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●『光冠(コロナ)茶会』におけるヤノベケンジの「渡月藻庵」その4
の巣 日々に大きく なりし頃 花咲き代わり 虫も増え行く」、「かげろうの 乱れ飛び交う 嵐山 夕日沈みて 色なき緑」、「新緑の 川面に出る かげろうの 生の終わりの 乱舞ランデヴー」



●『光冠(コロナ)茶会』におけるヤノベケンジの「渡月藻庵」その4_d0053294_16465386.jpg福島の原発絡みで作品が全国的に知られたヤノベケンジはそれに懲りたかと言えば、コロナ禍で「サン・チャイルド」と同じく、旧作に対する自己解釈を新たにし、それによって作品を部分改変して今回は「渡月藻庵」と題して渡月橋の背景に元「黒い太陽」を展示した。その時期が嵐山の桜がまだ2,3分咲きの頃となったのは、人の三密を避けるためだろう。「その2」に載せた2枚目の写真の作品説明パネルの立て看板は、その脚下に風で飛ばされないための重しが置かれているが、そこに「京都会館」の白い文字がある。これは今回の作品展示に京都会館が関係していることを示すが、2年前の祇園祭りの時期、京都会館と京都市立美術館の分館が囲う中庭で、大音量を鳴らしながら音を奏でている集団を見かけた。現代芸術の音楽部門の展示としての演奏であったと思う。賞金が出たのかどうか知らないが、商店が並ぶ街中では絶対に無理な音で、演奏場所を提供されただけでも表現者にとっては嬉しかったろう。「藻庵」は大きな美術館の中ない敷地では展示出来るが、美術館に足を運ばない人たちに見てもらうには、嵐山の中ノ島公園は最適だ。コロナ禍で打撃を受けているのは芸術家も同じとのことで、ヤノベほどの名声のある作家ではなおさら税金で援助しようというのは、京都らしくていい。ヤノベは芸術大学の教授になっていて、その意味では経済的にも大いに恵まれており、京都市が援助せずとも同大学が敷地と資金を提供して同大学内で恒久的な展示をするのが筋と筆者は思うが、芸術家に使うべき確保された税金があり、また昨年度つまり3月末日までにそれを使わねばならないという理由で、ヤノベに話が行ったのではないかと下衆の勘繰りをする。つまり年度末の道路工事と同じで、慌てて税金を使い切ってしまおうという役所の考えだ。年度末であれば、3月31日を展示の最終日とすれば、桜は満開で、「藻庵」はMOREとインスタ映えしたはずだが、そこは前述のように人が密集すれば抗議が殺到する懸念があった。その痛し痒しの間で3月21日までの4日間が選ばれたのだろう。それから1か月経った今、「藻庵」の展示がそれを見た人たちからどういう感想を持たれたのか、筆者はネットで調べないのでわからないが、筆者がこうして4日にわたって長文を綴っているので、それなりの反響はあった。とはいえ、ヤノベが原発やコロナという社会的な大惨事に自作を絡めて意味づけしているからには、純粋に作品の構成美だけを論じるわけには行かない。それに「藻庵」の主体は最初の「黒い太陽」と基本的に同じであるにも関わらず、コロナ禍があればそれに関連づける行為は、お調子者の謗りを免れない。
●『光冠(コロナ)茶会』におけるヤノベケンジの「渡月藻庵」その4_d0053294_16472155.jpg
 とはいえ、『光冠茶会』のひとつとしてヤノベの「藻庵」がある。『光冠茶会』の他の作品について調べていないが、コロナ禍下で茶会を開く考えは糾弾されるべきことではない。それにたとえばヤノベは毎日人数限定で予め茶会のチケットを販売し、菓子を送付してリモート茶会を開いたそうだ。そのことは今日の写真を撮った最終日の雨天、雨合羽を被って作品の撤去を細々と行ない始めていた若い男性に話しかけて聞いた。今日の最初の写真にあるように、「藻庵」には1か所だけ突起が取りつけられず、内部が見えるようになっていた。中に照明はないので真っ暗だが、突起の接続部のごくわずかな隙間が白く写っている。またこの穴の前に飛び石状に大きな石が数個置かれ、17日に見た時に筆者はそれを伝って中に入れるのかと思ったが、そのように見せかけているだけで立入り禁止にされた。「藻庵」というのは、このサザエ状の鉄の立体作品の内部を茶室に見立てたもので、それならば実際に内部でお茶を飲ませればよかった。コロナ感染を避けることが難しいという理由からリモート茶会になったのだろうが、別の理由として、丸い穴がひとつでは内部は暗過ぎて、そのままでは茶席には出来なかった。それでもう2,3個穴を開けると明かり取りには問題がなかったが、そうなると外観がサザエから遠くなる。やはり痛し痒しで、内部を茶室とすることは無理だ。またこの作品を茶室に見立てたのは、去年の展示で「藻バイルハウス」を謳ったことの延長の思いつきで、それを「深化」と呼ぶには自画自賛ぶりが過ぎる。「藻庵」はほとんど言葉遊びで、深い思想は感じられない。ただし、本人は植物の種子や藻類に関心があるようで、それで今回は鉄に対して水面と木の立て看板風浮き彫り作品を持ち込んだ。その浮き彫りは昨日の最初の写真からわかるように、ひまわりの種子が集まる円形や、水中の藻類を表現している。「藻バイルハウス」はこの鉄のサザエを最低限自給自足出来る空間を意図した家とするもので、どこまでが本気で冗談かわらないが、真面目に受け取ると、人間は藻を主食として、この鉄の家を藻が繁殖出来る世界中のどこへでも運んで自給自足出来ることとなって、内部の暗がりで飲むお茶はクロレラだろうと想像する。また、外に突き出る多くの突起は、洗濯物を干すにはつごういいかもしれない。とはいえそれには梯子を設置する必要があり、またてっぺんから降りる際に足を滑らせて突起に身体を串刺しにされる可能性がある。そのため、尖った箇所に展示期間中に周囲に置かれていた赤いコーンを被せておくのがよい。火山の噴火で岩石が飛来しても内部にいればランダムな大騒音を聞くだけで身は安全で、縄文時代の竪穴式住居の雰囲気も味わえる。ただし、運んで組み立てるのは高齢では無理で、専門の業者が必要で、彼らと製造の鉄工所が大繁盛、「藻かる(儲かる)ハウス」だ。
●『光冠(コロナ)茶会』におけるヤノベケンジの「渡月藻庵」その4_d0053294_16474029.jpg
 一段落した気分だが、五分咲きの桜が遠目に見える写真を使うためにもう一段落書く。クレーンがなくては移動出来ない巨大な作品を制作しているヤノベだが、「藻庵」の前に立てられた種子や藻を表わす板看板的浮き彫りは、鑿で彫ったものなのか、電動の道具で彫ったのか、いずれにしても優れた技術による。そういう手技の作品をヤノベが頻繁に作っているのかどうか知らないが、ヤノベのファンは家に飾れる作品を欲するであろうし、今回の板看板的作品はその対象になる。そこで筆者は「藻庵」を見て真っ先にオルデンバーグを思い出した。ハンバーグや洗濯鋏など、 日常で見慣れた工場製品を巨大化した作品で名を馳せた彫刻家で、そのあっけらかんとした無意味さはアメリカによく似合っている。翻ってアメリカに比べて圧倒的に狭い国土の日本では同様の立体作品を作っても展示場所に困る。それでヤノベは分解可能な「黒い太陽」を考え、またそれに新たな理屈をつけて使い回ししているが、オルデンバーグに比べるときわめて日本的で、言葉を変えれば貧しさを露呈している。日本ではオルデンバーグの手法は無理なのだ。もうひとり想起したのは画家のウェッセルマンだ。彼が扱う裸婦のイメージはヤノベにはないが、ひとつ参考になるのは、ウェッセルマンの鉄を使った透かし彫り的絵画だ。筆者は彼のそうした一連の作品をとても高く評価する。ウェッセルマンは鉄製の門扉に着想を得たのか、鉄を素材に裸婦を溶接技法で線描表現し、しかもカラフルに着色していることは、見た目も美しく、裸婦のポルノ的エロティックさを浄化してもいる。そういう味わいは日本の美術家からは生まれにくいが、鉄を素材にしても日本は手技では負けない。ヤノベは日本的特徴を出すためにアニメ文化に作品を同化させようとしたような「サン・チャイルド」を作ったが、昭和30年代以降の漫画やアニメの娯楽はその世界で充足、完結していて、今の世代の芸術家が感化を受けつつ別の思想的文脈に置こうとするのは、漫画やアニメをいわば見下しているように筆者には感じられる。そこには娯楽と芸術の違いがどこにあるかを議論せねばならないが、ヤノベが自作に添える言葉は芸術性、社会を見つめる思想性を伝えるためとしても、鑑賞者はまず作品そのものに対峙し、「藻庵」であればその迫力に接して「あ、面白い」などと感じるであろうし、それで充分と言える。つまり、ヤノベの作品は娯楽的側面が真っ先に享受されやすく、そのことは「サン・チャイルド」が最もよく示している。ウェッセルマンの前述の裸婦を鉄で表現する透かし彫り的絵画は、手技により、しかも個人が家に飾ることの出来るサイズで、アメリカのポップ・アートの作家が巨大な作品ばかりを手がけなかったことの端的な例となっている。ヤノベも個人コレクター用に小さな作品を作っているのかもしれないが、「藻庵」を掌サイズにしても少しも面白くない。
●『光冠(コロナ)茶会』におけるヤノベケンジの「渡月藻庵」その4_d0053294_16475962.jpg

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by uuuzen | 2021-04-17 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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