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●映画『ZAPPA』その5
から ヒント得て書き ヒットして」、「大ヒット なければないで 代打あり」、「信じれば 真理の心理 芯が見え」、「信なくて 道もなき世の 暗闇や」、「くらっと病み 気づけば光る 過ぎし日々」



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本作は『自伝』に基づきつつ、『自伝』後の活動を加え、ザッパの誕生から死までを2時間で概観するものだ。ゲイルやアレックスが最も重視して描きたかったのは、ソ連崩壊からチェコスロヴァキアのビロード革命へのザッパの関わりと、ドイツの若手現代音楽家集団のアンサンブル・モデルンとの出会いによる『ザ・イエロー・シャーク』の公演の2点であったと見てよい。ザッパは1988年のロック・ツアーを最後に人前でギターを弾かなくなり、もっぱら自宅での作曲の日々を送ったが、一方ではヨーロッパの大きな時代のうねりに乗じて商機が訪れたと考え、ロシアやチェコを訪れた。後者では、若き頃にザッパのアルバムを聴いた、独立したチェコの初大統領となったハヴェルがザッパを大統領府に迎え、またロック・ミュージシャンとの共演があって3年ぶりにザッパはギターを大観衆の前で弾いた。その時の舞台裏でのザッパの姿から本作は始まる。アメリカ映画によくある手法で、映画の最後の場面を冒頭でわずかに見せるが、肝心のそのギター演奏の場面は第9章の終わりにわずかに使われる。つまり、第1章の冒頭と第9章の最後がつながっていて、第10章が『ザ・イエロー・シャーク』の初演までの練習風景と初演の様子を紹介する。ザッパの音楽家人生がドイツの演奏家たちによって歴史ある旧オペラ場で初演されたことで頂点を迎えたという描き方で、その初演で病を押して見事に役割を果たした夫の姿を見たゲイルが、大喜びで立って拍手をする場面が本作に使われる。ついでながら筆者は今日の2枚目の画像の同公演会場の座席では、赤印の箇所に息子と隣り合って座ったが、3枚目の黄色の矢印が筆者だ。ところで、第5章の冒頭に2006年のアリス・クーパーのインタヴューがあって、彼はザッパが大ヒット曲を持たないことを気にしていたと思うと発言する。ロック界では大ヒット曲数が多いほどにビッグであると持てはやされる。世界的大ヒットが1曲でもあれば長年記憶され続け、うまく立ち回れば経済的に困窮することはない。その意味でビートルズは世界一のロック・グループだ。本作ではザッパがインタヴュアーから「成功した」と言われると、ザッパはビートルズが成功の言葉に値すると返答する。ザッパにヒット曲がないわけではなく、「黄色い雪を食べるな」はアメリカでよく売れたが、日本ではシングル・カットされず、ほとんど知られなかった。おそらくアメリカと同じで、日本ではザッパは敬して遠ざけられる立場にあり続けた。「敬して」というのは、オーケストラの総譜を書く才能があり、ロック畑に収まり切らなかったからだ。
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 本作でゲイルが発言するように、ザッパは「アメリカの作曲家」を自称し、ロック・ミュージシャンに限定されることを拒否した。その土壌で勝負するのであれば、大ヒット曲を多く持つ者が勝つからでもあろうが、70年にザッパは、「ハッピー・トゥゲザー」という日本でも大ヒットしたビッグ・ヒット曲を持つ元タートルズのフロ&エディのふたりをメンバーに迎え、ザッパは同曲をステージでカヴァーし、またグルーピーの話題を絡ませてふたりのヴォーカルを前面に押し出す一連の組曲を書いた。フロ&エディはビッグ・ヒットを放った点でザッパより威張ってよかったが、実際は臨時雇いの操り人形であると自覚した。それは間近でザッパの音楽家としての途方もない才能を知ったからだ。つまり、大ヒット曲が意味を持たない世界が音楽にあることを知ったのだが、その謙虚さ、賢明さを知らないロック好きは多いだろう。そういう連中が大多数を占め続ける限りはザッパの名前は忘れ去られるのが早いはずで、そのことがアメリカでは当然のごとく訪れるとザッパは思っていたであろう。その悲観はごく若い頃に芽生えた。ヴァレーズのLPが発売から3,4年後に割引で買えた時に気づいたはずだ。真の芸術はアメリカでは生まれない。その幻滅を抱えながらいかに新しい音楽を作るか。ザッパの生涯はその困難への挑戦であった。戦後の日本はアメリカを何事も模倣し、どんな方法でもいいので、人気を得て大金を儲ければ成功者と讃えられる。世間では成功の言葉は経済的成功を意味し、わずかな人だけが知る芸術のようなわけのわからないものは無視すればよく、そのとおりに日々事は運んでいる。わずかな人だけが知る作品や作者は世の中に常に無数に存在するが、当然玉石混交状態であるから、玉を石との峻別を誰しも行ないたいと思っているし、またそうしているが、そこには好悪の感情が最優先し、石を玉と思い込む自由がある。それゆえ、ごくわずかなファンを持つミュージシャンが細々ながらも生きて行ける世の中になっているが、ビッグ・ヒットのないザッパをそういう冴えないミュージシャンと同類とみなす向きは日本では今後もなくならないだろう。そんな無知が跋扈する世間に対して抵抗を試みたのが、ゲイルであり、その意思を継いだアレックスであった。本作はそういう観点で鑑賞すべきものだ。ところが筆者が口酸っぱく言ったところで、相変らずザッパを一風変わったロックとしか捉えられない人は今後もわさわさと出て来る。コードを3つ知れば誰でもギターを弾きながら路上で歌えるもので、そうして名声を得た幸運なミュージシャンにザッパが10代半ばで作曲した楽譜を見せればよい。元々ザッパは目指していたものが高度であり過ぎたが、芸術とはそういうものだ。真実を見抜くごくわずかな人がその文化の伝達者となるのは、いつの時代でも同じだ。
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 各章の内容を概説しておく。1「芸術家の誕生」は、両親の結婚式から子ども時代、軍の武器庫で働く父の職業、毒ガス、カレッジ、ヴァレーズや黒人ブルースとの出会い、黒人混合アマチュア・バンド結成までを描く。2「音楽との出会い」は、ザッパのイラストの才能の紹介、2本の映画音楽の作曲、スタジオZの経営から収監、マザーズ結成、ウィスキー・ア・ゴーゴーでの演奏、パメラ・ザルビカやゲイルとの出会い、3「マザーズ対世界」は、トム・ウィルソンとの出会い、『フリーク・アウト』録音、ニューヨークのガリック劇場に出演、「オー・ノー」に関わる ルース・アンダーウッドのインタヴュー、4「ザッパの勃興」は、『マニー』のジャケット撮影、ムーン誕生、レーガン知事誕生、ロスに戻ってログ・キャビン生活、ロック界の有名人との出会、GTO、ドゥイージル誕生、チャールズ・マンソン事件、5「独創の時代」は、第1期マザーズ解散、フロ&エディ参加、ロス・フィルとズビン・メータとの共演、ジョージ・デューク、ジャン・リュック・ポンティ、ジョン&ヨーコ、映画『200モーテルズ』、6「絶えざる変動」は、ロンドン公演で男から怪我を負わせられた事件から車椅子生活、足を引きずって歩くザッパとゲイル、ハーブ・コーエンなどの映像、ロキシーでの演奏、パラディアムでの「マフィン・マン」、スコット・テュニスやヴァイの話、イタリア・ライヴ、ルースとジョーの共演「ブラック・ページ」、7「ロックンロール全盛」は、78年にTVショー「サタデイナイト・ライヴ」出演、コーンヘッドとの演技、「ダンシング・フール」、「ハーブの休暇」のライヴ演奏、ワーナー訴訟、バーキング・パンプキン設立、通販開始、レーガン大統領就任、MTV時代、リムジンに乗るザッパ、13歳のムーン参加の「ヴァリー・ガール」大ヒット、8「一企業家としての芸術制作」は、クロノス・クワルテット「ナン・オブ・アバヴ」、ケント・ナガノ指揮の「ペドロの持参金」、ロンドン交響楽団、次男アーメットと次女ディーヴァのTVゲーム遊びの一方、ザッパはシンクラヴィアで作曲、ブーレーズとのインタヴュー、84年ライヴ、9「無謀な戦い」は、歌詞検閲推進団体PMRCとの闘い、TVショーで意見表明、公聴会への出席、88年のスペイン・ライヴ「ボレロ」、89年のビロード革命、マイケル・コハブとの出会い、チェコ空港での歓迎、ハヴェルと会見、91年11月7日にムーンとドゥイージルがザッパの前立腺癌を公表、10「最後の日々」は一気にトーンが変わって悲しみの色合いが濃くなり、最も感動的な章となる。特にルースが語る最晩年のザッパと抱き合った時の辛い話は、もらい泣きさせられる。理解者はルースだけではなく、本作のためにインタヴューを受けた元メンバーそれぞれに尊敬の念がある。アレックスもそうで、本作を見る人からも新たに生まれる。
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by uuuzen | 2021-03-22 14:18 | ●ザッパ新譜紹介など
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