人気ブログランキング | 話題のタグを見る

●映画『ZAPPA』その4
の物を 好むスパイの 酸っぱい謂」、「スパイスに 酸っぱさ足した すっぱ抜き」、「特ダネを ほしがるだけは 特に駄目」



●映画『ZAPPA』その4_d0053294_00143485.jpg
今日は本作の後半の5章を見たが、前半の思いをまだよくまとめられない。これは表現しにくいが、本作を見ながら夢を見ているような不思議な気になる。たとえばそれは、この世にいないザッパはさておき、ゲイルが元気でインタヴューに応じているからだ。彼女が今生きていればもう少し老けているはずであるから、本作で元気でゲイルが語る姿が何年何月の撮影かを表示してほしいと思いながら見た。書籍ではそういうことは脚注で記されるが、本作ではどのインタヴューもいつのものかは表示がない。本作のために撮影したインタヴューはマザーズの元メンバーのバンク・ガードナー、イアン・アンダーウッド、ルース・アンダーウッド、スティーヴ・ヴァイ、マイク・ケネリー、そして粘土アニメーターのブルース・ビックフォードだが、一方たとえばジョニ―・ギター・ワトソンやアリス・クーパーらのインタヴュー映像も同じ画質で使われ、またそれら過去のインタヴューの引用もその旨が画面に記されないので、時間の感覚がいささか狂う。ジョニ―・ギター・ワトソンはもうこの世にいないから特にそうだ。過去の映像を使いつつ新たな映像を随所に挟む本作は、2020年の完成時点を念頭に見る必要があって、今後年々古いものになる。それはあたりまえのことだが、俳優が集まって短期間に撮影した劇映画と違って、本作はザッパの生涯を時代順に描きつつも最初の章に最新のインタヴューが挟まれ、最終章でフラッシュバックとして初期の映像をふんだんに使うなど、時間の流れが一様ではない。そのため、絶えず眼前の場面は何年のものかと確認しながら見るため、その点でも疲れ、印象深い夢をたっぷり見て目覚めた、あるいは本作のことを思い出す限りは目覚めないような感覚に襲われる。たとえば、24歳のザッパがスタジオZで、客を装った刑事の策略に引っかかり、19歳のガールフレンドとの性行為を録音したという罪をでっち上げられて刑務所に収監される事件を伝える場面では、まず当時の新聞記事が映り、次にビックフォードが収監されたザッパを想像して描いたイラストが何枚も使われ、最後に1992年のザッパがその経験を語るインタヴュー映像が登場する。2分ほどにまとめられたそれらの場面は、いくつかの収録ないし発表年度が異なる複数の映像をつなぎ合わせたもの、つまりビックフォードによる描画の解釈と四半世紀以上後のザッパの発言による回顧が重層化し、しかもそこに加えられている音楽も1曲ではないので、ザッパについて初心者はあまり楽しめないか、混乱する度合いは熱烈なファンより大きいだろう。あるいは初心者はそこまで考えず、何も気にせずに見流すかだ。それでもザッパが逮捕された事実は把握出来るのでさほど問題ではないが、本作の凝り具合まではわからない。
●映画『ZAPPA』その4_d0053294_00145789.jpg
 ひとつの事実を伝えるのに複数の映像や証言を持って来ることは客観性を意図してのこととは限らない。アレックスの吟味がそこにはあって、それゆえアレックスの作品なのだが、新聞記事、ブルースのイラスト、ザッパの証言のどれもが事件を説明するためでありながら、それぞれが別のベクトルを持ち、映像を見るものは事件以外のことにも関心を持つ。その点が著作とはかなり違って、映像作品独特の力ないし曖昧さだが、本作はドキュメンタリーであるので劇映画の俳優によるフェイクはない。ところがザッパが収監された事件がでっち上げのフェイクで、その虚偽性が現実となり、その現実をブルースがイラストに描き、ザッパが回顧し、それらの映像をアレックスが音楽を添えて短くまとめる行為は、現実でありながらどこかフェイクじみてもいる。それゆえ夢を見ている気分になるのだが、新聞記事が活字が読めるほどに静止画像として提示される場面は2,3秒で、漫然と本作を見れば記事の見出しと写真しか頭に入って来ない。そしてその写真が興味深い。この写真を警察はテープやフィルムとともにすべてスタジオZから押収したのだろう。まだ髭を生やさないザッパはガールフレンドと仲よく抱き合っていて、この有名な写真を後にザッパと結婚したゲイルは好ましく思わなかったであろう。本作はザッパの最初の妻の映像も出て来るし、ゲイルと知り合う以前のザッパの女性関係が垣間見える。スタジオZによく出入りした写真の女性とザッパは相性がよかったのか、その後も肉体関係は続いた。もちろん本作はそんなことは一切描かないが、ザッパ・ファンは本作の行間に隠されている多くのことを知りながら本作を見るので、数秒使われる新聞記事ひとつに、隠された思惑があるのかと勘繰る。またそのように見て行くと本作の分析はとても切りがない。膨大にある映像のどれも選ぶかということでも大変であるのに、選んだ映像を見る者にひとつの創作として納得させることをアレックスは至るところで行なっている。たとえば、ルースが73年のライヴで変顔をした場面をクローズアップで使っている。美人の彼女であるのに、アレックスはなぜ変顔を使ったか。それはその場面の背後に流れる彼女のインタヴューの内容からわかる。彼女がニューヨークのジュリアード音楽院で学んでいた67年、誰もいない教室でグランドピアノでザッパの「オー・ノー」を演奏したところ、部屋の管理者に見つかってその演奏を咎められた。彼女はジャズでもロックでもポップでもない20世紀の美しい音楽を演奏していると自覚していたが、クラシック音楽を教える同校では理解されず、「出て行きなさい」と命じられた。アレックスは彼女への最新インタヴューその言葉が発せられた時、彼女の変顔の古い映像を持って来ることで、管理者に対しての当時の彼女のあっかんべーの思いを表現したのだ。小出しにするようだが、明日も書く。
スマホやタブレットでは見えない各年度や各カテゴリーの投稿目次画面を表示する

by uuuzen | 2021-03-21 23:59 | ●ザッパ新譜紹介など
●映画『ZAPPA』その3 >> << ●映画『ZAPPA』その5

 最 新 の 投 稿
 本ブログを検索する
 旧きについ言ったー
 時々ドキドキよき予告

S M T W T F S
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31
以前の記事/カテゴリー/リンク
記事ランキング
画像一覧
ブログジャンル
ブログパーツ
最新のコメント
言ったでしょう?母親の面..
by インカの道 at 16:43
最新のトラックバック
ファン
ブログトップ
 
  UUUZEN ― FLOGGING BLOGGING GO-GOING  ? Copyright 2024 Kohjitsu Ohyama. All Rights Reserved.
  👽💬💌?🏼🌞💞🌜ーーーーー💩😍😡🤣🤪😱🤮 💔??🌋🏳🆘😈 👻🕷👴?💉🛌💐 🕵🔪🔫🔥📿🙏?