはソン・イェジンがはるかに上で、また本作ではセクシーさを出そうとしていないところに却ってセクシーさがそこはかと滲み出ている。
 さて、『冬のソナタ』と同じく、にっちもさっちも行かなくなった関係を一旦断ち切るべく、最終話の最後ではヘウォンが倒れて3年後が描かれる。ヘウォンは無事にアメリカで心臓移植の再手術に成功し、また元どおりにフローリストとして働いている。一方、ミヌも留学先から帰り、元の生活に戻るが、ふたりは以前のようにまたたまたまソウルの街中、コンサート・ホールの階段で擦れ違う。雨の日で、ふたりとも傘を差している。以前ならヘウォンの心臓がミヌに接近すると高鳴っていたが、他人の心臓を移植したのでもうそれはないはずだ。ところがミヌに擦れ違う瞬間、ヘウォンは心臓の高鳴りに気づき、ミヌがそばにいることを知る。最初にふたりが出会った時からふたりは運命的であったというわけだ。ヘウォンは初めて自分が本当にミヌを愛していることを知り、ふたりは結ばれるだろう。その背後にはチョンジェの献身的な愛があった。またチョンジェの妹はミヌを愛していたが、その思いももう忘れねばならない。ヘウォンはチョンジェ一家を裏切った形になったが、愛し合う者が一緒になることは誰にも妨害出来ない。そういう理想の愛がこの世に存在しないと言う人はいる。そんな人はロマン主義の作品を好まない。だが、女も男もいろいろで、一生ひとりの男しか知らない女はいくらでもいる。そういう女を嘲笑する女がいるだろうが、男女は似た者同士が一緒になる。30を超えた女性が次々と男性遍歴を重ねるとして、男はそういう女性に責任を負おうとはしないものだ。責任を負うとすれば最初の男がすべきであって、適当に遊んでおさらばしようと考える男はいつの世も無数にいる。そして女もそれを知っているから、ますますろくな男としか出会わない。本作のヘウォンは資産家のチョンジェと結婚せずに、いわばしがない風来坊に近いミヌと一緒になることは、やはり似た者同士と言うべきだろうが、ヘウォンが金よりも真の愛を選んだのは女性の決心としては最大の美と讃えてよい。それを与えてくれる女性に男は身震いして一生を覚悟するものだ。本作は『冬のソナタ』と比べて音楽的に独創性は劣る。それはシューベルトの「セレナーデ」が特徴的に使われ、大ヒットした主題歌がないからだ。また古い曲としてヴィッキーが歌った「カーザ・ビアンカ」(白い家)のメロディが何度も使われるが、ユン・ソクホは同曲がヒットした60年代を青春としてよく記憶しているのだろう。そう言えば『春のワルツ』はついに海外ロケを行ない、音楽家をテーマにしている。芸術家を主役にするドラマは日本ではほとんどあり得ないが、前にも書いたことを繰り返すと、『おしん』はただの田舎の女性が経済的に成功した話で、筆者は少しも面白いと思わない。経済的に成功して芸術家を支援し、美術館を建てるという話なら面白いが、女を何百人抱いたなどとどうでもいい話に騒ぐ世間で、日本ではロマンは死に絶えた。
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by uuuzen | 2021-05-28 23:59 | ●鑑賞した韓国ドラマ、映画
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