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●吉本豊の野外彫刻、その3
ければ 肩凝りて 型どおり」、「固いほど ひび割れやすし 日々吾も」、「固まれば 蹴られ蹴っても 頑丈夫」、「固くなり ソフビは脆く 割れに欠け」



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説明しておくと、最初の句は性質が固くてやることが型どおりの意味。2番目は柔らかいものと違って岩のようなものほど割れやすく、石仏も極微粒子単位で見れば日々ひび割れの度合いを増している。3番目は瞬間接着剤。4番目はソフビ人形も経年変化で脆くなり、扱いによっては破損する。実は昨日のサトちゃんも写真を加工してわずかに欠けていた箇所を補った。グラフィック・デザイナーの土方重巳は複数生産を前提にサトちゃんをデザインしたが、店舗広告用の非売品、また半世紀も経てば、保存のよいものが少なく、愛好家の間では価値は高まる一方だ。芸術作品として作られたものではないのであまり大切にされて来なかったと思うが、市場価格はほしい人がどれだけ支払えるかにかかっていて、サトちゃんが同じく複数生産の芸術作品としての版画より高価であることはあり得る。また一点限りの作品が複数生産品より価値があるとは限らず、市場価値は人気度に応じる。サトちゃんのようなソフビ人形は、土人形よりかははるかに衝撃に対して頑丈だが、雨ざらしの野外に置くことは好ましくないという、その昭和の新素材であることが、キャラクターのデザインと相まって独特の持ち味を呈する理由になっている。つまり、サトちゃんは吉本豊氏の御影石の彫刻とほとんど同じ時代に生まれながら、鑑賞による受容の具合が全然違い、またそれゆえに共存しているのだが、一般の認知度からすればサトちゃんは日本のどの彫刻よりも絶大で、「かわいい」という意識で捉えられ、愛好されている。その世俗的な評判が芸術性とは無縁とは言い切れない。実力が大いに認められたデザイナーの作品であり、芸術と認識することを否定出来ない。土方はおそらくディズニーのダンボを参考にサトちゃんを作ったと思うが、アニメ、漫画のキャラクターがパンドラの箱を開けたように大量に生まれた20世紀、芸術的彫刻作品はどういう表現が可能であったか、また今後求められるかの一例が吉本氏の彫刻と言える。それは近代西欧の彫刻の歴史の延長上にありながら、日本独特の表現がどう可能かという問題を孕む。そしてそのひとつの実験作が「その1」に取り上げた吉本氏の相生地蔵尊だ。量塊的なその大部分は吉本氏の彫刻でありながら、本尊は無名の職人による古くて小さな石仏で、双方の様式性に共通点はほとんどなく、全体として木に竹を接いだ作だ。そのことは家屋を初め現代日本のあらゆる造形に及んでいて、それを不幸と見るか自由の謳歌と見るか、つまり悲観か楽観のどちらでも可能だが、どのような新しい作品もそのように両面から見られる。相生地蔵は現代的なビルの谷間に古い石仏を最大限に重視しているが、新たな地蔵像を彫る考えはなかったのだろうか。
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 その疑問は吉本氏の作品を考えるうえで役立つ。相生地蔵の石仏のような古いお地蔵さんを模刻することはおそらく今も行なわれているが、一方で「かわいさ」を重視した現代的お地蔵さんも彫られている。そうしたもので思い出すのは、京都の摩利支天にある幼児を象った石像で、それらは地蔵菩薩が加護する対象の童だが、お地蔵さんを念頭に置いて彫られている姿形のものもある。またそうした幼児を表現した石像は戦後のキャラクター全盛文化が生んだ「かわいい」を大きな要素としたもので、人形、玩具と接している。そうしたかわいい人形は布、木、プラスティック、ソフビなど室内で愛玩することが前提の脆弱なものだが、その大きな欠点である脆弱さを克服するには石で作ればよく、そうすれば野外設置が可能で、先のかわいいお地蔵さんはそれに該当する。つまり、石の彫刻の世界に「かわいい」が進出し、今では「ゆるキャラ」が石像となっている。その一例は京福電車の嵐山駅構内にある嵐電と江の電の双方のキャラクターが並ぶ石像だ。そのキャラクターはどちらも着ぐるみも作られ、各種行事に参加しているが、石像を造るのはサトちゃんのように量産するほどの経費もまた人気もないが、同じような恒久的人気を狙うからだ。ゆるキャラの全盛時代において、街中に設置される芸術作品としての石像にどのような様式、表現が可能か。これは光背を伴なった古い石仏の様式とゆるキャラの「かわいさ」の理由になっている「緩い」様式のどちらにより多く傾くかという簡単なものではなく、一方では西欧芸術における石の彫刻の伝統がある。そして吉本氏の彫刻は古い石仏でも「ゆるキャラ」でもなく、ここ100年の西欧の石の彫刻の伝統上にあるもので、しかも街中のいわゆる公共空間に置かれることを前提にしているので、格調の高さが求められるが、そこにはたとえば多くの彫刻が設置される大阪御堂筋が参考になるだろうし、また高槻市とすれば独自性がほしい。それで御堂筋の彫刻群とは違う作家の作品にこだわることは見上げた態度だが、高槻に因む作家を選ぶのが最もあり得る条件だろう。ネット情報によれば吉本氏は1947年、大阪生まれで、75年に大阪芸大卒で、84年から豊能町で制作を始めたとある。同地の黒御影石を使ってのことで、高槻市内に氏の作品が多いことから、住まいは高槻にあるのではないだろうか。とすれば、相生地蔵の依頼が同地域の住民から依頼があっても自然な話で、またその出来上がりの評判から市内の他の場所にも置きたいという人が出て来るだろう。そういう内情はネットからはわからないが、地元の作家が地元に作品を提供するのはいいことだ。また吉本氏の作品は他府県にもあるようだが、ホームページはないようで、個展を積極的に開いているのかどうかもわからない。
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 さて、先月末、筆者は三番目の氏の作品を見るために上宮天満の参道を目指した。その西にある雑貨店「ちくちく」の木造平屋の前にトーテムポールあるいは済州島のトルハルバンを連想させる、細長くて背の高い彫刻が2体あることをネットで知ったからだ。店の赤い屋根は数十メートル先に見えているものの、車が入れない細い道が入り組み、大鳥居前の西国街道に一旦出た。そして鳥居を目指したが、家内はそこで待つと言う。筆者ひとりで鳥居奥の参道西手にある横道を入り、そして下がったところの奥に店はあった。今日の2枚目の写真が示すように、店の前は地道で、その私有地を奥まで歩くことは気が引けたが、今日の最初の写真を撮影している時、奥から30代半ばらしき長身の男性が笑顔でやって来て、「奥にたくさんありますから」と声をかけられた。それで吉本氏の作品を順に撮って回ったが、家内を待たせているので、またなるべく早く食べたほうがよい会食用の大きな弁当を家内は抱えているので、筆者は「ちくちく」には入らずに彫刻だけ撮影した。10分ほどして鳥居に戻ると、その途中で先ほどの男性に会い、筆者は「荷物が多いのでまた改めて来ます」と声をかけた。これは本心だ。「ちくちく」は手作り作家の商品を並べている。今日の最初の写真の看板の趣味のよさからそれらの雑貨の質が想像出来る。扱う作家数は33人であったか、かなり多い。手作り雑貨の販売店は珍しくないが、店の敷地の至るところに吉本氏の彫刻を置く「ちくちく」は芸術性豊かなものが中心だろう。手作りとなれば筆者の本職もそうだが、「ちくちく」に染色作品があるかどうかはわからない。そういうことも含めて一度は店を訪れてどういう傾向の作品があるかを確認したいが、固定ファンの客がなければ経営は大変ではないか。店は比較的わかりにくい場所にあるが、神社の参道近くにそれなりに広い敷地をかまえるからには、長年同地に住む家系であろう。「ちくちく」の店主と吉本氏がどのような関係にあるのかわからないが、家族ないし親類と想像する。そういったことも店を訪れればわかりそうだ。今日の2枚目の写真は突き当りに店が見え、そのずっと奥には駅前のタワーマンションが覗き、高槻市内の新旧の建物が混在する現状をいみじくも示している。「ちくちく」は参道の際にあるので高層マンションとは無縁のようだが、付近には背の高い建物がたくさんあって、将来はどうなるかわからない。そう思うと「ちくちく」は稀な環境にある稀な建物で、ひとつの桃源郷のようではないか。ただし、それは高価なブランド品や名前を売ることに熱心な芸能人が金目当てに片手間に作るようなものに関心がなく、古いもののよさや手作り品のよさをわかる人にとってのことだ。今日の3枚目の写真には大型の「あやつり人形」が写るが、ネットでは大阪府下のとある病院に設置されている同様の作の画像がある。
●吉本豊の野外彫刻、その3_d0053294_17125507.jpg

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by uuuzen | 2021-03-15 23:59 | ●展覧会SOON評SO ON
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